2021.07.15
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1年間の実践記録(前半)

今回は、初めて実践記録に挑戦してみました。
全国の先生方のほんの少しの参考になれば幸いです。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

1.はじめに

私は、毎年、どの学年を担任しても、クラスの子どもたちには、自分たちで考えて、合意形成を図りながら集団生活をできる「自治的集団」であってほしいと願い、日々指導をしている。昨年度、幸運にも教師人生初めての1年生の担任をさせていただくことになった。
1年生の担任の先生というと、最初は教師が主体となって子どもたちに学校の決まりや生活の仕方を指導していくことになるが、それが2学期、3学期になっても抜けきらず、いつの間にか、教師の意のままに動かされる子どもたちの集団になってしまうということが散見された。1年生の担任が決まったときに、1年生であっても、1年生なりの「自治的集団」となるようにサポートをしていこうと決めた。そこから、どういう手立てを施していけば、1年生が教師抜きでも「自分たちで考え、動ける集団」になるだろうかと日々考え、思考していた。

そこで、目をつけたのが、「授業の在り方」である。児童が、学校で過ごす大半の時間は、授業である。その授業を「自治的」にすれば、「自治的集団」に近づくのではないかと考えた。
振り返ると、私は、所謂一般的な教師主体の一斉型授業を行っていた。教師が課題を設定し、「では、一人で考えてみよう」と声をかけ、「意見はありますか?」と子どもたちに聞き、まとめでさえも……。こういった授業は、教師のレールに乗せているため、教師からしたらやりやすいやり方ではある。しかし、子どもたちはどうであろうか。確かに、素直な子どもたちは、何の疑問ももたずに教師の言うことをしてくれる。考えてと言えば必死に考えてくれる。ただ、このやり方は、子どもたちの主体性を奪ってはいないだろうか。中央教育審議会答申で「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善が求められている中で、この授業方法は、「主体的」に当てはまるのだろうかという考えが出てきた。そこで、今まで、教師が授業の流れの主導権を握っていたのを、子どもたちに明け渡す本物の「子ども主体の授業」を試みることで、自治的集団に近づくのではないかと考えた。それは、もちろん挨拶から始まり、時間管理、司会進行等、全てを子どもに任せる取り組みである。以下に、1年間、1年生の子どもたちと取り組んできた実践の報告、考察を行い、更なる改善のための課題を示していきたい。

2.具体的な手立て(授業の流れのルーティン化)

いきなりではあるが、メジャーでも大活躍したイチロー選手を知らない人はいらっしゃらないと思う。あのイチロー選手は「ルーティン」を大切にしていることはあまりにも有名である。家を出るときから打席に入るまで、ありとあらゆることをルーティン化していく。それは、余計なストレスをなるべく省き、野球に集中するためだと言われている。ルーティンをもつことで、精神を安定させ、いつも通りの力を発揮することができるのである。

ここで、話を国語科の授業に戻す。授業を受ける子どもたちも、毎回違った流れで1時間の授業が展開されたら落ち着かない子も出てくるのではないであろうか。だからこそ、私は国語科の授業に子どもたちの中から司会者を選び、毎回以下のように同じ流れで進行させることを考えた。

  1. 前回の振り返り(2分間)
  2. めあての確認
  3. 一人学び(5分間)
  4. グループトーク(7分間)
  5. 全体交流
  6. まとめ
  7. 振り返り

この7つの手順で司会の子が進めていく。もちろん、司会者がどこで何を言うか一つひとつのセリフも決めている。そして、グループトークの話し合いの仕方も台本をもたせて毎回同じにしている。

1時間の授業の流れが毎回同じだからこそ、子どもたちは見通しをもつことができるのである。教師の都合で、「今日は、こういう流れで」「明日はこういう流れで」となってしまっては、子どもたちが混乱する。何ができればよいのか見通しをもつこともできない。しかし、授業の流れを一定にし、子どもたち自身が、司会をしていくことで見通しをもって、毎回同じように学習に取り組める。だからこそ、気持ちが安定する。気持ちが安定することで、本時で達成したい課題にも集中して取り組むことができるのである。そして、何より司会者をたて進行表に沿って子どもたちが授業を進めていくことで「自分たちの授業」だという意識も育てることができると考える。現に、1年生の2学期から国語科限定で始めたこの授業形態であったが、子どもたちからは、「こっちのやり方のほうが楽しい」という声が多数あり、3学期には、自発的に「算数でも自分たちでする司会の授業のほうがいい」ということで算数科の授業の司会進行をする算数係が発足した。このことからも、「子ども主体の授業」は、「自分たちで授業を行う意欲の喚起」や「自分たちで授業を創る意識をもったクラス集団」の一助になっていたと考える。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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