2020.07.16
都内から南へ1000㎞の小学校~OGASAWARA~(3)
お読みいただきありがとうございます。前回は、私が平成26年度から30年度まで勤務していた東京都小笠原村立小笠原小学校で実践した小笠原の植物博士になろう(4年総合的な学習の時間)に関する授業をお伝えしました。
都内から南へ1000㎞の小学校~OGASAWARA~(2)
今回は平成27年度4年生(平成28年1月上旬~2月下旬)総合的な学習の時間で実施した「小笠原の太鼓の達人になろう ~地域から学び、地域に還元する~」をお伝えします。
長野県公立小学校非常勤講師 清水 智
1.見送り太鼓は小笠原の名物
今回ご紹介するのは、この出港太鼓を単元の最後、アウトプット(発表)の場面として設定した「小笠原の太鼓の達人になろう~地域から学び、地域に還元する~」です。
赴任した当初は、校内の4年生行事として行われていたものでありましたが、地域から学んだことを地域に還元するという私の授業経営の軸と、小笠原小学校にとても協力的な和太鼓奏者のみなさん(地域のみなさん)のご協力により、体育館で保護者・下学年向けに行われていたアウトプットの場を、小笠原に訪れた(内地に向かう)みなさん向けに島を代表して演奏させていただく場へと大変貌を遂げることができました。
演奏を聴いてくださる観客は、おがさわら丸に乗船しているみなさんと、そして見送りの島民のみなさん。これだけの人数がいっせいに集まるタイミングが週に1度だけ小笠原父島にはあるのです。このタイミングを使わない手はない!と思った私は、以下のように授業計画を立て、実践しました。
2.実際の授業(平成28年1月上旬~2月下旬)
○練習 口唱歌(くちしょうが)と呼ばれる、楽器音を音節で表したものが歌えるようになるまで、たくさん太鼓を叩きました。朝の会等で、口唱歌を歌ったり、廃タイヤを使って実際に叩いたりしながら口唱歌を覚えていきました。
○マイバチ作り 校内に自生しているギンネム(外来種)という植物を使って自分のバチを作りました。適度な太さのギンネムを切り出し、小刀で皮をむき、やすりで削る。自分の納得のいくまで作業を続け、本番への道具としてのいい準備をしました。
2019/05/20【4年総合】太鼓のばち作り
○本番1回目 練習を重ねて、いよいよ本番。そろいの法被を着て、マイバチをもち、適度な緊張感。日常的に続けてきたメンタルトレーニングの成果がこういう時に効果が発揮されます(メンタルトレーニングについては後日ご紹介します)。 子どもたちの演奏自体は、ぼにん囃子のみなさんによるマッコウ太鼓の前座という形で演奏させていただきました。子どもたちの見送り太鼓『父島』に続き、ぼにん囃子さんによるマッコウ太鼓演奏もある、この出港はかなり貴重な出港です。
ここで出た課題(タイミング、強弱、声量など)は教室に持ち帰り、2回目本番に向けての練習における思考材料となりました。
○1回目の結果から学ぶ 1週間後の本2回目を控えて、1回目で挙がった自分たちの課題をリストアップし、それを改善する練習や道具の準備に取り掛かりました。練習については時間配分や内容までも自分たちで相談して決め取り掛かりました。 ある意味トップダウン型で始まったこの単元の学習も、この時期にはボトムアップ型に変容し、島から学んだことを島に還元する行動を通しての主体性の育成へと繋がっていきました。
○本番2回目 前回の「結果」を成功・成長材料に変えるべく、臨んだ本番2回目。この2回目に関しては、年に一度の多くの転任者が乗る出港でもありました(つまり、島を離れて内地への転出など)。 ですから、中には最後の小笠原の風景のひとつとして和太鼓『父島』が思い出に残ることになったかもしれません。
内容的には前回とほぼ同じものではありましたが、転出者の多いこの便で和太鼓演奏をするというのは格別の思いがありました。「いってらっしゃい」という気持ちをこめて。
3.終わりに
2019/07/18 【4年生】出港太鼓
さて、次回は学習内容から少し離れて、小笠原の小学校教員としての24時間、ライフスタイルについてご紹介します。8月は東京都公立小中学校教員公募説明会が開かれ、小笠原諸島への赴任を希望される方々が動き出す時期でもあります。
このサイトを通じて、日本国内においても超離島な小笠原での勤務とはいったいどのようなものなのか。海遊びだけではない小笠原の魅力も併せてお伝えいたします。
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