2024.01.10
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生活に生かせる算数授業を目指して

今年度、勤務校の課題研究として算数科の研究授業に取り組んでいます。テーマは「生活と結び付けた算数授業」です。学習していることが生活の中できちんと生きている実感をもってこそ、子どもたちは進んで学ぶようになると考えています。そんな目標をもって、教材研究に取り組みました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

生活に生かせる実感をもたせるために

算数学習コーナー

研究授業で実践する単元に選んだのは5学年の「帯グラフと円グラフ」です。昨年度、担当する児童が受けたさいたま市学力調査で、「データ」に関する問題で課題があるということが分かりました。結果を分析すると、児童が普段データからどんなことが読み取れるかを考えたり、集めたデータを使って自分の考えを発表したりする経験が少ないからだとうことが分かりました。そこで、算数の授業というだけではなく、もっと大きな視点でこの学習をとらえようと考えました。また、算数の指導としても、子どもたちが楽しく学べ、しっかりと内容を理解できる工夫をしていきたいと考えました。

学校の研究テーマは、「かかわりあいながら考えて、わかる!できる!楽しい!授業を目指して」です。そして、そのテーマを実現するための私自身の授業づくりの指針を「生活と関連させ、実感をもって学ぶ授業づくり」としました。この指針をもとにすべての児童が生き生きと学習できるような授業にしていきたいと考えました。研究授業に向かってその前の単元で工夫した取り組みを試みることにしました。テーマの達成を目指して、以下のような手立てを考えました。

【研究の視点と手立て】

(視点1)「わかる」「できる」楽しさを味わわせる授業展開の工夫

<手立て①>「〇つけ法」による児童への支援
※「〇つけ法」とは、児童が課題解決をしている間、机間指導をして児童に声掛けをしていく指導法。

<手立て②>豊かな数学的活動・体験的な活動の導入

<手立て③>ICT教材や復習プリント等による既習事項の理解の徹底

(視点2)「かかわりながら考える」楽しさを味わわせる授業展開の工夫

<手立て①>ペア・グループでの学び合いの導入

<手立て②>グループで解決する課題の出題

<手立て③>NIE・学習コーナーの活用(既習事項の整理・学習と生活のかかわり)

これらの手立てを効果的に行い、児童の指導に生かしていこうと考えました。

プレ単元での実践

研究授業に取り組む際に、その前のいくつかの単元で試みようと思っている指導の工夫を試すことにしています。まずは、「平均」の単元での取り組みです。ここでは、様々なデータの数値をならして、データからおおよその真ん中の数値を算出する方法を学びます。ここでも、授業の手立てを生かしながら丁寧に指導しました。児童が問題の自力解決に取り組む際には、児童のノートに〇をつけながら、その子の出来具合にあった声掛けをしていきました。

「この式を言葉で説明してみよう」
「まずは全体の量が分からないといけないね。どんな式になるかな?」
など発問をしながら子どもたち一人ひとりに声をかけていきました。
これまでは見逃してきた子どもたちのがんばって考えている姿を見つけることができました。授業後には毎回子どもたちのノートを集めてさらに詳しく授業中の子どもたちの思考について読み取ることができました。

次の「単位量あたりの大きさ」の学習では人口密度を算出する問題があります。
そこで、教科書の問題だけでなく、
「みんなが住んでいる埼玉県の人口密度を求めよう」
「みんながいるさいたま市の人口密度はどうかな?」
「転入してきた〇〇さんの住んでいた川崎市はどうだろう?」と、児童の興味関心をどんどん高めていきました。

さらには、
「今、たくさんの子どもたちが戦争に巻き込まれているパレスチナの難民キャンプの人口密度はどうかな?」
と、社会的な事象とも関連付けてみました。

様々な場所の人口密度を求めた後に、児童は、タブレットで人口密度を調べた地域の航空写真を見て、本当に人口密度が高いところでは住宅が密集していることを実感しました。
「先生、同じ埼玉でも人口密度が高いところと低いところがあるんだね」
という児童の言葉が印象的でした。
このような活動を通して、児童は教科書での学習以上に学習内容を深く理解できた気がします。

研究授業に向けて

ここまでの取組をもとに、「帯グラフと円グラフ」の授業に取り組みます。グラフを読む活動とグラフを書く学習を行った後に、その力を生かして、これまで学習してきた食育をテーマに取り上げ「日本の食料自給率をあげるには」というテーマで実際に調査を行い、それをグラフにまとめて分かったことを発表し合います。グラフにまとめることで調査した内容を分かりやすくでき、自分たちの考えを話すことに役立つことを実感させられたらと考えています。

算数が得意な子もそうでない子も、この学習を通してグラフの良さ、そしてグラフを使う大切さを感じてほしいと願っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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