2023.02.18
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生き生きと昔のくらし学習

担当する3年生では、3学期に「昔のくらし」について学習をします。昔から今の道具や暮らしについて調べ、どんな点で人々の生活が変わってきたかを学びます。児童には、ぜひ昔の道具や暮らしについて主体的に学んでいってほしいと思っています。そこで、単元の授業に入る前から準備を行いました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

「昔のくらし」の授業づくりのための教材研究

授業の準備として、まずは地域にどんな文化財があるのかを調べました。
児童が使用する教科書や副読本では地域の文化財を直接取り上げてはいないのですが、児童が昔のものに関心をもてるように、地域にある文化財の資料集めからスタートしました。
特に年度当初から、地域を巡った際に「庚申塔」や「六地蔵」などを見つけたら写真に収めておきました。
やはり意識していると、見つけたい文化財をたくさん発見できます。

市内の散策で資料収集

児童に紹介した庚申塔の写真

市内を視察していてまず気づいたことは、市内のいたるところに「六地蔵」や「庚申塔」などがあり、今でも大切にされているということです。東京オリンピックの会場にもなった施設があるさいたま新都心という現在開発が進められている地区でも、古い庚申塔が残されており(写真)、そこにあるバス停の名前も「庚申塔」と名付けられています。

「庚申塔は何のために作られ、どうして今も大切にされているのだろう…」
まず、子どもたちにこんな投げかけをしたいと考えました。
新しい住宅が建っているのに、その塀が庚申塔をよけるようにして建っています。

少々不謹慎ですが、
「この庚申塔がない方が家が建てやすいよね。それなのにどうして塀をずらしてまでこの庚申塔を守っているのかな」
と児童に問いました。

児童からは、
「だれか偉い人が建てたものだからじゃないかな」
「神様か何かを祭ってあるからじゃないかな」
など、いろんな予想が出てきました。
この庚申塔については、市内の元校長で博物館の指導主事もされていた方が専門なので、その方をゲストにお呼びして、児童に話をしてもらうことにしました。

また、さいたま市は旧浦和市・大宮市・与野市・岩槻市が合併してできた自治体なので、旧市の博物館がそのまま残っています。それらの博物館を順番に訪ね歩きました。市内の博物館では、3年生の「昔のくらし」の学習に合わせた展示をそれぞれ行っています。本当ならすべての博物館を児童と回りたいところですが、それは無理なので、写真を撮影して展示することにしました。それぞれの博物館では展示が工夫されており、それぞれの良さがあります。また展示してある資料も違うので、すべて巡ることでいろんな資料を収集できました。

これらの資料を授業でも生かしますが、まずは児童に自由に見てもらいたいと思い、学年の掲示板に掲示しました。児童が普段よくと通る場所に掲示板が設置してあるので、通るたびに昔の道具などの写真を目にします。関心のある児童は足を止めて写真を眺めていました。授業に入る前の良い取組になったと思っています。

授業づくりに向けて

教材研究が終わり、授業をスタートします。まずは児童に昔の道具を体験させたいと思いました。近くには市立博物館があるので、見学を計画しました。そこでは、「洗濯板体験」「石臼体験」などを行うほか、昔の道具や食卓の様子を見学できることになりました。また、学校の資料室にある昔の「黒電話」などを使って、今のスマホや携帯電話とどう違うかを考える体験を行うことにしました。これらの活動を通して、児童の関心が大変高まるほか、昔の暮らしと今の暮らしの違いについても実感できると考えました。

また、児童が主体的に学習を進められるように、自分が関心をもった道具について調べる学習も取り入れます。掲示板に昔の道具の写真を貼ってあり、児童は「あの道具は何だろう?」と関心を持ち始めています。調べ学習に取り組むことで、児童が積極的に昔の道具について知りたいという気持ちを高めることができると考えています。

児童は、
「僕は昔の電話について調べたいな。おばあちゃんのうちで黒電話があったから詳しく調べたい」
「今はスマホがあるけれど、昔はどうだったのかな」
「お父さんが、昔のテレビはリモコンがなかったと言っていたよ。どんなテレビか詳しく調べたいな」
「今はデジタルカメラがあるけど、昔はなかったんだよね」
などの声が聞かれました。

児童は、早速学校にある昔の道具の本や、タブレットパソコンを使って調べ学習を開始しました。テレビ・カメラ・炊飯器・冷蔵庫…など、毎日の生活に欠かせないものを調べることで、昔の生活の様子を知ることができました。また、今使っている道具の便利さや生活の豊かさなどにも触れることができました。調べたことを友達同士で発表し合うことで、よりその思いを強くしていました。

調べ学習をした後には実際に道具の体験をしたり、実際の昔の道具を見たりしたくなります。当初に計画した博物館見学を実施し、児童と体験を行ってきました。児童はそれぞれ関心のある道具の体験を行い生き生きと学習に取り組むことができました。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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