2020.08.29
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「被災地、福島を訪ねて...」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

双葉町を歩いて…

10年前の地震でつぶれた家がそのままに

もうすぐ東日本大震災から10年になります。この10年間、さまざまな教科で、東日本大震災を取り上げた防災学習に取り組んできました。

今年度は5学年の担任になり、社会科で工業やエネルギー問題、環境問題について学習をする予定です。普段、社会科の授業をしていて、単に教科書や資料集などだけで学習をするのではなく、生きた社会的な事柄を積極的に取り入れ、児童が興味関心を高めながら活動できるように工夫しています。そこで、今回はエネルギーについて考える授業を行う際に、原発について児童と学びながら学習を進めようと考えました。

福島第一原子力発電所の事故から10年近くが経ち、原発の近くを走る常磐線も全線開通し、立ち入りが制限される区域も少なくなってきました。しかし、福島県は本当に安全なのか、そしてこれから被災された町はどのようまちづくりを目指すのかなどについて学んでみたいと考えました。そのようなことを学びながら私たちが未来に向けてどんなエネルギー政策をとるべきなのかについて、子どもたちなりの考えを持ってもらいたいと思っています。

そこで、この夏休みに訪ねたのが、この今年の3月に開業を開始した双葉駅です。双葉駅の駅舎は新しくなり、情報センターのような場所もできました。しかし、駅から離れて歩いてみると周りに人はほとんどいません。歩いている私の近くを大きなダンプカーがたくさん横切るだけです。また、住宅街を入ると、10年前の地震でつぶれた家がそのままになっていました。駅近くにある双葉高校に入ってみると、校舎の中にある掲示物が平成23年度のもののままでした。きっと生徒の声が響いていた校庭も草が生え、学校であることが分からなくなっています。双葉の街を歩いて、「この町は10年間時が止まってしまっているようだ」と感じました。立ち入り禁止区域でなくなった場所が多くなりましたが、これからこの双葉町はどのような街になっていくのかと考えてしまいました。

富岡町に滞在して

双葉町の見学をした後、その日に宿泊するホテルがある富岡町に移動しました。富岡町では原発の廃炉産業によって町の再生を図ることが表明されています。富岡町には東京電力の廃炉資料館もあり、原発事故の概要や廃炉作業の説明が詳しく行われています。富岡町の散策と資料館の見学を通して、原発の廃炉作業の現状について、そして富岡町の未来について考えてみることにしました。 

富岡町を歩くと、駅からほど近い場所にホテルや復興住宅ができていました。また、大型スーパーなどの商業施設もできました。少しずつですが、人が戻ってきており、街の復興が進められている気がしました。しかし、駅から海の方に向かってみると、重機が大きな堤防づくりをしており、震災から10年たった今でも、地震対策がまだ途上であることを改めて知りました。

富岡町には東京電力の廃炉資料館があります。廃炉資料館では、東日本大震災当時の被害の状況や原発の事故対応についてくわしく学びました。そして、現在の廃炉作業の様子やこれからの展望についても知ることができました。資料館を訪れる前は、廃炉作業は未来の希望などは抱けない仕事なのではないかと考えていました。そして、原発の廃炉作業で働く人たちはさぞ大変な思いをされているだろうと思いました。しかし、多くの作業員の方が「廃炉プロジェクト」という名のもとに快適な環境で働いていることを知りました。また、現在では第一原発近くの線量が抑えられ、作業をする方の服装も以前とは違った軽装になっていることも教えていただきました。

ただ、原発に関する新聞記事を読むと、これから数十年かかる廃炉作業がうまくいくのか、また作業で出てくる汚染水などの処理はどうするのかなどの課題は多く残っているということが分かります。これからは、実際に見学して分かったことをもとに、原発の情報をしっかりと得るようにしていかなければならないと感じました。双葉町に新たに福島県が原発の資料館を作るという話を聞きました。また福島を訪れた時に訪ね、さらに学習を深めていきたいと考えています。

今回の見学を生かして

今回の被災地の見学を生かして、5年生の社会科学習を行う予定です。社会科では環境や工業の視点から「エネルギー」について学びます。その中で、太陽光やバイオマス、風力発電などの再生可能エネルギーが取り上げられています。

児童は「これからは原子力や火力発電に頼らずに再生可能エネルギーをどんどん増やすべき」と安易に学習のまとめをしやすいです。しかし、原発の現状や火力発電の現状などを踏まえたり、再生可能エネルギーの作るときの課題などをしっかりと踏まえたりしたうえで自分なりの考えを持ってほしいと思っています。そこで、今回の被災地見学のことを児童に伝えて、児童とこれからのエネルギーについて考えていきたいと思っています。そして、児童が未来のエネルギーに関してしっかりと自分の考えを持てるようにしていきたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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