大先輩との再会
私には20年以上のお付き合いがある大先輩がいます。以前は、毎月お酒を酌み交わしながら、教育について、先生の仕事について語り合っていました。学校でうまくいかないことがあったり、失敗をしてしまったりした時もF先生に話を聞いていただくことで、いつも元気をもらうことができました。F先生と職場が離れた後もお付き合いが続き、毎月学校での出来事やそれ以外の話をさせていただいていました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
教師のイロハを教えてくれた大先輩のF先生
F先生からは、当時学校の体育主任の仕事や教員としての心構えを教えていただきました。
F先生から言われた言葉で今でも印象に残っているのは、
「体育主任は、校長教頭よりも信頼されていないといけない」
という言葉です。
この言葉は今でも大切にしています。体育主任を降り、その後学年主任や研究主任などの仕事をさせていただく中で、「学年主任は校長教頭よりも信頼されるように」「研究主任は校長教頭よりも信頼される存在に」と自分に言い聞かせながら仕事をしてきました。私なりに同僚の先生たちに信頼されるよう努めてきました。そうはいっても未熟な自分であるため、先生たちへの感謝の気持ちをもっていつも仕事ができたとは言いにくいのですが、私なりにがんばることはできました。
約10年前にF先生が定年退職をされ、その時のお祝いをしたのを最後になかなかお会いできなくなっていました。私自身も子育てが忙しくなり、仕事との両立で何年もの間ゆとりがない生活でした。若いころに精神的な支柱だったF先生とぜひお会いしたいと時々思いましたが、なかなか実現せずに時間だけが過ぎていきました。それから子育てが落ち着き、またF先生とお会いしたいと願っていたのですが、今度はF先生がご病気をされ、しばらくお会いできない日々が続きました。そんなこともあり、今回久しぶりにお会いできたのは大変うれしかったです。F先生と懐かしい思い出を語り合うことで、また仕事への活力がわいてきました。そして、今後も様々な相談にのってもらいたいと思います。
F先生からの言葉
先ほども書きましたが、F先生と一緒に仕事をしているときにいただいた言葉がたくさんあります。
その一つが、
「体育主任は言ってみれば校長・教頭よりも信頼されていなければならない」
という言葉です。
もちろん、何かあった際に守っていただくのは管理職の先生ですから、少々オーバーな言い方をされたのだとは思いますが、この言葉は今でも大切にしています。当時は今と違って、体育行事などが多く、対外的な仕事も数多くありました。そこで、他の先生たちに協力願うことも多いです。そのため、普段から先生たちとの関係を良好にしておき、信頼される人間になっておかなければならないのだと理解しました。
そのお言葉を受けて、私なりに同僚の先生たちとの関係づくりに力を入れてきました。まずはしっかりとあいさつをすること。もしあいさつを返してもらえなくても、必ず元気にあいさつをすることにしました。
また、体育以外の仕事にも積極的に関わり、自分なりに全力で仕事をするようにしました。特に小学校は、いろんな分掌の仕事を行います。たくさんの分野にまたがるので軽重をつけて行かないとなかなか仕事をうまく回せないのですが、それでも自分がかかわる仕事全てに全力で取り組みました。
さらに、体育主任の仕事をしていると、ほかの先生にご迷惑をかけてしまうことがどうしてもあります。叱責を受けることもあります。例えば、運動会の練習で予定時間をオーバーしてしまい、授業に支障をきたしてしまったこともあります。そのようなときには言い訳はせず、きちんと謝るように心がけました。そのころ、職場にはベテランの先生で、同僚の先生に対して大変厳しく接する先生がいらっしゃいました。私も何度も厳しいお言葉を頂戴したことを今でも覚えています。その方に叱責された時にもとにかく素直に謝るように心がけました。そのおかげか、数年後には「菊池さんの笑顔が職場を明るくしている」とまで言っていただけるようになりました。
教員生活もあっという間に25年が過ぎ、ベテランと呼ばれるようになってしまいましたが、この新人の時の姿勢は今でも貫いているつもりです。
F先生との、そして様々な方との縁を大切にする
F先生とのご縁により、教師として、いや人間として大切なことをたくさん教えていただいた気がします。今では、年下の後輩の先生とのお付き合いが多くなりました。今度は一応先輩の教師として、若い先生たちが楽しく仕事ができるように心がけています。また、学年を組んだ先生たちとはその後も情報交換をしたり、普段は話せないことを言い合ったりできる場を積極的に作るようにしています。
F先生とのお付き合いで学んだこと、それは「かけがえのない縁」を大切にすることだと思っています。これからも大切に縁を育てていきたいと考えています。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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