2021.04.02
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魅力的な学習課題への道程~1~

今回は私の経験談を交えながら、魅力的な学習課題を模索し始めたきっかけから紹介しています。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

大学院進学

初めまして。前回に引き続き執筆させて頂くことになりました川上健治です。さて、私事ですが、この春から現場を離れ、大学院に2年間進学することになりました。ですので、今期からはその大学院で学んだことを自分なりに解釈し、現場の先生方にも応用できるような形でまとめていきたいと考えています。

さて、その第1回目ですが、これを書いているのはまだ3月であり、学級じまいに奮闘しているさなかですので、今回は、なぜ大学院進学に至ったのか私の考えを徒然なるままに書いていこうかと思います。

1.国語嫌いを国語好きに

特に若い先生方は、こんな思いをしたことはないでしょうか?「明日の国語の授業どうしよう」「このお話で何を教えたらいいの?」「この単元で……」等々。私自身、塾で国語を専門に教えていたので、「小学校の教師になっても国語の授業はそこまで苦労することなんかないだろう。むしろ、楽しみだなぁ」と思っていました。しかし、その淡い期待は早々に打ち崩されました。

初任で3年生をもたせてもらったのですが、忘れもしません。光村図書にある「きつつきの商売」の物語文を見た時の衝撃を。お話だけ載っている教科書だけで、「さぁこれで好きなように授業をしてください」と言われている気がしたのです。一流の料理人とそうではない一般の料理人との違いは同じ食材を見たときに、どういう発想ができるかだそうです。つまり、キャベツを見てロールキャベツしか思いつかないのか、はたまたロールキャベツに加え、お洒落なキャベツの春巻き、キャベツと納豆サラダ等々(私の拙い料理の知識なので例えが適切かどうかは知りません)たくさんの選択肢から思いつけるのかの違いです。国語の授業も全く同じです。同じ文章をどう解釈して、子どもたちとどう学んでいくかはその教師の発想力と指導力にかかっています。とはいえ、初任のころの私は、「きつつきの商売」を読んでも、全く何を教えていいか分かりませんでした。料理で例えるなら、キャベツを見てキャベツとしか見えなかったのです。

もちろん、その後の授業はご想像の通りです。自分でも全く覚えていません。思い出したくもありませんが、その当時の子どもたちにとっては、人生で一度きりしか学ばない「きつつきの商売」の授業をはじめ、3年生の国語の授業を棒に振ったことをとても申し訳なく思いました。そして、教える側の人間がそんなやっつけ仕事のように授業をしていたら、子どもたちにも伝わり、国語が嫌いになっていくのは当たり前です。そこからは、たくさんの教育書を読み、自分でも勉強をして、やっと、「国語の授業が楽しいと思ってもらえるような授業をしたい」という思いをもち始められる段階にきました。

2.好きこそものの上手なれ

「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。この言葉の意味はもちろん、「好きなものは熱中することができるので、上達も早い」です。勉強も同じです。だからこそ、国語の授業も「面白くないなー」と思いながら授業を受けるのと、「国語めっちゃ楽しい」と思いながら授業を受けるのとでは、教育的効果は全く違います。だからこそ、前述したように「国語嫌い」から「国語好き」への転換を子どもたちにはしてもらいたいのです。ただ、もちろん「国語好きになってや~」とだけ言っても国語の授業を好きになるはずがありません。本当の「国語好き」にするには、国語の授業そのものが魅力的でなければなりません。
私は、とりわけその中でも、その時間ごとに提示する「学習課題」が魅力的であれば「国語好き」な子どもが増えると信じています。

また、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学びの実現」がキーポイントとして挙げられました。誰もが目指すのは「深い学び」の実現です。文章を読んで「嬉しい気持ちと書いているから嬉しい気持ちだと思います」ではいけないのです。でも、「やらされている・読ませられている」国語の授業では「深い学びの実現」は、もともと力のある子以外(そもそも力のある子はどんな授業でも自分自身で主体的になれる力が備わっているように感じます)到底、無理です。そもそも「深い学び」を実現させるには、「対話的」でなければなりません。友だちと意見を交換することで、自分では考えられなかったことが知れたり、既有の知識と結び付けることで考えが広がったりし、深い学びの実現に繋がっていくのです。でも、これも「やらされている・読ませられている」国語の授業では、対話的になんかなりません。では、どうすれば対話的になるかと言えば、「主体的になる」ことです。ここで言う主体的とは以下のように定義づけされています。

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学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに、学習活動を自ら振り返り意味付けたり、身に付いた資質・能力を自覚したり、共有したりすることが重要である。
中央教育審議会答申(平成28年12月)より抜粋
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そうです。「主体的な学び」とは、学ぶことに、まずは興味や関心を持たさなければならないのです。興味や関心をもたせるには「国語って面白いなぁ」と思ってもらう必要性があります。では、「国語って面白いなぁ」と思ってもらえるようにするにはどうすればよいか。それの一つの手段が「魅力的な学習課題」なのです。本時の学習課題をしっかり考え、提示してあげると、子どもたちは「興味や関心を持ち、粘り強く取り組むことができる」はずです。すると対話的にもなるし、深い学びの実現にも繋がりやすくなるのです。

3.誰にでも応用できるものでなければならない

ここまで書いてきたので分かると思いますが、私は大学院で「魅力的な学習課題」について研究をしていこうと思っています。それも、誰にでも応用できるようなパターンを作りたいと思っています。

たまに、研究授業にだけかなり力を入れ、これ見よがしに掲示物も作成する先生や研究会を見たことがありませんか?そういうのを見ても、初任者や若い先生方は真似しようとも、自分に取り入れようとも思いません。なぜなら、「国語の授業は毎日あるから」です。そんな労力を毎日国語の時間にだけ費やすことはできません。お子様がいらっしゃり、どうしても時間に制約のあるお母さん先生やお父さん先生ならなおさらです。

だからこそ、「その授業1時間だけ」のものではなく、誰にでも使えるような「魅力的な学習課題」になるような方法をパターン化できたらと思っています。その一つが例えば、前回の記事でも紹介しましたが「動画を使って教師が学習課題を作り出す」という方法です。これは、まだまだ改良が必要なパターンですが、こういうふうに「誰にでも・すぐに」使える方法を提案していけたらと思います。

次回は、もう少し具体的な内容に踏み込んで書けるかと思います。今期もよろしくお願いいたします。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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