2021.04.09
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

国語の学力ってなんだろう?(1回)

授業の目的は学力形成です。 国語科における学力とは読字力、語彙力、文脈力の3つです。 今回は読字力についてご紹介します。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【縁】

こんにちは。山本裕貴です。前回の連載に引き続き、今回も記事を書かせていただけることになりました。このような機会があることを、本当にありがたく感じています。読んでくださった方に、「読んで良かった」と少しでも思ってもらえるよう頑張ります。どうぞ、よろしくお願いします。

私は、千葉県で小学校の教員をしています。まだまだ未熟な教師ですが、「国語教育」を専門に研究をしています。そこで、今回の連載は「国語教育」について書かせていただこうと思います。私は国語が好きです。国語の授業をするもの好きです。国語の授業ってとても楽しいのです。それをみなさんにお伝えすることができたら、それほどうれしいことはありません。

こうやってこの記事を読んでいるのもなにかの縁です。こういった状況を表すことわざがあります。「袖振り合うも、たしょうの縁」よく耳にすると思います。
では、「たしょう」とはどのような漢字でしょうか。

  A 多生

  B 他生

正解はAの「多生」です。多生とは、仏教の言葉で「何度も生まれ変わる」ということです。私とみなさんも多生の縁があります。このあともお付き合いいただけたら、幸いです。 

【授業の目的ってなに?】

学校の先生ならば、授業をします。「教師は授業で勝負」ということも良く言われます。それほど、授業は大切なものです。
では、授業とはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみると、次のように書いてあります。

「学問や技術を、教え授けること」

そんなの当たり前だよ。なんて言葉が聞こえてきそうです。では、もう一つ尋ねます。

「授業の目的はなんですか?」

これを聞かれると難しいのではないでしょうか。教育の目的は人格の完成を目指すことですが、授業の目的はなんでしょう。
私は授業の目的は「学力形成」だと考えます。教師は授業をすることによって、子どもの学力を形成しなければなりません。だから良い授業というは、学力が形成される授業です。
このように「なんのためにやるのか」という目的を明確にしておこなうことが、肝要です。

【国語における学力】

授業は学力を形成するためにおこないます。では、次は学力とはなにかということを考えなければなりません。学力とはなんでしょうか。そこを定義しておく必要があります。分からないものを形成することはできないからです。

ここでは、国語における学力について考えてみます。小学校学習指導要領には、国語の目標や指導内容が書かれています。しかし、指導要領は約10年ごとに改定されます。それは、時代に即した目標や指導内容にするためです。

時代が変わっても、変わることのない学力。不易の国語学力とはなんでしょうか。私の師である植草学園大学名誉教授の野口芳宏先生は次の3つだと述べています。

1 読字力
2 語彙力
3 文脈力

この3つは、どのような時代であろうと、子どもが身につけるべき学力です。よって、国語ではこの3つの学力を形成する授業をおこなわなければなりません。

では、この3つの学力とはどのようなものでしょうか。どのような授業をすれば、3つの学力が形成されるのでしょうか。今回は、読字力に焦点をあてて説明したいと思います。

【読字力】

読字とは、文字を読むことです。読字力における文字とは漢字のことです。つまり、読字力とは「漢字を読むことができる力」ということです。

私たちが使う日本語は、平仮名・片仮名・漢字で構成されています。この中で漢字のみが「読み方がわからない」という場面に出合うことがあります。読み方が分からないと、文章を読み解くことができません。よって、国語では「漢字を読むことができる力」を優先して身につけさせるべきです。
では、どのように身につけさせれば良いのでしょうか。正解は次の通りです。

「早い時期から、何度も触れさせること」

例えば、多くの人は名前に漢字が入っています。名前に使われている漢字は、習ったことがなくとも、読むことができます。それがたとえ小さな子どもでも。それは、早い時期から何度も目にしているからです。

では、授業の中ではどのように取り入れていけば良いのでしょうか。4年生の国語「ウナギのなぞを追って」を例に説明します。

◯具体例

・題名を漢字に直します。「鰻の謎を追って」
「ウナギ」「なぞ」というのは、漢字があることを教えます。
※題名は漢字にすると印象が変わってしまうので、それ以降は平仮名で書きます。

・本文を読んでいくときに、漢字で表せる単語は漢字に直します。
 「たまご」→「卵」

・それ以降の板書には「卵」と漢字で書き、振り仮名をつけます。
※子どもは漢字で書かなくとも良いことを伝えます。
「先生は漢字で書きますが、ノートをとるときは平仮名で良いですよ」

・単元の中で何度も卵という漢字に出合わせることで、読めるようになります。

この指導をするときのポイントは、先生は漢字で書きますが、子どもは漢字で書く必要はないということです。ただ読むだけで良いのです。ですが、多くの子どもは漢字で書きたがります。新しい知識を得る喜びを知っているからです。

【国語の授業は楽しい】

授業は楽しいものです。教師が楽しいと実感し、授業をすれば、子どもも楽しく学ぶことができます。しかし、そうはならないときもあります。それは「授業準備ができていないとき」です。

以前一緒に学年を組んだM先生という方がいます。ベテランの学年主任でした。M先生には多くのことを学びました。中でも心に強く残っている一言があります。
ある日の放課後、職員室に戻るとM先生が学年の仕事をしています。とても忙しそうです。私は慌てて「先生、お手伝いします」と声をかけました。すると、このように言われました。

「山本さん、明日の授業準備は終わった?そちらを優先してやりなさい。準備が出来ていない授業は、楽しくできないよ」

本当に授業を大切にされる方でした。M先生の教材に向き合うひたむきな姿勢、心より尊敬しております。

というわけで、今回は「読字力」をメインにお話させていただきました。次回は「語彙力」についてお話しします。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop