2023.12.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

『つなぐ・つながる』「振り返り」に値する授業の○○が大事

「振り返り」は、大切だってことは、子どもも教師も分かっている。
でも、「振り返り」云々の前に、大切なものは............。
○○の中味が大事ですよね。○○って何だ?

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

子どもにとって、楽しいところ?

うちの子どもの話で恐縮ですが。
休日、幼い頃は、近くの公園、ウサギ山公園やリンゴ公園、そんなところに連れて行くと喜んで時間を忘れて遊んでいたものでした。
公園の楽しさをまさに満喫していたものです。
小学生になると、近くの遊園地やテーマパークに「楽しさ」を感じるようになりました。
しかし、その後、成長につれ、遊園地という言葉すら聞かれなくなりました。
うちの子どもの「楽しさ」って、どこにあるのだろうと時々考えてしまいます。

学習指導要領に見る「楽しさ」

さて、前回の学習指導要領改訂から、「楽しさ」という言葉が、各教科で見られるようになりました。
国語科では、9回登場します。
どこで登場するかというと、ほとんどが「読書」に係る内容です。
例えば、中学年の読書に関する内容として、
「日常的に読書に親しむとは,読書の楽しさや有効性を実感しながら,日常生活の中で主体的,継続的に読書を行うことである。(pp53-54)」としています。
一言に読書の楽しさと言っても、とらえは、様々かもしれませんが、「また読んでみよ」「もっと読みたいな」と子どもが実感しないといけないかなあって思います。

また、算数科では、14回登場します。
算数科の「目標」、そして「数学的な活動」に関して使われています。
この「数学的な活動」は、これまでの「算数的な活動」につながるものですが、
目標の3つめとして、以下の通り示されています。
「数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度,算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。(pp22-23)」
つまりは、算数科では、この「数学的な活動」を意図的・計画的に授業に位置付け、その「楽しさ」を実感させることが肝要なんですね。

さらに、体育科では、「楽しさ」という言葉は、なんと139回学習指導要領解説編に登場します。
このことが、何を示唆するかは皆さんの想像に任せますが、かなり意図的な使われ方をしているのは確かです。
最初に「楽しさ」が出てくるのは、改訂の趣旨です。
運動領域においては、「運動の楽しさや喜びを味わうための基礎的・基本的な『知識・技能』、『思考力・判断力・表現力等』、『学びに向かう力・ 人間性等』の育成を重視する観点から、内容等の改善を図る。(pp7-8)」

このように「楽しさ」は、教科によって、登場のしかた、とらえかたは様々ですが、欠かせないものになっていることは言うまでもありませんね。
つまり、日々の授業で「楽しさ」は、不可欠というわけです。

子どもにとっての「たのしさ」ってどんなこと?

では、子どもにとっての「たのしさ」ってどんなことなんでしょうか?

もう二十年近く前のことでしょうか。
黒澤俊二氏(立教大学特任教授)から、こんな話を伺いました。 
算数科の目標「楽しさ」は、「楽しい」なのか?「愉しい」なのか?どっちだという話です。
「楽しさ」は、「ありあまっている」「らく」「らくちん」という言葉があるように、好きなこと、やりたいことをやるという意味なんですね。
一方、「愉しさ」は、へんは、「心」を指し、「つくり」は、AをBに変容させる(よりよい方向に変容させる)という意味があるんですね。
つまり、「楽」は、与えられる「楽しさ」であり、その場限りの刹那的な「楽しさ」ではないかなと思います。そして、「愉」は、心をよりよく変容させる「愉しさ」、主体的にかかわって変容する「愉しさ」なんですね。
子どもたちが心底実感し、前へ前へと学びたくなる「愉しさ」ではないかと思います。
このことは、算数科に限らず、どの授業であっても、言えることです。
子どもには「愉しさ」を味わってほしいですね。

むすびに

前回まで「振り返り」について、綴ってきたのですが、「振り返り」を書きましょうって、子どもたちに投げ掛けたところで、そこまでの授業の中味が愉しくなかったら、「振り返り」なんて、教師に書かされたものにすぎません。
授業が愉しくって、心動かす中味であったのなら、子どもたちは、グングン書き進めていきます。
そんな様子を見たこと、ありませんか?
ノート1ページにも及ぶ「振り返り」を黙々と書き綴っている子どもの姿。
「振り返り」」を書きたくなっちゃう、「愉しい授業」をちょっとずつでも創っていきたいと思います。

学期末に向かい、授業進度と時数が気がかりな時期ですが、ちょっとこんなことにも気に掛けてみませんか。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop