2022.05.07
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教師用ポートフォリオ

「自分が実践してきたことを形として残したい」
そう思ったことが、ポートフォリオを作るようになったきっかけです。毎年、様々な実践を行いますが、実践が終わってしまうとそこでどんな成果があったのかが分からなくなったり、自分がその年度にどんな価値ある実践を行ったのかということが分からなくなったりします。これまで総合的な学習の時間の指導などを通して、子どもたちに学習歴である「ポートフォリオ」の指導をしてきました。子どもたちが自分の学びの足跡を残し、常に自分の歩んでいる学習過程を振り返りつつ学習を進め、最後に自分にどんな力がついたかを確認できるツールです。そこで、私も数年前から自分自身の仕事を見つめるためのポートフォリオを作ることにしています。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

実践の足跡を残したい

ポートフォリオ

ポートフォリオについては、次世代教育クリエーターとして、教育界や医療界を先導する鈴木敏恵先生にご指導いただきました。鈴木先生は一級建築士であるとともに、プロジェクト学習の専門家として、そしてポートフォリオ評価の第一人者です。私も鈴木先生にご指導をいただき、これまで総合的な学習の時間を中心に、児童とポートフォリオづくりを行ってきました。ポートフォリオを作ることで子どもたちが学習歴を残すことができ、自分の成長を確認できます。そして、自己肯定感も高めることができると感じています。総合の時間だけではなく、自分学校生活に関するポートフォリオを作ったこともあります。この手法を生かして、自分自身も教員の実践をポートフォリオにまとめています。

ポートフォリオづくり

新年度を迎えると文房具屋に行き、お気に入りのクリアファイルを購入します。その年度の目標をイメージしながらファイルの色やデザインを決めています。私のひそかな楽しみです。今回は黄色のファイルにしました。今年度、たくさん良いことがあるように、明るい光が差し込むようにとこの色にしました。

ポートフォリオのファイルを用意したら、まずは表紙を作ります。表紙には今年度の「ビジョン」と「ゴール」を書きます。今年度1年間で「何のために何をやり遂げたいのか」を明確にすることで、今年度の目標もはっきりしてきます。今年度も、目標をしっかりと立てました。表紙をファイルに入れることで今年度のスタートの意欲が高まります。今年度は大きな研究授業を実践する予定があり、それに向かって頑張る1年になりそうです。そして、これまで取り組んでいる、NIE(教育に新聞を)や辞書引き学習、そして震災を取り上げた授業づくりという自分の教育3本柱にも取り組みます。そのように今年度の計画を立てました。ポートフォリオづくりはこのように自分の目標をしっかりと立てることにも役立つと実感されます。

表紙をファイルに入れたら、自分のおこなった取り組みの成果をどんどんポケットに入れていきます。まず初めに入れたのは、ある雑誌に書いた社会科のレポートの原稿です。昨年度の社会科実践を4ページのレポートに書きました。久しぶりに教育雑誌に掲載されたので、それを成果としてポケットに入れました。幸先の良いスタートだったと思います。これからどんどん自分なりの成果物を収納していく予定です。そして、年度末には大きくファイルが膨らむことを目標としてがんばっていきたいと考えています。

ポートフォリオを生かす

ポートフォリオを作って自分の実践の足跡を残していくことが一番のねらいですが、そのほかにもポートフォリオを生かす場面があります。それは、まず、自分がスランプに陥ったときに自分に元気を与えるためのツールになることです。私は仕事でも私的なことでもよくスランプに陥ります。何かうまくいかないと自分がだめだと思ったり、これまで自分がやってきたことが意味のなかったように思ったりすることがよくあります。そのような時にこのポートフォリオを観るようにしています。ポートフォリオには、自分が自分なりに頑張ってきたことが詰まっています。それを見ることで、もう一度がんばりたいという気持ちを取り戻せます。

また、新しい人と出会うときに自分のことを紹介するツールとしても使えます。ここ数年、毎年、東日本大震災を取り上げた授業を行っています。教材研究のために被災地に行き、様々な方とお会いすることができます。その時にポートフォリオを使ってこれまでの取り組みについて話をすることで、相手の方に自分自身について伝えることができます。実際の成果物を見せながら話をすることで、よりよく理解いただけるものと思っています。自己紹介のツールとしてもポートフォリオを生かしていきます。

このように、今年も自分の記録としてポートフォリオづくりを行います。今年度の終わりのどんなファイルになっているか楽しみです。たくさんの記録が詰まったファイルになるようにがんばっていきたいと改めて思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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