教師特有の忙しさ…
昨今「働き方改革」が叫ばれています。学校現場でも、残業の上限が設けられ、そのためにタイムカードの導入などいろんな方策がとられています。私が勤める学校でも、月に2回は定時で退勤できるように計画的に仕事をするようになっています。
私自身、これまで様々な企業で取り組んでいる仕事の効率化の勉強をしてきました。例えば、午後のある一定の時間に社員が仕事に集中する時間として「がんばるタイム」を設けることや、スタンディングのデスクで行うミニ会議や、会議をしながらランチをとることなど、会社ならではの工夫がいっぱいあることを学びました。しかし、学校現場で民間企業の方法をそのまま取り入れることは難しいです。なぜなら、児童が登校すれば、あちらこちらで泣いている児童がいたり、けんかをする児童が出るのでその対応をしなければならなかったり、保護者からの急な電話の対応などもあるからです。どうしても児童がいる間は、児童のことだけに集中することになります。これは言ってみれば教師特有の忙しさと言えるのではないかと思います。
私も若いころは、毎日朝早く出勤して、夜遅くまで仕事をしていました。休み時間はすべて子どもたちと外で遊び、担任の事務仕事や授業の予習をするのは会議などが終わった後、つまり退勤時間が過ぎてからでした。そのころは、教師の仕事はそういうもだと思っていたのですが、今思うともう少し自分の時間を大切にするべきだったと感じています。また、若かったのですが、疲労が蓄積しており、夕方に頭痛を起こすこともしばしばありました。1日の睡眠時間も4時間ほどだったこともあったでしょう。今、同僚にも若い先生が増え、毎日遅くまで仕事をしています。休日も学校に来て仕事をしている先生もいます。今だから言えますが、自分の時間も大切にしつつ、毎日しっかりと休息も取って、元気に子どもたちと接する必要があると感じています。そこで、私自身が自分自身で働き方改革として取り組んでいる例を紹介したいと思います。
私の働き方改革
① デッドラインの設定
まず一つ目が、「デッドライン」の設定です。これは、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社の元代表取締役社長、吉越浩一郎さんが著書で紹介されている方法で、あらかじめ仕事を終える時間を設定するというものです。残業が多くなってしまう原因に、仕事に集中せず時間を浪費してしまうことがあります。そこで、デッドラインを設定することによって、仕事に集中できるようになります。
私の場合は、仕事の終了時間が16時45分です。あらかじめその時間に仕事を終えられるように1日の仕事予定を立てるようにしています。若いころは、児童を帰し、研修会などが終わった後に、だらだらと何もしない時間を過ごすことがありました。しかし、デッドラインを意識することで、仕事に集中したり、仕事と仕事の隙間時間を活用したりできるようになりました。
ただ、先ほども書いた通り、教師特有の忙しさがあるのでどうしても勤務時間内に仕事を終えることはできません。勤務時間中は、児童の指導や会議、研修などがあり、授業の準備や書類の作成などを行う時間はどうしてもそれ以外の時間になってしまいます。そこで、私の場合、朝少しだけ早く出勤して集中して仕事を行っています。
② スケジューリング
前述の「デッドライン」の設定と関連して、スケジューリングの工夫もしています。前述のデッドラインが決まったら、その時間までにやることと、やる時間を決めます。
まずは前日の夜に、次の日のやるべき仕事を書き出します。そして、それらの仕事を、朝・午前中・昼休み・午後・放課後のどこに行うかを考え、分配します。初めに仕事を俯瞰することができていると、仕事を割り振りやすくなります。私の場合は、朝早くに出勤し、書類仕事や学年の掲示板作業、会議の資料づくりなどの仕事をしています。そして、児童のいる間は児童の指導に集中し、放課後に授業の予習や教材の準備を行います。教師特有の忙しさがあり、児童がいる間はなかなか時間が取れません。しかし、仕事をリストアップしておくことで、ちょっとした隙間時間に仕事をすることもできます。空き時間を活用することもできるでしょう。このように、仕事を見える化して、1日の仕事の割り振りをしておくことで、仕事を効率よく行うことができます。
➂レバレッジをかける
実業家である、本田直之さんの著書『レバレッジ』シリーズで、仕事を効率化する方法として、仕事にレバレッジをかけることが大切だということを述べています。レバレッジとはいわば「てこ」のようなもので、例えば、何かをやりながら他の仕事もすることや(本田氏は二毛作と言っている)、できるだけ一つの仕事も効率よくやるような工夫をすることです。私も仕事をする際にはいつもこのレバレッジを心がけています。
例えば、朝はいつも職員室のごみなどの片付けや掃き掃除から仕事をスタートします。その作業を行いながら印刷機でプリントなどを印刷することで、2つの仕事が同時に進行できます。授業においても、机間指導をしながら、児童のノートに丸つけやコメント書きをすることで、指導をしながら評価も行うことができます。さらに、今は児童が帰った後にはコロナ対策で、机などを消毒しなければなりません。児童を見送りながら消毒液を保健室からとり、教室に戻るとすぐに消毒作業を始められるように動くルートも決めています。このように、仕事の効率を考えて行動することで、時間を生み出すこともできます。そして、疲れも減ります。
さらに自分の時間も大切にして…
以上のように、私なりの時間の使い方を書いてきましたが、一番思うのは、子どもの前で教師はいつも元気でいなければならないということです。そのために、毎日しっかりと休息をとって、心のゆとりをもちながら仕事に臨む必要があると考えています。これからも、子どもたちによい指導ができるよう、自分の時間も大切にしつつがんばりたいと思います。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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