コロナ禍でも不易の要約指導
今回は、「要約指導」について紹介します。巷には、たくさんの要約指導についての情報があります。今回から2回続けて、私も要約指導について紹介します。数ある指導方法の中の一つの参考例にしていただけたら幸いです。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
明けましておめでとうございます。昨年度は、新型コロナウイルスの影響で未曾有の事態を経験しました。約2カ月間の休校を強いられたことにより、各教科の内容の精査を今まで以上にする必要性に迫られました。確かにしんどかったです。ただ、悪いことばかりではありませんでした。内容を精査していく中で、どこに焦点を当てて指導するべきかということもみえてきました。例えば、今までは、説明文、物語文単元に数十時間をかけて、指導していたことも、「本当にそんなに時間をかける必要があるのか」「そこまでかけて本当に子どもたちの力になっているのか」「数十時間も時間をかけずとも指導事項を取捨選択すれば子どもたちに力をつけられるのではないか」等々を再考するきっかけにもなりました。
前置きが長くなりましたが、今回は、そんな中で行った国語科の「要約指導」について紹介させていただきます。私は、この仕事を始める前に塾の国語科講師として働いていました。受験生を指導していても、賢いのだけれども、いわゆる「自分の思いを文章化する力が弱い。だけれど、その力が非常に重要だ」ということを痛感しました。その思いから、毎年、作文やら毎日日記やらでとにかく書くことに慣れさせようとさせています。ただ、じっくり時間をとって「書くこと」だけに特化した時間をとれないのも実情です。そんな中、この「要約指導」では、思いっきり「書くこと」の指導ができます。どのポイントを書くべきなのか、どの接続語を使うべきなのか等々、今後の「書くこと」にも十分転用できる力を身に付けさせられると考えています。
使用した教材は「パラリンピックが目指すもの」(東京書籍.3年)です。この単元で、3年生児童は、初めて「要約」という言葉を耳にします。ですので、初めに「要約」とは何なのかということを指導しなければなりません。
1.「要約」指導のその前に…
まず「要約」とは何かを理解してもらわないことには、次に活かせません。だからこそ、「この単元では、文章を短くまとめる『要約』ということをするんだよ」ということを名前とセットで伝えます。私は、「要約」という名前まで必ず教えます。今学習していることに名前とセットで覚えさせることは非常に重要です。名前を教えることで子どもたちの頭の中も焦点化され、整理されます。また、今後、「要約」という言葉が出てきてもすぐに反応できます。加えて、国語には、有名な「要点」「要約」「要旨」という3つの似かよった言葉も出てきます。それらの違いを明確にするためにも必ず名前と意味はセットで伝えなければならいと考えています。
2.「要約」の説明について…
では、名前をおさえたところで「要約」の説明です。「文章を短くまとめる」とだけ言われても、大半の子どもたちはピンときません。そこで、私はいつも子どもたちに馴染みのあるアニメを使って説明します。今の子たちだったら間違いなく『鬼滅の刃』です。特にこれを指導した時期は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』という映画が上映されていたのです。これを使わない手はありません。ここからは、私と子どもたちのやりとりを簡単に紹介します。
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私: 要約っていうのは文章を簡単にまとめることなんだけど……。
子どもたち: ……。
私: みんな「鬼滅の刃」って知ってる?
子どもたち(ほぼ全員の子): 「知ってる、知ってるー」
私: じゃ、ちょっとこの「鬼滅の刃」を使って要約を説明するね。
今、「無限列車」の映画やってるよね?あの映画観た人が、観ていない人に説明するとき、映画と同じ何時間もかけて説明する?
子どもたち: そんなんしないよ。
私: なんでそれはしないの?
子どもたち: だって、めんどくさいし。長いし。
私: だよね。最初から、細かく「ねずこが~なって、炭治郎が~なってね」なんて説明しないよね。各場面で大事な所だけ、抜き取って(ピックアップ)、それをくっつけて説明するよね(漫画はどちらかと言えば物語文に近いですが、あくまでたとえなので気にしません)。文章の要約も一緒。文章の最初から最後までを詳しく説明していたら、長いし、それだったら文章読んだのと変わらないよね?だから、まずは各段落で大事な話は何なのかということを考えて、それからそれらをくっつけるんだけど、……そもそも各段落での大事な点のことを何と言うんだっけ?
子どもたち: 要点!(久々でしたので、すんなり出なかったですが……)
私: そうそう。この要点を考えて、後はくっつけるんだよ。そしたら、この文章の要約が出来上がるよ。だから、簡単に言うと、①から④段落の文章だと「①+②+③+④の要点=要約」となるんだよ。
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というふうに説明しました。同じ説明をするにもやはり、子どもたちが少しでも食いついてくれるたとえ話の方が、話す方も理解してもらいやすいし、子どもたちも面白いし、両者win-winの関係になれるのでおすすめです。
そして、一通り要約について説明したところで、実際に教材文で要約にチャレンジしていきます。その指導の具体は次回の日誌で紹介させていただきます。
最後になりましたが、本年もよろしくお願いいたします。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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