国語の1年生「くじらぐも」の単元を使って
今期最後となりました、連載の締め括りは国語の1年生「くじらぐも」の単元を使って私が追い求める「魅力的な学習課題」について紹介していこうと思います。
これは、昨年度教師人生初めての1年生をもたせていただいた時の実践です。正直悪い言い方をしてしまえば、ある程度学級の基盤ができあがっている1年生のクラスでは、教師が授業初めに「今日は、くじらぐもの気持ちを考えようね~」と学習課題を言ってしまえば、何の疑いもなく、教師の言ったことを一生懸命考え始めるでしょう。そして、教師もその姿にかこつけて、特に深く考えることなく、学習課題を毎時間提示してしまう。
1年生の子どもたちは、担任が全てで、他に比較材料がない為、そんなものかと思いながら、毎日の国語の授業を受けることでしょう。そんな国語の授業を繰り返していく中で、やがて国語嫌いが生まれていくのではないでしょうか。そうならない為にも、1学期に1単元程度は、しっかりと学習計画をたてて授業に臨みたいものです(本来は、毎時間が望ましいのでしょうが、私には1学期に1単元が精一杯でした…)。
1.具体的な実践録
さて、話を戻しますが、今回のこの「くじらぐも」で付けたい力は、「叙述から想像を広げ、音読をする」ことです。従って、最終ゴールは、「音読大会を開こう」にしました。そして、子どもたちには、「音読を上手くするためには登場人物の気持ちを読み取ることが大切」ということを確認した後に、登場人物の気持ちを考えていきます。しかし、ここで、毎時間毎時間「○○の気持ちを読み取ろう」「○○はどんな気持ちだったのでしょう」では、子どもたちもマンネリ化してしまい、「またか……」という思いが先行し、「主体的に」考えられなくなっていきます。
それを避ける為に、私は毎時間子どもたちが「考えたい」「友だちに伝えたい」と前のめりになり、なおかつ本来の目標である「音読をするために、叙述から想像を広げる」ことを見失わない学習課題を考えました。
例えば、本単元の3時間目、子どもたちがくじらぐもの背中に乗って遊んでいる場面です。「くじらぐもも子どもたちも楽しく遊んでいる。」ことが読み取れれば良しであり、それを音読に活かせたら良しの場面です。その場面の学習課題を例えば、「くじらぐもに乗って遊んでいる子どもたちの様子を読み取ろう」では、主体的になれません。抽象的であり、子どもたちからしたら、何の面白みもありません(もちろん素直な1年生の子どもたちは、この学習課題でも一生懸命考えるでしょう)。しかし、どうせ考えさせるなら、より、「魅力的で」あったほうがいいに決まっています。ですので、ここを私は「遊びたいレベルが高いのはくじらぐもか子どもたちかどっち?」という学習課題を提示しました。すると、子どもたちは、学習課題が提示されるや否や、矢継ぎ早に「くじらぐも!」「いや、子どもたちやって!だってな…」と言いだします。
学習課題が提示された後のこの子どもたちの姿が私の理想です。「自分の意見を言いたくてたまらない」「この学習課題に対して、僕はこう考えたから聞いてほしい」という姿です。授業前半に、こういう思いをもたせてから学習課題を考えさせると授業の山場で各々の考えが深まる可能性が高くなるのは言うまでもありません。自分の考えにこだわりをもつことができているからです。(ここで可能性が高くなると表現したのは、授業の山場で考えを深めるには、教師が子どもたちの意見を交通整理する力が必要だと考えるからです。ここでは、魅力的な学習課題は、子どもたちの考えを深める、そもそものきっかけにはじゅうぶんになり得るという話です。)
2.なぜ魅力的な学習課題となり得たのか
これは、(N5 国語授業力研究会『「めあて」と「まとめ」の授業が変わる「Which型課題」の国語授業』東洋館出版社 2018.10)の本を参考にしたいと思います。この本の中のP116~117で吉本均さんの言葉を借りて次のように紹介されている。
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観客の注意力と興味と心とを同時につかむ攻撃が大事なのである。われわれの授業においても、子どもたちの注意力や興味をつかむ攻撃によって、ヤマ場に追い込むこと、そして、まさにその攻撃は観客=子どもの「意表に出たものが効果的」なのである。意表をつく攻撃とは、子どもたちの中の考え方の対立・分化を明確化し、教師が一つの立場に立ってゆさぶり、問いかけることである。
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では、私がたてた学習課題はどうでしょう。私は、「遊びたいレベルが高いのはくじらぐもか子どもたちかどっち」という選択式にしました。この選択式にすることで考えが「対立・分化」を引き起こしたと考えられます。また、選択式にすることで、子どもたちは、自分の意見を自ら自己決定します。自分で決めたことは責任をもって取り組みやすいのと同様に、学習課題も自分で意見を選び、決定することで自分の意見に責任をもち、それがひいては「自分の意見へのこだわり」にも繋がっていくのではないでしょうか。
もちろん、何でもかんでも選択式にすればいいものではありません。私も、その時々の目の前にいる子どもたちに応じて、学習課題を考えますが、正直何が子どもたちにはまって、何がはまらないのかが分かりません。教師をしている以上10割はまる学習課題なんて存在しないと思います。
今回、取り上げた「学習課題を選択式にする」というのも、無数にある子どもたちにはまるパターンの中の一つに過ぎないと思います。ただ、子どもたちが「主体的になる」学習課題のある程度のパターンを見つけることで10割には近づけると考えます。その学習課題のパターンを見つけていくのが今後の私の課題としています。また、縁がありましたら、この場でも、紹介できたらと考えています。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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