義務教育学校が切り拓く未来「定期考査」
私が勤務する学校は、校舎一体型の小中一貫校から2016年に義務教育学校となり、これまでにあった小学校と中学校の校種差をなくし、9年間の連続性を意識した教育を展開しています。そして、この教育活動をすべて活用し、子供たちを、義務教育の先にある、これから生きていく社会に通用し、その社会を支える人材となるよう育てています。
本校では、7〜9年生(中学1〜3年生)とともに、5・6年生でも定期考査を実施しています。今回、紹介するのは、そのメリットや実施方法です。
東京都品川区立学校 平野 正隆
校種差をなくした連続した学習指導
これまで、中学生になったら突然始まるのが定期考査でした。一般的な小学校で行われている、単元テストと違う点は、いくつかの単元をまとめたテストであることや、同時期に多数の教科で実施していることです。
7〜9年生では中間試験と期末試験を、5・6年生は期末試験のみを実施しています。
期間と教科
5〜9年生が実施している期末試験は、6、11、2月の中旬から下旬あたりに、3日間かけて実施しています。
教科は英語、国語、算数、社会、理科、家庭科、図工、音楽、保健体育の9教科。私の学校では、英語、国語、算数、社会、理科は50分間、家庭科、図工、音楽、保健体育は30分間で実施しています。
試験範囲
実施前までに学習した複数の単元が試験範囲になります。試験範囲表を実施2週間前に配布します。そこには、単元名だけでなく、試験に必要な道具や、試験までに必要な提出物、試験勉強のアドバイスを記載しておきます。
試験勉強
実施2週間前から試験勉強期間となり、朝学習の時間に各自で自習をします。この期間は、基本的に部活動は休みとなり、放課後も自宅学習をすすめます。「学習の足跡」という名の計画表が配られ、自分なりの学習目標や2週間分の学習計画を立ててから試験勉強に取り組みます。計画がずれたら、それを調整しながらすすめていきます。自らの学習を調整する力を養っています。
試験内容
試験に出す問題は、教師の手づくりです。教科担任制なので、ほとんどの場合は1教科を担当します。内容は、基本的に「知識・技能」「思考・判断・表現」の2観点です。
私の場合、授業や単元テストで子どもたちがつまずいた部分を再び試験に出すようにしています。また、前学期の期末試験で正答率が低かった問題を、数値を変えたり、聞き方を変えたりして出します。他にも、授業で学んだ知識を生かして解くような応用問題も織り交ぜます。
そうすることで、単元や学期が終わればおしまいではなく、粘り強く学習に取り組む態度を養うことができます。実際、授業中に分からなかった内容を休み時間に改めて聞きに来る子も増えました。
評価
1問が2〜5点のため、設問数は40〜50問程度になり、採点にはかなりの時間を要します。
期末試験の評価が、そのまま通知表などの期末評価になるわけではありません。授業の取り組みやノート、提出物、単元テストの結果を総合的に見て評価しています。しかし、先にも述べたように、単元テスト等でつまずいた部分の改善が見られるかに重み付けをしたいため、私は期末試験の評価の重み付けも大きくしています。また、試験に向けた取り組みは「主体的に取り組む態度」としても評価できます。そのとき、「学習の足跡」が役立ちます。
返却
採点した解答用紙はスキャナーで取り込んでおきます。これは、採点ミスなどのトラブルが発生した際の控えになります。
授業中に返却をし、以下の話をします。
・採点ミスがないかの確認
・主に記述部分の採点基準
・正答率の低かった問題
・どんな間違えがあったか
・平均点はどれくらいだったか
その後、子どもたちで学び合いながら、直しをさせます。
おわりに
前期課程の試験勉強では、自分に合った勉強の仕方を模索するようにアドバイスしています。友達からどんな勉強の仕方をしているか聞いたり、教師や親の過去の勉強方法や体験談を聞いたりして、自分で試すようにさせます。良い成績を収めることも大切ですが、ただ勉強時間を増やしていくのではなく、まずは自分自身を知ることが大切なのだと思うのです。そうすることで、校種差をなくした連続した学習指導が実現できるのだと信じています。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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