2020.12.19
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新聞記者から学ぶ

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

ゲストの記者が書いた記事を読む

毎年、さまざまな教科領域で、新聞記者をゲストティーチャーとして招いた授業を実践しています。今年度から完全実施された新学習指導要領では、その総則にも新聞の活用が盛り込まれました。各新聞社の学校への協力も大変厚く、授業などへの記者派遣を積極的に行っていただけています。

本校では毎年様々な形で記者の方で授業をお願いしています。これまで、防災を取り上げた授業で、被災地の取材について話をしていただいたり、新聞を書くことを目的とした授業では新聞の書き方を教わったりしました。児童は実際に自分が読んだ記事を書いた記者から話を聞くことで、大変意欲的になります。今回もゲストにいらっしゃる記者の記事を事前に児童に紹介しました。

今回ゲストティーチャーとしてお呼びしたのは、地域の埼玉新聞社のA記者です。A記者はさいたま市を中心とした地域の取材をされてきました。そして、現在は県庁担当のキャップとして、コロナ関係の記事や埼玉県知事の取材、そして選挙に関する取材など、重要な任務についていらっしゃいます。かなりの頻度で埼玉新聞の一面の記事を書いていらっしゃいます。その記事を児童に紹介することで、記者の話を楽しみにするようになりました。また、普段から行っている新聞スクラップの活動で、記事を配布し、全員がA記者の記事を読むことができました。

記者から話を聞く

ゲストティーチャーであるA記者の記事を児童に事前に紹介していたので、児童は記者と会うのを大変楽しみにしていました。そして、「どんな記者さんだろう」「どんな話をしてくれるのだろう」と話をしていました。A記者には以下のような話をしていただけるように事前に話をしました。

■新聞社の説明、記者の説明
■取材の仕方
■記事の書き方
■取材の道具の説明
■新聞社には記者以外にもたくさんの役割を果たす人がいることの説明

今回の授業では社会科で新聞社仕事を知ることが目標ですが、同時に国語科の意見文の書き方のコツも学ばせたいという目的を設定しています。実際の記者の方に文章の書き方のコツを聞くことで、児童が実践的な方法を学ぶことができると考えました。

記者は話の中で、普段どのような仕事をしているのかを話して下さいました。記者は埼玉県庁の記者クラブの担当で、いつも埼玉県知事の会見や県の新型コロナウイルス対策などについての取材をしています。その取材で気をつけていることなどについても具体的に教えて下さいました。例えば、取材をするときにはアポイントメントを取ること、また、取材の前に取材をする方のことをしっかりと調べ、質問内容を整理することが大切なことなどを教えてくださいました。そして、新聞は記者だけが作っているわけではなく、新聞社にいろんな部署があり、みんなで協力して作っていることなどもお聞きし、児童は大変驚いていました。特に、記事の見出しは記事を書いた記者がつけているのではなく、見出しをつける記者が新聞社にいることも知りました。

また、記事を書く際には常に読む相手の気持ちを考えることが大切だということも強調されていました。記者は、県民の方が知りたいと思うことを取材し、それを分かりやすく伝わるような文章を書くように心がけているとのことでした。そして、大事なことがすぐにわかるように初めのほうに書くことや、記事の内容がわかるように写真や図などを用いていることなどについても説明していただきました。

このようなお話から、児童は新聞がどのように作られるのかをよく理解できました。また、児童が普段授業で行っている新聞づくりや作文などに行かせるヒントをたくさんいただけたようです。

さらに新聞を好きになって

記者の授業の数日後に、埼玉新聞の切り抜きをもってきた児童がいました。ゲストの記者の記事を自分で見つけてスクラップをしていました。大変うれしく思いました。きっとこの児童は、これから埼玉新聞を読むたびに記者の記事を探すようになると思います。そして、新聞をめくる中で様々な記事と出会うようになると感じています。5学年の国語科で新聞を読む単元がありますが、数時間のみ新聞の学習をしただけでは、読む習慣がつきません。今回のように新聞に関心をもつようにする工夫が必要だと考えています。

これから、国語科や社会科を中心に、新聞を授業の補助資料として活用していく予定です。児童は新聞に興味をもっているので、どんなことが書いてあるのかと進んで読むのではないかと思います。そのような活動を通して、児童の社会的な関心を高め、さらには教科の学習も深めていきたいと考えています。これからも新聞を活用した学習を続けていきたいと考えています。そして、児童にも進んで新聞を読んでもらいたいと思っています。毎回、授業に積極的に協力していただいている新聞社の方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。そして、これからも新聞記者さんや新聞社の皆さんの協力を得ながら豊かな授業を目指したいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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