2021.05.25
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文脈力ってなんだろう?(3回)

いつの時代も読解力を身に付けることが求められます。国語における読解力とは文脈力だと考えます。 文脈力とはなんなのでしょうか。今回は国語の授業を通して、子どもに文脈力をつける方法をご紹介します。

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属 山本 裕貴

【PISA】

OECDはPISA(Programme for International  Student Assessment)と呼ばれる国際学習到達度調査を行っています。PISAでは15歳を対象に読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの三分野の到達度を図ることを目的としています。

前回の調査では、日本の読解力は参加国中15位です。これは前々回の調査時の8位から大幅に順位を落としています。これは日本の子たちの読解力が低下しているということでしょうか。そもそも読解力とはなんなのでしょうか。

【PISA型読解力】

文部科学省は「PISA調査における読解力の定義、特徴等」において次のように読解力を定義付けています。

「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」

つまりこれは、「社会参加のために、文章を理解して、利用して、深く考える力」であると言えます。これは日本の国語教育で育成する読解力とは少し異なるように感じます。

では、国語における読解力とはなんなのでしょうか。

【国語の読解力とは?】

国語における読解力とは「文脈力」です。これは植草学園大学名誉教授である野口芳宏先生が提唱されている国語学力三要素のうちの一つです。学習指導要領は10年に1回、改訂されます。しかし、本当に身に付けるべき不易の国語学力は「読字力」「語彙力」「文脈力」です。

ところで、「文脈」とはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみましょう。次のように書かれています。

「文章の流れの中にある意味、内容の繋がり具合のこと」

「山脈」とは山が連なっているから「山脈」です。ですから「文脈」は文が連なっているのです。その繋がりの意味、内容を正確・適切・論理的に理解することが「文脈力」です。

【文脈力をつけるには】

では、文脈力を子どもたちに身に付けるにはどのようにしたらよいのでしょうか。結論をお伝えします。

「間違いを正すこと」です。

多くの先生方は、国語の授業において「間違いを正すこと」に否定的です。それは子どもの自由な考えを尊重するという立場から来ています。そのような立場を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、教師は子どもに正解を教える必要があると考えます。

私はよく、次のような例え話を子どもたちにします。水泳指導を想像してください。間違えたフォームで泳いでいる子どもがいます。その子の間違えたフォームを認めることが教育なのでしょうか。間違えたフォームを肯定することで、その子は上達するのでしょうか。

だから私は「間違いを正すこと」が教育において重要だと考えます。野口先生はこれを「否定の生産性」と呼びます。

【まだ言わないよ】

では、ここからは実際にどのような授業をすれば文脈力が付くのかを解説します。光村図書の5年教科書に「なまえつけてよ」という物語文が掲載されています。物語のあらすじはここでは割愛しますが、中心人物である「春花」と転校生の兄弟である「勇太」と「陸」が会話している場面があります。

〇会話場面

春花「あそこの牧場で子馬が生まれたんだよ。あたし、子馬の名前を考えてって、牧場のおばさんから、たのまれちゃった。」

陸「わあ、すごいね。なんてつけるの。」

目をかがやかせたのは、陸のほうだ。勇太は顔を上げて、ちらっと春花の方を見た。でも、すぐに目をそらした。

春香「まだ言わないよ。明日の放課後、牧場のところに来て。そうしたら教えるから。」


ここで発問します。

「まだ言わない理由は何故か。ズバリ一言でノートに書きましょう。」

子どもの解答は大きく二つに分かれます。

A「まだ名前が決まってないから」
B「二人に牧場にきてほしいから」

どちらが正解だと思いますか。正解はBです。なぜならば、名前が決まってないのであれば「まだ決まってないよ」と春花は言うでしょう。しかし「まだ言わないよ」と含みを持たせたのは、二人に牧場にきてほしい、そして仲良くなりたいという春花の気持ちがそう言わせたのです。

このように、子どもに思考させ、最後に正しいことを教師が教える必要があります。これが文脈力を身に付けるためには肝要です。

【読書をしていますか?】

手前味噌で大変恐縮ですが、私は1日平均1冊、本を読むようにしています。もちろん、平日は仕事が忙しく達成できないときもあります。休日にまとめて読むときもあります。でも、平均1冊は読むことができるように心がけています。

今ではこんな私ですが、実は読書は大嫌いでした。24歳までほとんど活字に触れてきませんでした。お恥ずかしい限りです。そんな私が読書をするようになったきっかけがあります。それは教師になって2年目の年でした。

大学の2つ上の先輩で、千葉の小学校の先生がいます。私はそのI先生が大好きで慕っていました。卒業してからも年2回程は会うことがありました。そんなI先生がある日こんなことを言っていたのです。

「裕貴(筆者の名前)、俺やっと気づいたよ。読書は財産になるということを」

その「財産」という言葉に惹かれました。私も「財産」を積み重ねたいと思いました。だから、今の私がいます。I先生、あのとき導いてくださり、ありがとうございました。

というわけで今回は「文脈力」をテーマにお話ししました。
次回は「教材研究」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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