2021.08.22
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今年の被災地視察計画

早いもので東日本大震災から10年が過ぎました。今年の3月11日には震災から10年目の節目ということでたくさんの被災地に関する報道があり、あの大きな震災について再び考える機会となりました。しかし、震災の記憶も風化も進み、私が担当している児童も震災を知らない世代になりました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

これまでの実践

視察に訪れた、震災遺構・宮城県山元町立山元小学校元校舎

これまでは児童と東日本大震災当日の様子について思い出すことからスタートしていました。児童にとっても大変印象深い出来事でしたので、ほとんどの児童が当時の様子を発表し、みんなで共有できました。

これまで、児童が当時の自分の周りの様子を思い出し、家族や身近な人に当時の様子をインタビューすることからスタートしていました。そうすることで、児童の震災に対する興味関心が高まり、当時の被災地の様子について思いをはせることになりました。そして、毎回、被災地を取材された新聞記者の方をゲストティーチャーに招き、児童に話をしていただきました。実際に取材当時の話を聞くことによって、児童の意識が高まり、学習の良い導入になりました。

これまでゲストにお呼びした記者さんから私もたくさんのことを学びました。宮城県の女川を取材され、その後も継続的に被災地を訪れている記者さんは、現地の被災者の方たちとの触れ合いについて解説してくださいました。息子さんを亡くされたお母さんが、息子さんが育てた朝顔の種を植えて毎年花を咲かせているという記事をもとに、お母さんの気持ちについて取材したことを教えてくださいました。

また、震災当時に東京で警視庁の取材をされていた記者さんは、東日本大震災が起こるとすぐに社に呼び戻され、チームを組んで岩手県陸前高田市の取材に向かったという話を聞きました。震災から1日たった現地の様子について写真をもとに詳しく話していただきました。また、どのように被災地の方に取材をしたのかを詳しく児童に教えていただきました。

ゲストに来ていただいた記者さんからは、震災の取材に関する話をお聞きするのと同時に国語科の学習の一環として、文章の書き方(記事の書き方)のコツも教わり、新聞づくりや提案文を書く活動に生かしてきました。社会科・国語科・道徳等の教科を横断的に使って防災を取り上げた授業を行ってきました。

今年の計画

今年度は3年生を担当しています。これまでも3年生で防災教育を実践してきました。児童の発達段階を考え、特別活動で地震から身を守る方法について学んだことや道徳で命の大切さについて学んだことを生かして、社会科や国語科を通して地震・防災についての調べ学習をしました。そして、防災について考えたことを新聞や意見文にまとめる形で実践を行ってきました。今年度も基本的にはその形をとりたいと思っています。

まずは、教科等の学習の中で、東日本大震災についての話を取り上げるようにしました。国語科で国語辞典を学習する場面です。私のクラスでは辞書引き学習に取り組み、子どもたちが知っている言葉を見つけて、どんどん辞書に付箋を貼る活動を行っています。そこで、1枚の写真を児童に提示しました。教室の外から撮影された写真で、机には辞書引き学習をしている辞書がたくさん置いてあります。「どうして誰も子どもがいないのかな?」と質問すると、子どもたちは迷っていました。そこで、この写真はジャーナリストの安田菜津紀さんという方が撮影した写真で、原発事故のために使えなくなってしまった学校だということを話しました。そして、辞書引き学習を途中でやめなければいけなくなった子どもたちの気持ちを考えました。児童は、この写真を見て、自分も辞書引きをがんばろうという気持ちになっていました。このようにさりげなく、東日本大震災のことを児童に知らせていきます。

これから、2学期に社会科で消防の仕事について学習します。また道徳でも命の大切さについて考える機会があります。また、特別活動で避難訓練をはじめとする防災教育があります。それらの活動を有機的につなげていきたいと考えています。

防災教育実践計画

今年度は、2学期に行われる学校の避難訓練を起点として、事前学習の段階で、東日本大震災について学ぶことからスタートしていきたいと思います。子どもたちは震災当時の記憶がないため、保護者の方に協力いただき、当時保護者の方がどんな経験をしたのかを話していただこうと思っています。そして、新聞記事などを生かして、震災の被害について学びたいと思います。そのような活動により、児童が意識して避難訓練にも参加できると思います。防災への意欲の高まりも期待できるでしょう。

その後、社会科で地域の防災について学習をします。そこでの学習において東日本大震災での救助活動などを例に取り上げます。また、同時に道徳でも、命の大切さを主題にした東日本大震災に関する教材を取り上げ、震災について考える時間を設けていきます。それらの学習により、各教科のねらいも達成しながら東日本大震災についての知識も得られるようにします。

また、毎朝行っている新聞トークでも震災に関する新聞記事を紹介し、震災について子どもたちと考えていきます。防災に関する学習では継続性や日常化が大切だと考えています。常に、子どもたちの頭の片隅に震災や防災のことがある状態でメインの学習に進みます。

最後には、国語科で地震の時の身の守り方について考え、意見文にまとめる活動を行います。ゲストとして招いた新聞記者に震災の取材についての解説もいただきながら、同時に文章の書き方のコツについても教えていただきます。それを生かして、調べたことをまとめる学習を行います。

これらの学習を有機的に行い、子どもたちの防災意識を高めていきたいと考えています。授業の様子など改めてレポートしていきます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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