2018.02.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

食について考える

勤務校は夜間定時制で、1時間目が終わると給食の時間があり、その後に2時間目~4時間目の授業が行われます。給食は完全給食で、栄養バランスが考えられたものになっています。高校生にもなると好きなものを好きなだけ食べたり、朝は食べなかったり、食生活が乱れ始める人もいると思います。また、普段の生活の忙しさから、食について深く考える機会もないのかもしれません。本校の給食の時間も、食堂までの移動も含めて30分と、かなり慌ただしいのですが、その中でも食について考えてもらおうと、いろんな取り組みを行っています。今回は、給食担当職員と協力しながら、LHRなどで実施した取り組みについて紹介したいと思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

高校生の食生活の現状は・・・

本校は夜間定時制ということで、昼間は就労している生徒が多く在籍しています。そんな生徒たちは朝から夜まで就労と学校の予定がギッシリ詰まっており、時間的な余裕はだいぶ少ない状態です。朝は時間がなかったり、食欲がなかったりという理由から、食べないという生徒も多いようです。また、本校での給食の時間帯が18時頃と比較的早く、その後に授業があることから、帰宅して遅い時間帯に夜食を食べるという生徒もけっこういます。さらに、飲食店などで働いている場合は、お昼時は忙しくて食事がとれず、昼食の時間帯がかなり不規則になるという生徒もいます。

食べ物の好みに関しては、味付けの濃いもの、油っぽいもの、お菓子類などを好む生徒が多く、魚や野菜類は残食が多い傾向にあります。

本校に限った事情ばかりではありませんが、食生活はやや乱れ気味になっていると言えると思います。ただ、高校生という若さもあって、それに対する困り感というものはほとんどないのが現状です。

LHRで食育教室

こうした現状を踏まえ、忙しい生徒たちに、少しでも食について考える機会を設定しようと思いました。具体的には、給食担当職員の協力を得て、LHRの中で「食育教室」というものを行いました。実際にやった内容をいくつか紹介します。

(1)生徒によるアンケート分析
本校では食生活についてアンケートを取ったり、残食調査というものを行ったりしています。その結果はグラフ化して職員間で共有したり、生徒一人ひとりと担当職員が面談したりしています。それに加え、LHRの時間にパワーポイントを使って、保健給食委員の生徒が他の生徒にプレゼンする機会を設けました。また、それを受けて自分たちで自分たちの食生活について振り返ることができ、非常に有意義だったと思います。

(2)塩分量の体験
栄養バランスや塩分量について講話を聞いた後、実際に味噌汁を作って塩分量による味の違いを体験してもらいました。適正な塩分量で作ったものは「薄い!」という声も多く、「いつもは塩分とりすぎていたんだ~。これからは気をつけよう」というような感想が出てきました。こうした体験を交えた講座は生徒も関心を持ちやすく、最後まで興味を持って参加したようです。

(3)1食分のメニューを考える
その年度の最後には、1年間の学習を踏まえて、1食分の給食のメニューを考えてもらう講座も行いました。好きなものは入れたいけど、それを入れるとカロリーが・・・、塩分が・・・、他のメニューが寂しくなる・・・といった具合に、工夫を凝らしてメニューを考えていたようです。ちなみに、ここで考えたメニューを、実際に翌月の給食に反映していただいたこともあります。

親子フォーラム

生徒にとっての食事は学校の給食だけでなく、家庭で保護者の方から作ってもらう場合もあります。もちろん、自分で作るという生徒もいますが・・・。そこで、食について保護者の方と話をする機会を設けたいと考えました。生徒がいる時間帯に保護者会を行い、そこで食についての講話と対話の時間をとりました。対話は、以前から授業で取り入れている「p4c(全員で輪になって座り、毛糸でできたボールを回しながら対話する)」をやってみました。
以前書いたp4cについての記事「授業に対話(p4c)を取り入れる」はコチラです↓
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016000.html

テーマは「給食は好きなものだけ食べていい?完食すべき?」でした。保護者の方も一緒でしたが、表面上の話でなく、それぞれの本音を話すことができました。「嫌いなものを無理して食べると授業に影響が・・・」なんて声や、「自分で作ったものならまだしも、誰かが作ってくれたものは給食に限らず絶対残さないようにしている」なんて声もありました。また、給食だけでなく、家での食事の話題も出てくるなど、ざっくばらんに良い対話ができたと思います。

今回は食育の一環として行ったわけですが、高校生にもなると恥ずかしがって保護者の方とほとんど話さないなんて生徒もいるようで、そうした意味でも貴重な機会になったと思います。

給食は大事な時間

定時制における給食は全国的には縮小傾向にあり、パンと牛乳だけにしたり、廃止したりする学校が増えています。様々な事情があるので、それが悪いとは言えませんが、給食があるからこそできることもあります。前述しましたが、働きながら通学している生徒の1日は非常に慌ただしく、ゆっくり座って主食・主菜・副菜・汁物・牛乳といった組み合わせをしっかり食べる機会はなかなかありません。授業間の休憩時間も短く、放課後の時間がほとんどない夜間定時制だと、生徒と先生がゆっくり話したり、生徒同士が談笑したりする時間としても、本当に貴重な時間になっています。また、本校では各自がバラバラに食べるのではなく、テーブルごとに挨拶をして皆で一緒に食べます。月に1回は誕生会食というものがあり、その月に生まれた人を皆でお祝いします。

物理的な時間があまり確保できないのが心苦しいですが、給食の時間からも多くのことを学んでほしいと思いますし、私たちもそのきっかけをつくっていきたいと思い、今回はこの記事を書いてみました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

同じテーマの執筆者
  • 前川 修一

    明光学園中・高等学校 進路指導部長

  • 村上 稔

    陸中海岸青少年の家 社会教育主事

  • 中村 祐哉

    広島県公立小学校 教諭

  • 泊 和寿

    石川県金沢市立三谷小学校 教諭

  • 高岡 昌司

    岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 赤堀 達也

    旭川市立大学短期大学部 准教授

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 荒木 奈美

    札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授

  • 笠井 縁

    ユタ日本語補習校 小学部担任

  • 石元 周作

    大阪市立野田小学校 教頭

  • 平野 正隆

    東京都品川区立学校

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 青木 信一

    大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop