2022.04.16
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春休みの被災地訪問

東日本大震災以来、毎年のように震災を取り上げた授業を行っています。自分や大切な人の命を守れるように、そして自分が今、家族や友達と一緒にいられることのありがたさを感じ、自分や周りの人を大切にできるようにすることなどを大きなねらいとして活動を続けてきました。昨年度は初めて震災後の生まれの児童とともに学びました。3月までの実践を終え、ホッとしたところですが、今年度も引き続き授業づくりにチャレンジします。そこで、この春休みに再び被災地を視察に行きました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

福島県いわき・双葉町・浪江町を訪ねて

いわき市豊間の砂浜にて

今回視察に選んだ場所は福島県です。以前も原発の影響で帰還近内区域になっていた双葉町や浪江町を訪ねたことがありました。また、いわきの被災状況についても学びに行ったことがありました。しかし、新型コロナウイルス流行の影響で、いわき市の震災伝承施設が閉館している状況だったため、そこで語り部の方の話を聞く機会がありませんでした。

今回は浪江町の震災遺構として公開された「請戸(うけど)小学校」の見学と、いわき市の震災伝承館の見学、そしていわき市で語り部として活動されている方の話を聞くことを目的として福島県に出かけました。今回の訪問でも授業のヒントをたくさん得たいと思いました。

語り部の方との出会い

福島訪問1日目は、昨年も訪ねた双葉町・浪江町を訪ねました。昨年度訪れたときは、現在震災遺構として公開されている浪江町立請戸小学校を見学できなかったので、今回改めて訪ねることにしました。請戸小学校では、津波の時に迅速に避難を行ったため、子どもたちの被害は出ませんでした。しかし、校舎の内部を見学すると、津波の恐ろしいまでの威力を11年たった今でも感じることができました。当時使われていたと思われる資料やパソコン・デジカメといった機器などもそのまま置かれており、本当に津波が襲ってから時間が止まってしまったかのようでした。

また、請戸小学校から児童と先生たちが避難をした大平山をのぞむとかなり距離があることが分かりました。新聞記事や資料を読んだときは大平山が学校のすぐ近くにあると思っていました。しかし、実際に学校に行ってみてみると、全校で山に避難するのはかなり時間がかかるのではないかと思えました。このことからも、避難を迅速に決定した先生方の判断は素晴らしいと感じました。そして、平時から震災があったときにどのような行動をとることがよいのかを考えておく必要があると感じます。請戸小学校で学んだことや集めた資料などを活用して、学校での防災教育に生かしたいと思います。

そして、双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」も改めて見学しました。この施設は何度も訪れていますが、見学するたびに新たな発見があります。今回は、この施設でも語り部の方の話を聞くことができました。当時、南相馬市に住んでいらっしゃった方のお話でした。これまでの避難生活のこと、そして津波で亡くなった親類の話などをお聞きしました。やはり、被災された方の話を聞くことは当時のことを知るうえで大切であると感じました。

2日目にはいわきに戻り、いわきの震災語り部である小野陽洋さんに現地を案内していただきました。案内をしていただいた小野さんは、東日本大震災の際に自宅の2階で津波に襲われました。水が腰の位置まで押し寄せてくる中、何とかものにつかまって九死に一生を得たそうです。その経験をもとに、地域の伝承館で語り部活動をしています。

小野さんにはいわきの海岸沿いを順にご案内いただき当時の話をしていただきました。印象に残ったのは、自宅にいた際に津波が押し寄せたときの話です。実際に当時自宅があった場所にも連れて行っていただきました。そこから海を見ると、当時の様子がイメージできました。津波が襲った時のことを想像すると大変怖くなってきました。津波に襲われた前後のお話を詳しく聞くことができ大変勉強になりました。

今年度の防災教育に生かす

今回の福島視察を生かしていくつかの授業プランが頭に浮かびました。基本的に私の防災教育の視点として、教科にある既存の単元の学習を生かして防災を取り上げることです。そこで、これまでも取り組んできたように国語科で意見文を作成する際の題材として防災を取り上げることを考えています。学校での避難訓練や社会科での防災学習、さらには特別活動や特別の教科道徳との連携もしていければと思っています。様々な教科等の狙いを達成しつつ、子どもたちの防災意識を高めることができればと考えています。

そして、私が中心的に取り組んでいるNIE(教育に新聞を)の取り組みや、昨年度も行った被災地の語り部の方との連携も取り上げたいと思います。これまでの実践で実際に被災された方の話を聞いたり、新聞記事を読み被災地について学んだりすることで子どもたちの意欲も高まってきました。次の実践でも続けていきたいと思います。今年度も後半から実践を行っていく予定なので、少しずつプランを練っていきます。 

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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