2022.11.11
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学び合いで引き出される力〜合唱コンクールを通して〜

私が勤務する義務教育学校では、1〜4年生と5〜9年生に分かれて運動会や学習成果発表会を行います。つまり、5・6年生は、後期課程(中学校)と同じスタイルで行事を行うのです。
小学校全科の免許を持っている私ですが、音楽は得意とは言えません。しかし、学習成果発表会の合唱コンクールの練習はクラスごとに行われ、担任がその指導にあたらなくてはなりません。本番は、審査員の管理職や音楽専科教員から評価され、順位付けがされるのです。このプレッシャーのなか、子どもたちをどう導けばいいのでしょう。

東京都品川区立学校 平野 正隆

合唱コンクールに向けて

音楽が苦手な私が、合唱コンクールに向けてクラスの子どもたちにしたことを絞り出してみました。

・技術指導を子どもたちに任せる
・武器を見つけて自信につなげる
・他クラスの良さを伝える
・成長に気付かせる
・信じて温かく見守る

自分で列挙しながら、情けなくなるくらい何もできませんでした。しかし、私がしなかった分、子どもたちが動いていました。各クラスに実行委員2名、指揮者1名、伴奏者1名、アルトパートのリーダー2名、ソプラノパートのリーダー2名がいます。その子たちを中心に、どうしたらさらに良い合唱になるかを話し合っていました。

では、子どもたちが互いに学び合う中で、私が裏方としてやったささやかながらの取組みを具体的に紹介します。

⑴技術指導を子どもたちに任せる

音楽の授業で、合唱練習をしていることもありますし、譜面を熟知した指揮者や伴奏者もいるため、クラス内の合唱練習でも、自分たちでどこをどう直しながら歌うか、確認しながら練習をしていました。だから、技術的なアドバイスはほとんどしませんでした。
しかし、子どもたちは「パートの声量のバランスが悪い」「声が出てない」「それでは、体育館では響かない」など、否定的な言葉がけになりがちだったので、「〜パートは声がよく出ているので、〜パートがそれに合わせたら、もっと素敵なハーモニーになるね」「みんなの素敵な歌声が教室には響いていたから、体育館で響かせることができたらいいね」など、前向きな言葉がけに変えてフォローしました。また、実行委員には「直すところだけでなく、良さを認め合うこともしていこう」とアドバイスしました。

⑵武器を見つけて自信につなげる

私のクラスの課題は、はじめから「声量の小さい」ことにありました。しかし、歌声の美しさや強弱の付け方はとても上手で、声量ばかりに意識が向いて、それらを損ねたくないと思いました。だから、「自信をつければ、自然に声量も大きくなるかもしれない」と考え、あえて声量ばかりにフォーカスしないようにしました。
練習の初期の段階に私が伝えたのは、「強弱の付け方がうまいね」という言葉でした。これが武器になれば、きっと自信につながると信じて。

⑶他クラスの良さを伝える

本番が近付くと、他クラスとの合同練習が入ってくるようになりました。すると、自分たちの良さを再認識する反面、指揮者の合図による動きの揃い方や、パートのバランスの良さ、声量の大きさなど、自分たちが足りてない部分に気付き始めます。でも、それは他クラスも同じであることを話しました。
そして、練習のたびに、私が他クラスを時折見に行っては、各クラスが自分たちの改善点を直してきているという情報を伝えました。

⑷成長に気付かせる

日々、成長を続ける子どもたちですが、なかなか自分たちの成長には気付けないものです。もしくは、気付いていても、自らそれを認めることができないのかもしれません。私のクラスでは、地声から合唱に適した歌声へと練習をするたびに成長してきました。そのことを私は何度も伝えました。それが、子どもたちの新たな武器になることを願って。

⑸信じて温かく見守る

他にやったことと言えば、本番は自分たちの実力を発揮してくれると信じて温かく見守ったことくらいです。頷きながら歌声を聴き続けていました。本番直接、子どもたちが「多少、地声になってでも声量を重視するか」「合唱に適した歌声を重視するか」そんな話し合いをしていた場面も見られましたが、特に何も言わずに見守りました。本番は、美しい歌声が体育館に響き渡りました。

教師は子どもの力を引き出すプロであれ

このように、私がしてあげられたことはほとんどありません。でも、子どもたちは確かに成長をとげていきました。
私が大学時代、とある授業でこんな話を教授がしていたのを思い出しました。
「オリンピック選手を育てるコーチは、その選手より技術があると思うか。だから、教師は子どもの力を引き出すプロであれ。教師の技術を教えるプロでは、それ以上の人材は育たない」
教師という職業は、技術を教えることも大切ですが、信じて支えることの方がもっと大切な仕事なのかなと感じた行事でした。子どもたちの力を少し引き出せたかもしれません。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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