教室環境〜「机を山脈から平野へ」「机の立ち位置」〜(2)
教室環境を整えるとどんなよいことが起こるのでしょうか。前回、
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介
机を山脈から平野へ
私が新年度始業前に優先して行うことは、児童の机の高さを揃える事です。机の高さがバラバラだと教室環境にガタつきが見られます。それこそ目に見えたズレの発生です。
ペア学習などで机をくっつけた時に机の高さが異なると、どちらかの机が上に重なり、物がその間にハマることもあります。
また、グループ活動時、机の設置点の高さが異なる為、プリントや教材などをグループの真ん中に置くと斜めになってよく見えなくなります。私は、特にグループの真ん中をグループの「共有スペース」として重要視しています。この「共有スペース」は多くの学びを発掘する見えない空間です。
(「共有スペース活用法」のお話は機会があれば、またいつの日か…)
まずは、求める高さの机を倉庫などから探すことから始めることになると思います。しかし、なかなか求めている高さの机ってありませんよね。もし、机の高さが同じものがなければ、工具を使いながら自分で調整する必要があります。しかし、高さを調整できないタイプの机のつくりもあります。また、全部の机を同じ高さにするのは大変な作業です(作業中、時々自分の職業を見失うこともありました…)。
その場合は、せめてグループ学習で寄せる机分だけでも良いと思います。私は4人グループにする場面が良くあるので、その4つは必ず同じ高さにしています。全部の机は叶わなくても、寄せて合わせる可能性のある机だけでも高さを調整する必要があると思います。
少し厳しいですが、この活動は新年度が始まった後では遅いと思います。
なぜなら、子どもは一度自分の席だと認識して座ると、「自分のもの」という自己所有物の意識を強く持つことがあります。自分の机が別の机に変わっていたり、急に高さが変わっていたり、または天板の色や模様が変わっていたりすると戸惑ってしまいます。苦労して整え直した担任の意図を汲まず、元の机の状態の方が良いとわがままを言われかねない状態も…。自分のものが知らないところで急に変わっていると誰でも嫌でしょう。これらを防ぐためには、子どもたちが初めて座る前に全てを調整する必要があると思います。
まず前提として、机の環境を整えた状態で子どもたちを迎え入れたいものです。
机の立ち位置
次の場面を想像してみて下さい。
「今日の業務を終えて一段落し、さぁ帰ろうかと子どもたちの机を並べてから帰宅する」
「そして翌日児童が登校すると、驚くほどの早さで机の並びがバラバラになる」
「今日も業務を終えて一段落し、さぁ帰ろうかと子どもたちの机を並べてから帰宅する」
このような日々を送っている方もいるのではないでしょうか。
せっかく並べたのに登校すると一瞬で乱れるあの悲しさは、苦痛以外何者でもない!そして子どもたちにきれいに並べるよう指導をして、互いに楽しくない時間を過ごす状態になる。まさに、悪循環です(上手に指導して改善している先生もいると思いますが…)。
これらを解消する実践は良く見られるのですが、「机を配置するポイントにマークを付ける方法」です。地面にマーカーで印が書かれていたり、テープが貼られていたりするのを見たことがある、または実践している先生方も多いと思います。
そんな多くの方が実践をしている方法を敢えてここで紹介している理由があります。
それは、「机の配置ポイントをどのように決めているのか」です。
何となくの幅で机の配置ポイントを決めていないでしょうか。前回同様、少し几帳面にも聞こえると思いますが、私は1mものさしを活用しながら机と机の幅をある程度同じにしています。
前述の「教室環境~掲示物のお化け坂~(1)」でもお話したように、机も少しのズレが大きな誤差になってしまいます。それらは教室環境のズレに繋がり、教室の歪みにつながっていきます。机がきれいにビシっと整っていると、子どもたちの気持ちもビシっと気が引き締まるのではないでしょうか。また、机がきれいに並んでいると机と机の間を歩きやすく、机間巡視を行うのも楽になります。机と机の横の幅だけでなく、後ろの机との幅も調整してみてほしいです。また、教室の横に窓や棚がある場合はそれらと横を合わせると、さらに綺麗に見えます。
要は、「何をもって机の配置ポイントを決めているのか」が大切だと思います。
ちなみに…貼った跡残りを付けないよう、養生テープの活用をおすすめします。翌年教室を使用する先生方にも優しく。
教室環境を整えるためには、教師の忍耐力が必要とされます。何となく整えることも、丁寧に細かく整えることも、先生方の考え方や教室環境をどれだけ重要視しているかで決まります。
人は、他人に指示をされたら動きます。しかし、教師という仕事は事細かなマニュアルなどがない為、「自分で考えて苦労する道を選ぶ」という場面が多く存在します。逆に、「自分で考えて楽な道を選ぶ」こともできるということです。苦労した分、子どもたちに還元されることを知っているからこそ、苦しいですよね。楽な道を横目に、ついつい苦労する道を選びがちですよね。あー、忍耐です。
これらの丁寧な教室環境づくりは、学習面や生活面などで後々先生方を助ける材料となります。それを信じて、一緒に「今」を踏ん張っていきましょう。
何卒。
石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭
沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。
同じテーマの執筆者
-
大阪府公立小学校教諭
-
立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
-
大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
東京都東大和市立第八小学校
-
沖縄県宮古島市立東小学校 教諭
-
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
北海道旭川市立新富小学校 教諭
-
尼崎市立小園小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)