2021.06.14
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国語の教材研究ってどうやるの?(4回)

教材とは「教科内容と教材内容を児童に習得させるための素材」です。私たち教師はこれを効果的に活用するため教材研究が欠かせません。では、どのように教科内容と教材内容を教えていけばよいのでしょうか。 今回は教材研究をテーマにお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【教材の定義】

多くの先生方は毎日授業をしていると思います。授業を成立させるために、必要不可欠なものと言えば何を思い浮かべますか。私は「教材」です。どのような授業展開にしても、どのような提示にしても、教材は必要になってきます。
では、教材とはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみると次のように記載されていました。

「授業や学習に用いる材料」

そうですね。「教える」「材料」だから「教材」なのですね。しかし、「教える材料」では抽象的ですね。もう少し教材の定義について調べてみましょう。
一般社団法人日本図書教材協会では教材を次のように定義しています。

「教材とは、一定の目的や目標を達成するために行われる教育において使われる素材」

ここで言う「目的や目標」とは「教科内容や教材内容」だと考えます。教科内容と教材内容については後述します。つまり教材とは「教科内容や教材内容を児童に習得させるために提示する素材」のことだと言えます。

【教材研究に費やす時間】

小学校の日課は通常6時間です。これはつまり、毎日6時間分の授業準備をしなければなりません。多くの学校では1コマ45分を採用しているので、学級担任の先生は毎日【45分×6】分の準備をする必要があります。
しかし、私たちの労働時間は有限です。みなさんは毎日どのくらい授業のために時間を使っていますか。
少し古いデータですが、ベネッセ教育総合研究所が「教材研究等の時間」について実施した調査があります。そこで小学校教員の教材研究に費やす時間は平均「93.9分」だそうです。
みなさんはどうですか。この数字より多いですか。それとも少ないですか。
これはキャリアによって変わってくると思います。私も十分な時間がとれているとは言えませんが、「無計画に授業を展開することだけはしない」と決めています。

【国語の教材研究が難しい理由】

国語の授業はどの学年でも、ほとんど毎日行われます。しかし、若手の先生に話を聞くと国語の教材研究に困っていることが多いように感じます。その理由として「授業展開がわからない」「何を教えればよいか不明確」といった声を聞きます。
例えば算数の教材研究では、このような声は聞きません。なぜ国語の教材研究は難しいのでしょうか。
それは「教科内容」と「教材内容」の把握ができていないからだと考えます。教師が教材を読み込み、教えるべき2つの内容を把握することが「国語の教材研究」です。
では、教科内容・教材内容とはなんでしょうか。解説していきます。

【教科内容】

教科内容とは「その教科で教えなければならない内容」です。ここでは国語という教科の中で教えなければならない内容です。
現在の日本では、教科書検定に基づき、多くの国語の教科書が流通しています。同じ学年の教科書でも、教科書が違えば扱う作品も変わってきます。そして、その教科書を採択するのは自治体の判断です。つまり、子ども達によって、触れ合う作品が異なってくるということです。
しかし、それらは作品は違えど、すべて学習指導要領に基づいて教えるべき内容が決まっています。それが教科内容です。具体例を挙げて解説します。

【『大造じいさんとガン』の場合】

この作品の指導目標の一つとして
「登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えることができる」
とあります。これが教科内容です。ではそれを教えるためにはどうすればよいでしょうか。

〇手順

・学習用語を教えます。
「心情とは、登場人物が心の中で思っていることや感じていることです。直接書かれていなくとも、行動や会話、情景にも表れます」
「情景とは、登場人物の気持ちと響き合うように描かれた風景や場面のことです」

・発問します。
「2の場面で、大造じいさんの心情が現れている情景を書き抜きましょう」
→『あかつきの光が、小屋の中にすがすがしく流れ込んできました』

このように、学習用語を活用し、どの作品においても「心情」「情景」を捉えることができるようにすることが大切です。

【教材内容】

教材内容とは、「その作品でなければ、教えられないこと」です。作品の鑑賞指導について、私の師である植草学園大学名誉教授の野口芳宏先生は次のように仰います。
「鑑賞とは、書いてあることをもとに、書いていないことを論理的に読み解くこと」

では、それは具体的にどのように指導すればよいのでしょうか。先程の『大造じいさんとガン』を挙げて説明します。

〇手順

・文章を読みます。
「じいさんは、72さいだというのに、(中略)今から35、6年も前、まだ栗野岳のふもとのぬま地にガンがさかんに来たころの、ガンがりの話もありました」

・発問します
「ある晴れた春の朝の大造じいさんは何歳ですか」
→『39歳または40歳』
「そう思う理由を書きましょう」
→『現在が72歳、それの35、6年前だから、闘いが繰り広げられたのが36、7歳です。そして最後の場面は闘いが始まって4年目なので、39、40歳です』

このように子どもが一人で読むと、読み流してしまうようなところを発問します。そうすることで、正しい読み、深い読みをさせ、作品の魅力に気付かせます。
というわけで今回は「教材研究」をテーマにお話ししました。
次回は「発問」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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