2020.07.24
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生活と関連づけた指導の実践

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

社会科「日本の食料生産(米作り)」

社会科では日本の食料生産に関する学習があります。そこではまず、日本人の主食である米作りについて学びます。米作りの手順やその工夫、そして米の品種改良から農家が抱える現代的課題などを学びます。児童の中で普段米作りに関わっている子は少ない状況の中、少しでも社会とのつながりを感じさせながら学習を進めていきたいと考えました。

そこで活用したのがスーパーのチラシです。新聞に折り込まれているチラシには、家庭で普段使っているスーパーのものが入ってきます。そのチラシを使って、どんな米があるかを調べました。

「北海道に、“ななつぼし”という米があるよ」
「先生、山形には何種類も米があるよ」
「自分たちの住んでいる埼玉県の米も売られているね」
など、気が付いたことを発表させました。

すると、売られている米の産地が東北地方や北海道で作られているものばかりだということが分かりました。この活動を通して、児童は「どうして東北地方や北海道で米づくりが盛んなのかを知りたい」という思いをもつことができました。

私は学習に新聞の折り込みチラシを活用することがよくありますが、チラシにもたくさんの情報がありいろんな学習に使えます。できることなら、実際にスーパーなどに調査に出かけたいところですが、なかなか見学に行くことは難しいです。そこで、今回のように食料の産地を調べることも有効な活用方法だと思っています。児童はこの学習の後もチラシを教室に持ってきて食材の産地について友達と話をしていました。

給食を素材にした食育

給食の食材をチェック

新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、学校では6月まで通常の給食が実施できませんでした。7月からは通常の給食に戻ったため、児童は大変喜び、給食の食材にも関心を持つようになりました。そこで、このよい機会に給食も素材として学習に取り入れたいと考えました。社会科の学習でも沖縄県や長野県の暮らしを取り上げた学習を行いましたので、その学習と関連させ、毎日給食に出される野菜に注目しました。

6月のある日の給食・・・児童は社会科で日本の白菜の収穫の5分の1以上が長野県産であることを学びました。そして、夏の時期は長野の高原野菜が多く出荷されることも学んでいます。そこで、給食に使われている白菜は長野県産のものではないかと予想しました。栄養教諭の先生に聞きに行くと、茨城産とのことでした。

児童は、
「まだ夏に入ったばかりだから、長野県産はこれから出てくるのではないか」
「今日の白菜は、茨城県産だよね。茨城も長野と同じくらい白菜を生産しているから、近い茨城のものを使っているのかもしれないね」
「埼玉県内でも野菜がたくさん作られているので、できるだけ埼玉県の野菜を売るようにしているのかもしれない」
「でも、近くのスーパーのチラシでは、白菜は長野県産のものがあると書いてあったよ」
と、新たな疑問や驚きがどんどん出てきます。

これが2学期から行う、日本の食料生産を支える近郊農業や作物を運ぶ運輸などの学習につながってくると思います。児童は、この学習の後も、毎日給食の食材をチェックしながら、栄養教諭に食材の産地を質問していました。

新聞を活用した人権作文の取組

毎年、勤務校の児童は「人権作文」に取り組みます。現在、人権感覚を小学校段階から養っていくことは大変重要です。しかし、これまで人権作文の取組が、単に児童任せになっている場合が多いと感じていました。時には、宿題で児童に自由に取り組ませるだけの場合もあるようです。もちろん、児童が自分の経験を書いたり、保護者の方と考えたりすることも大切だと思います。しかし、学校でも人権について教師が児童に伝えて、その上で作文に取り組む必要があると考えていました。

ここでは新聞記事を活用し、児童に人権について考えるヒントを与えました。活用した記事は以下のような記事です。

・パラリンピックで活躍した選手の記事
・体が不自由な方にとってどんなことがバリアになるかを取り上げた記事
・東京パラリンピックのチケットの販売で、障害のある方が購入しにくいことを取り上げた記事
・点字の仕組みを取り上げた記事
・聴覚障害の方のための対策を取り上げた記事

これらの記事を読むことで、児童は社会的に弱者になってしまった方の人権も守る必要があることを学ぶことができました。この活動の後に、自分の考えを整理して人権作文を書くことができました。児童に感想を聞くと、これまでは何となく人権の大切さを意識せずに作文を書いていたが今回は目的をもって書くことができたということでした。

以上のように、児童は学習内容と生活を結びつけることによって、学習への興味関心を高めることができると考えています。これからも、様々な教科で工夫して教材研究を行い、児童が学習に楽しく取り組めるようにしていたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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