2023.02.24
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社会科の授業づくり~教科書+α~

これまでの回で、教材のことやゲートキーピングによる単元展開などについて書かせていただきました。社会科は教材づくりが面白いのですが、毎単元することなどは難しいでしょう。「ここぞ」という時は時間をかけて一からの教材づくりをすることもありますが、やはり日々の授業をどうするかです。持続可能な社会科授業として「主たる教材」である教科書を有効活用したいものです。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

資料としての教科書

 基本的に問題解決的な学習で展開する社会科ですので、問いに対して調べる資料として教科書を活用することが持続可能な社会科授業といえるでしょう。教科書に掲載されている構成要素として、本文の文書資料、本文に関連する資料(イラスト・写真・図表・地図・グラフ)があります。そのため、教科書だけで授業を組み立てようとすると、どの構成要素を使うのかという取捨選択の必要があるでしょう。1時間(45分)の授業の中ですべての構成要素を扱おうとするとおそらく時間の余裕もなくなり、事実網羅型の授業になってしまう可能性があるでしょう。

私が所属している教育サークル「山の麓の会」において教科書研究に取り組んだことがあるのですが、教科書のみを活用した授業は、最終的に「どの構成要素をどの順番で出し、どう発問するか」で授業デザインするしかないという結論になりました。そのため、かなり制限のある条件ですので、子どもの実態に合わなかったり、興味・関心を高めることができなかったりするかもしれません。

教科書+α

図1小学校における水道の数(筆者作成)

教科書を有効に活用するなら、「教科書+α(ひと工夫)」が現実的で持続可能だと考えます。

①単元計画や問いもそのまま活用し、使用する資料を工夫する
②単元計画の順番を入れ替える
③単元計画の問いを修正する
④単元計画に+1、2時間の新しい展開を追加する

などが考えられます。

単元計画や問いもそのまま活用し、使用する資料を工夫する
①はおそらくみなさんもやられている最も現実的な教材研究になるでしょう。教科書の写真やグラフにブラインドをかけて提示したり、地域にあるもの(地域教材)を提示したりすることが考えられるでしょう。地域にあるもので活用しやすいものとして、昔の写真や学校の〇年誌などがあるでしょう。3年生の「市の移り変わり」の単元や6年生の戦争の学習などで活用できることが多いです。また、4年生のごみの学習では学校のごみを回収するパッカー車の様子を写真で撮ることや水道の学習において学校の水道の蛇口の数を数えたり(図1)、クイズにしたりするなど、ちょっとした労力をかければうまく活用できるでしょう。

単元計画の順番を入れ替える
②は、単元の導入において学習問題を立てる時間を変更したり、単元の展開部分において並列の事例ならば順番を変更することも可能でしょう。例えば、3年生の「市の移り変わり」で、交通・土地利用・道具・公共施設を追究する順番や4年生の県(都・道・府)の特色ある地域」において、伝統的な技術を生かした地場産業が盛んな地域・地域の資源を保護・活用している地域・国際交流に取り組んでいる地域を学習する順番なども変更できるでしょう。

単元計画の問いを修正する
③は、獲得すべき目標に応じて修正することは可能でしょう。単元デザインに関わることではありますが、教科書に掲載されている毎時間の問いは「どのように~」「~はどのような工夫をしているのだろう」のように「どのように」という問いがほとんどだと思います。その問いを必要に応じて「なぜ~なのだろう」のように事象の意味追究をしたり、「~は○○なのになぜ~だろう」といった複文型の問いで深めたりすることが考えられます。社会的事象の意味や背景を考えることが社会科の本質でしょうし、単元の中でどの時間に意味追究をするのかが教材研究でしょう。

少し労力がいりますが・・・。

単元計画に+1、2時間の新しい展開を追加する
④の新しい展開を追加が「教科書+α」でも一番労力がいるかもしれません。どの単元でも考えられますが、子どもを深い学びへ導くための+αです。4年生のごみの学習で食品ロスのことを扱ったり、ごみ袋有料化の是非を考えたり、5年生の産業学習でスマート農業、スマート林業を追加したりなど効果的に授業デザインができます。個人的に大変面白かったのは、これも教育サークルで共同開発をしたのですが、江戸時代の町人文化の学習において、日本各地の特産物を運ぶための北前船を運輸という視点で教材開発をしたことです。文化の隆盛にもつながる新しい展開になりました。 

持続可能な「教科書+α」というゲートキーピングは有効だと考えます。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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