2024.04.06
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盆栽授業を充実させる

勤務校の近くには日本でも有数の盆栽村があり、有名な盆栽家の先生たちのいらっしゃる盆栽園があります。その中の清香園の園主・山田香織先生は本校の卒業生で、毎年高学年に盆栽づくりを指導してくださっています。本校では高学年になると一人一鉢の盆栽を作ることになっています。子どもたちは低学年のころから盆栽を作るのを楽しみにしています。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

これまでの盆栽学習

学芸員さんからの投げかけ

本校の盆栽を取り上げた実践では、まず総合的な学習において、盆栽をテーマにした学習をします。地域にある盆栽村の歴史や、盆栽の特徴や価値、そして職人さんの仕事などについて調べてきました。子どもたちはこれまでも地域学習で盆栽村や盆栽にふれているので、調べ学習を通して盆栽にさらに親しんでいきました。

そしてなんといっても、本校の盆栽教育のメインは、一人一鉢の盆栽づくりです。地域にある有名な盆栽家・山田香織先生がボランティアで盆栽づくりの指導をしてくださっています。日々お忙しい中、後輩のために盆栽指導をしていただき大変ありがたく思っています。
また、山田先生を代表とする、盆栽ボランティアの方が多くいらっしゃり、その方たちも学校の盆栽教育を支えてくださっています。地域にある大宮盆栽美術館では見学のほか、学芸員さんの出張授業などでもご協力いただいています。こんな素晴らしい環境の中で盆栽を通した教育ができるのをいつもうれしく思っています。

美術館の先生の出張授業

今年度は新しい試みとして、地域にある大宮盆栽美術館の学芸員の先生方による出張授業を企画しました。美術館には、3年生で地域学習として、そして5年生で総合的な学習の一環として見学をしています。その経験を踏まえたうえで、授業を学芸員さんたちと一緒に考えました。テーマは、「大阪関西万博と盆栽」です。

2025年には大阪関西万博が開催されます。約50年前に行われた大阪万博では現さいたま市の盆栽が会場に飾られました。今回の万博でも展示される可能性があります。
そこで、
「さいたま市の盆栽の魅力をどう紹介する?」
としました。
これまで学習してきたことを生かして、世界中の人々が集まる万博でどのような展示をしたいかを考えることで、さいたまの盆栽をさらに好きになると考えました。

実際の授業では、約50年前の大阪万博やその前のパリ万博などで日本の盆栽が紹介されたことを解説していただきました。そして、どんな展示が行われたかについても貴重な資料を見せていただきながら学びました。今度開催される大阪関西万博でも、さいたま市のブースに盆栽が飾られる可能性があります。

そこで、学芸員さんが子どもたちに投げかけました。
「さいたま市の魅力の一つである盆栽をどんなふうに展示しますか?考えてみてください」

子どもたちはグループになって展示の仕方について考えました。
「やっぱり樹齢が800年とか、すごく長生きの盆栽をたくさん飾ると海外の方もびっくりするよね」
「盆栽の形にとても興味をもつのではないかな」
「いろんな盆栽の種類があるから、驚くと思うよ」
など、様々な声が聞こえてきました。

グループでの話し合いの間、美術館の学芸員さんは話し合いに交じり、子どもたちと交流してくださいました。子どもたちも学芸員さんに質問をしながら話し合いを進めることができました。
子どもたちの発表からは、
「盆栽職人さんのデモンストレーションを行い、匠の技を世界中の人たちに見せる」
「たくさんの種類の盆栽を展示し、自由に鑑賞をしてもらう」
「和室と組み合わせて、盆栽を飾って日本の文化を感じてもらう」
などの考えが出されました。
美術館の学芸員さんは大阪関西万博に関するさいたま市の委員も務めていらっしゃるので、子どもたちの意見が反映されたらうれしく思います。今回の活動は子どもたちにとって大変有意義なものになりました。

これからの本校の盆栽教育を考える

本校では、高学年の盆栽づくり教室のほか、盆栽を題材に各教科での取り組みが行われています。児童の委員会活動でも盆栽委員会があり、盆栽を育てる活動が続けられています。子どもたちが盆栽に愛着をもつ機会が多くはありますが、さらに子どもたちが主体的に盆栽にかかわる活動が必要なのではないかと考えています。教育活動で多くの指導内容があり、難しい面もありますが、地域の素晴らしい素材を使って、教科のねらいも達成しつつ、盆栽を、そして地域が大好きになる活動を今後も模索していきたいと考えています。

2025年の大阪関西万博では、さいたま市の盆栽が紹介されるかもしれません。また、その年に、地域の盆栽村が100周年を迎えます。担当する子どもたちは中学生になります。学習や様々な活動も今以上に広がってくると思います。そこで、さいたま市の盆栽を地域の誇りとしていろんな人に紹介できるようになってほしいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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