2020.10.11
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「予備校での学びから得たもの」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

大学院を目指して…

早いもので、今年で私の教員生活が22年目になりました。思い起こすとこれまであっという間でしたが、その中でいろんな出来事がありました。これまで教員として子どもたちに向かい合ってきましたが、毎日毎日夢中で仕事に没頭していたように思います。それから、教員生活も20年を迎えるころ、少しずつゆとりができたように感じます。ゆとりが出てくるようになると、周りがよく見えるようになり、自分自身の教員としての仕事を客観的に捉えられるようになりました。

そんな中、児童を指導していて、新たな知見が必要であると感じることが多くなりました。例えば、教室でどうしても立ち歩いてしまう児童や奇声をあげてしまう児童がいる場合、単にその児童を注意しても効果がないことが多く、困ることがありました。そこで、特別支援教育の視点をもつことで、対象児童の困り感を適切につかむことができると考えました。また、なかなか教師に対して心を開かなかったり、教師の問いかけにも反応を示さなかったりする児童もいます。児童の心の問題を把握し、適切に対処するためにも心理学的な知見が必要だとも感じました。児童について保護者と面談などをして話す場合でも、単に自分の経験や感覚だけで話すのではなく、きちんとした理論に裏付けされた話をすることで、保護者の信頼も得られるはずです。そのような思いもあり、大学院での学びを目指すことにしました。大学院では自分が研究したい内容を専門的な先生から学ぶことができます。私のように仕事をしながらでも通信制の大学院ならば研究をすることができます。多くある大学院の中から放送大学が自分に一番合っていると思い、この大学院を選びました。

予備校の授業から学んだもの

大学院受験を目指すにあたり、課題となるのが英語と専門科目です。特に、英語の学習から長く離れてしまっているので、学習を進める必要があります。また、学びたいと思っている心理学についても専門的に学習したことがないので、体系的に学ぶ必要があります。そこで、大学院進学のための予備校の体験授業やガイダンスを受けてみることにしました。受講した科目は「英文法」「英語長文読解」「心理学」などです。どの講座にも大学生や大学を卒業したばかりの学生さんがいて、気恥ずかしかったのですが、よい刺激にもなりました。

予備校の授業を受けて学んだことをいくつかあげます。まずは、板書の大切さです。講義をしていただいた予備校の先生は、どの授業でも大切なキーワードを中心に板書をされていました。もちろん小学校と違い、一方通行の講義なので板書も小学校とは違います。しかし、私自身も今よりもっと、大切な言葉や児童に分かってほしい事項などを目立たせた板書を心がけたいと思いました。

また、予備校では講義の中で生徒に考える時間を十分にとっていました。論文トレーニングの授業では実際に書いてみる時間もありました。小学校では学ぶことが多く、どうしても児童の活動を十分にとれないこともあるのですが、これからは授業マネジメントを工夫し、児童が授業の中で十分に思考できるようにしていきたいと考えました。

さらに、友達や仲間との学び合いの大切さを改めて感じました。予備校では、動画収録もしているために基本的には講師が一方的に講義をします。受講した心理学の講義では、話を聞きながら疑問に感じることや担当する児童との関連で気が付いたことがあります。それらを受講生同士で共有できれば、さらにいろんな気づきがあるのではと感じました。小学校の授業では話し合い活動や学び合い活動をたくさんとり入れています。(最近はコロナの関係で十分にできませんが)それが大変効果的であることが実感できました。

学校での授業に生かせること

予備校での講義を体験し、これから小学校の授業でも生かせることをいくつか見つけました。

・問題練習を行う時には、解答を配り自己採点させることで時間が節約できる。また、自分の答案の採点をすることで、児童が自分の弱い部分を知ることができる。

・授業の板書計画を綿密に立て、児童が自分で考えたことを書けるように工夫する。児童のノートを見ることで、児童の思考や授業への集中度なども評価できる。

・効果的な勉強法を紹介する。予備校の先生は、どうすればわかるようになるかという勉強の方法をよく話されることに気付きました。児童にも考え方や覚え方などのアドバイスをたくさん与えたいと考えています。

それ以外にも逆に予備校での講義の弱点についても発見がありました。小学校では教師と児童がコミュニケーションをとりながら授業を進めることができます。これは小学校の大きな強みだと思います。このよい面はこれからもさらに効果的に活用していきたいと思います。今回の予備校での学びを受け、自分自身の教師として教えるモチベーションも高めることができました。大変良い経験になりました。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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