2022.12.22
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算数科における「統合的・発展的に考える」とは

統合的・発展的に考える力は、算数科の「思考力・判断力・表現力等の育成」において欠かせない要素になります。今回は、第6学年「円の面積」の授業実践をもとに具体的に考えてみたいと思います。

東京都品川区立学校 平野 正隆

⑴「統合的・発展的に考える」とは
「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編」によれば、「統合的に考察する」とは「異なる複数の事柄をある観点から捉え,それらに共通点を見いだして一つのものとして捉え直すこと」、「発展的に考察する」とは「物事を固定的なもの,確定的なものと考えず,絶えず考察の範囲を広げていくことで新しい知識や理解を得ようとすること」と記載されています。
第6学年「円の面積」の授業実践をもとに具体的に考えてみたいと思います。

⑵円弧を含む複合図形の面積の求め方を統合的に考える
既習の求積公式を生かして、円弧を含む複合図形の面積の求め方を考えます。
最初に出て来たのが、以下のA〜Cの考え方でした。

上の図のような図形の面積の求め方は、1/4の扇形が見えれば、ABCのような考え方で解くことができます。
このように、未習の図形の面積から、既習の求積方法を生かして考えることは、統合的に考えているといえます。

⑶円弧を含む複合図形の面積の求め方を発展的に考える

「他にも考え方はないかな」と問えば、子どもたちはさらに思考を巡らせます。その姿こそが「発展的に考える」姿となります。こうした習慣が身に付けば、自ら考えるようになります。
本実践では、さらに以下のC、Dの考え方が挙がりました。

既習の図形同士を足したり引いたりするだけではない、異なる考え方はできないかと思考の観点を変えて考えることは、発展的に考察しているといえます。
D:重ねてから引いて、重なった部分だけを残す
E:同じ面積の別な図形に置き換える

この「発展的に考える力」の育成には、習熟度に応じた配慮が必要だと考えます。
本実践では、習熟度が高い集団で実施したため、D、Eが挙がりました。しかし、あくまで「異なる考え方ができないか」という発想を育むことが大切です。

⑷さらなる発展・統合へ

本実践の後半では、子どもたちから「公式化できるのでは」という話がでました。これまで、様々な求積公式を自分たちでつくり出してきたからこその発想でした。
F:公式にすることはできないだろうか(発展的)→公式化する(統合的)

⑸「統合的に考える」「発展的に考える」の関係

「統合的」と「発展的」を切り離して考えることはできません。また、並列で見ることもできません。統合的に考察した先に、発展的な考察があり、それは再び統合的な考察につながります。

⑹「統合的・発展的に考える」手立て

  1. 既習事項を想起すること
  2. 思考を可視化して表現すること
  3. 更に広い範囲で適用できるように一般化すること
  4. 異なる考え方はできないか考えること
  5. もし条件の一部が変わったらどうなるか考えること

などの手立てが考えられます。

⑺普段から「統合的・発展的」を意識した授業づくりを

今回は、「円の面積」を取り上げましたが、至るところに「統合的・発展的に考える」場面があります。大事なのは、どのように統合され、どんな発展につながりそうかを私たち教師が予想しておくことなのだと思います。また、その予想を超えた統合・発展が生まれることもあります。そんなときは、子どもたちと一緒にその価値を共有していけばいいのではないでしょうか。


※文中の図表・イラストは筆者作成

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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