2023.04.22
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友人の分まで一生懸命に

昨年の末に小中学校時代の友達が亡くなったという知らせが来ました。友人のA君のお姉さんが昔の年賀状を頼りに連絡をしてくださいました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

友人の死・・・

友人の眠る霊園で

友人のA君とは小中学校で同じクラスでしたので良く遊んだ記憶があります。また、A君とは同じ歌手が好きだったこともあり、一緒にコンサートに行ったこともありました。最近も、実家に帰った時にはA君の家の近くを通るので懐かしく当時のことを思い出していました。また、担当するクラスで子どもたちに私の小学校生活の思い出を語るときに、よくA君との思い出を子どもたちにも話していましたので、30年以上会っていなくてもA君のことはよく覚えていました。突然の知らせに大変驚き、残念な気持ちでいっぱいになりました。

A君は、昨年の5月まで実家で病気のお父さんを優しく介護していたそうですが、その途中で心臓の病気にかかり亡くなってしまったそうです。本当に悲しいです。A君もまだ47歳でした。きっとこれからやりたいこともやらなければならないこともたくさんあったはずです。ここ数年私も自分の人生のことを考えることが多くなりました。これまではただがむしゃらに教師の仕事を中心に行ってきました。いろんなチャレンジをしてよかったことも大失敗もあります。その中でたくさんの思い出ができました。しかし、ふっと「これまでのがんばりは意味があったのかな…」とむなしい気持ちになったり、迷ったりすることがあります。A君の訃報を受けて、私も自分のこれまでのこと、そしてこれからのことをじっくりと考えました。

私自身の今はどうか・・・

これまで24年間教師をやってきましたが、教師を目指していたころと今では教育に対する考えもだいぶ変わってきました。大学で教師を目指して学んでいたころは、
「毎日、放課後には児童とたくさん話をして楽しく過ごせるだろう」
「毎日児童に囲まれ過ごすような楽しい生活が待っているだろう」
「卒業した児童がよく自分を訪ねてきて、自分の周りには常に教え子に囲まれるだろう」
「自分は教師に向いていて、常に子どもたちが慕ってくれるはずだ」
などと考えていました。

しかし、教師の仕事は児童の指導だけではありません。放課後には会議やそれ以外の仕事もあります(当然ですが…)。忙しさのために、児童とたくさん遊んであげられないことも多くあります。また、すべての児童が自分に好意的なわけではなく、反抗してくる児童がいる場合もあります。私も、6年生を担当した時に、児童と合わずにすれ違いが起こり、学級崩壊のようになってしまったことがあります。卒業式にも罵声を浴びるような大変な1年間になったことが今でも傷として残っています。多くの児童や保護者の方にも迷惑をかけてしまいました。

そんなこともあり、教師としての経験を重ねてきて、教師になりたての頃の根拠のない自信を失ったと感じる今日この頃…それは必ずしも悪くなったわけではなく、自分の力を過信せず、教師みんなで協力してチームで指導に当たらなければならないと思うようになりました。また、児童の心をさらにつかむために心理学を学ばなければならないと考え学習を続けるようにもなりました。ただ、若いころのようにがむしゃらに子どもたちの中に入っていることが少なくなったように感じます。それは別の見方をすれば、冷静に物事を見つめながら仕事をするようになったともいえるのですが、自分のパワーが明らかに少なくなっています。

これから新たな気持ちで教師の仕事に邁進!

教師生活も長くなりましたが、まだまだこれから教師としての仕事は続きます。そして目の前にはかわいい受け持ちの子どもたちがいます。その子たちのために全力で仕事をしていくことできっとA君も喜んでくれるのではないか。そう感じます。月並みに言葉にはなってしまいますが、こう誓いました。「A君の分まで一生懸命に生きていこう」と思いました。

そんな気持ちで今年度も気持ちを新たにスタートしました。今年度の受け持ちは5年生。本校では、地域に大宮盆栽村があり盆栽が地域の代表的な産業であることから、高学年で盆栽づくりの学習があります。子どもたちも盆栽を作るのを楽しみにしています。子の盆栽づくりを起点に、盆栽について、そして大宮盆栽村について学ぶ総合的な学習も予定されています。まずはその活動の充実を目指してがんばりたいと思います。

また、これまで取り組んできたNIE(教育に新聞を)の学習も充実させていきます。担当する学年は、3年生の時にも受け持ち、NIEを導入した学習を行ってきました。その学習で得られた力を生かしてさらに効果的な取り組みをしていきたいと思います。

これから教師として生きる時間は、亡くなったA君が「生きたかった」けれども「生きられなかった時間」です。その時間を大切に精いっぱい生きていきたいと思っています。A君のお姉さんにその気持ちを伝えました。A君にもそれが伝わったらうれしいと感じます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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