2022.10.08
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給食や農家から学ぶ

3年生の社会科で農家の仕事を学ぶ単元があります。さいたま市では、市内で多く作られている「こまつな」を作っている農家の仕事について副読本で学びます。指導にあたっては、子どもたちが野菜作りについて身近に感じながら学べるようにしていきたいと考えました。

今年も、毎日子どもたちが食べている給食を素材にしながら実際に教科書で取り上げられている小松菜について関心をもたせようと思いました。また、実際に野菜作りを行っている市内の農園を営んでいる方にゲストとして来ていただき、子どもたちに話をしてもらうことにしました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

社会科で「こまつな作り」を学ぶ

児童に話をする「こばと農園」の田島さん

勤務校のある地域は、大宮台地にあり、あまり畑や田んぼがありません。
子どもたちはこれまで、農作業をしている姿をあまり見ることがなかったようです。
教科書の写真や動画資料を使って学習もしますが、やはり農業を行っている人から話を聞く機会は大変貴重です。
また、毎日食べている給食など、身近なものから学ぶことも大切だと感じています。
今回の授業でも、給食を活用した取り組み、そして農園の方をお呼びして子どもたちに話をしてもらう機会を作ることにしました。
子どもたちも単元の学習が楽しみになってきたようです。

給食とのリンク

まずは、普段子どもたちが食べている給食を活用します。小松菜はさいたま市でも大変多く作られているので、給食のメニューによく登場します。9月には11回も小松菜を使った料理が出ました。これを授業に取り入れることにしました。小松菜がメニューに出る日には、朝の会で献立を一緒に見ながら、どの料理に小松菜が入っているかを予想します。そして、給食の時間にはみんなで小松菜が入っている料理を確認し、おいしく味わいます。子どもたちは、

「先生、きのこスープに小松菜が入っているよ」
「先生、今日はみそ汁に小松菜が入っているね」

と、喜んで小松菜を食べていました。これまでは野菜を嫌いな子が多かったのですが、このような取り組みをすることで野菜を好きになる子どもが多くなってきたような気がします。
毎日の給食の時間に片づけをしていると特に野菜料理の残菜が多いことに気が付きます。しかし、今回野菜のことを学んだ3年生はほとんど残しません。やはり、それだけ野菜や野菜作りに興味をもったからだと思います。社会科の学習を深めながら、食育にもつなげることができたと確信しています。子どもたちにとって大変良い学びになりました。

さらに農家さんに話を聞く

給食を活用して社会科での野菜作りの仕事に関する学習が大変充実しました。さらに学習を深めるために、農家の方にゲストとして来ていただき、野菜作りについて教えていただく授業を企画しました。
勤務校は、大宮台地に位置しており、周りにあまり田畑がありません。子どもたちにとって農家の方の話を聞くことは大変貴重な機会になると考えました。

ゲストティーチャーに来ていただいたのは、さいたま市の見沼田んぼで「こばと農園」を経営している田島さんです。市内の直売所やスーパーなどに野菜を出荷するほか、マルシェなどを行い、積極的においしい野菜を紹介しています。たくさんの農家とグループを作り、有機農法の野菜を広める活動もされており、市の広報誌でも紹介されています。

教科書を使っての学習が終了した後に、児童に農家さんに聞きたいことを考えさせました。学習が進んでいるので、たくさんの質問が寄せられました。

「作っている野菜はどのように決めているのですか?」
「出荷先はどのように決めているのですか?」
「どうして有機農法を行っているのですか?」
「雨や台風の時にはどのように畑を守っているのですか?」
「学校の校庭2つ分の広い畑でどのように種まきや水やりをしているのですか?」

など、たくさんの質問が出されました。これらを事前に講師の方に伝え、話の中に盛り込んでもらうことにしました。
授業当日、それまでの学びを十分に行っているので、講師の話を子どもたちは真剣に聞いていました。そして、自分が野菜作りで知りたかったことを夢中でメモしていました。

 講話の後には子どもたちから質問コーナーも設けました。お話を聞いて、さらに知りたいと思ったことについて田島さんに質問することができました。

「1日の仕事のスケジュールはどのようなものですか?」
「これからこばと農園をどのようにしていきたいですか?」

など、社会科で学習したこと以外の内容についても質問をしていました。社会科の学習ではありますが、同時に地域の学習にもすることができました。
また、田島さんという人を取り上げることでキャリア教育の一環にもなったと感じています。社会科として農家の仕事を取り上げた学習はこれで終わりますが、これからも田島さんの作る野菜からたくさんのことを学びたいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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