都内から南へ1000㎞の小学校~OGASAWARA~(2)
お読みいただきありがとうございます。
前回は、私が平成26年度から30年度まで勤務していた東京都小笠原村立小笠原小学校の概要と生活科でのマイマイ(カタツムリ)の実践をご紹介しました。
都内から南へ1000㎞の小学校~OGASAWARA~(1)
今回は、小笠原の植物博士になろう(4年総合的な学習の時間)に関する授業をお伝えします。
予定していた「小笠原の太鼓の達人になろう ~地域から学び、地域に還元する~」は次回にお伝えします。
長野県公立小学校非常勤講師 清水 智
1.小笠原小学校の周りは固有種の宝庫!

小笠原の固有種「タコノキ」が描かれたロゴマーク
「小笠原の植物博士になろう」
海洋島の小笠原諸島「父島」なだけあって、植物の世界においても固有種の宝庫でもあります。これが、学校から徒歩圏内のエリアにたくさんあるのです。しかし、多くの児童たちにとっては、小笠原固有の植物(タコノキなど)は日常的なものであったり、まったく知らない存在でもあったりするのです。
そこで学習の前半では、地元の陸ガイドの方にご協力をいただき、海洋性と山地性の植物のフィールドワークを行いました。(外来種や広域分布種も含め、それぞれ20種類ずつ)。また、小笠原の世界遺産記念ロゴマークを使って、ロゴマークに秘められた動植物についても教えていただきました(このロゴマークとの出会いが後の活動の基盤となる)。
前半のまとめとして、各個人が選んだお気に入りの植物(固有種)を中心に据えたロゴマーク作りに発展していきました。ここで、大事にしたのは前述したオリジナルの小笠原世界自然遺産のロゴマークの存在です。1枚のデザインの中に秘められた #海洋島 #世界自然遺産 #風景 #固有種 といったキーワードが具現化されるように作成を進めていきました。
平成30年度は、東京都から研究助成費をいただいていたので、専門業者を通じて風雨に強いステッカーを作成しました(1枚200円程度)。筆者の自家用車に張り付けてあるステッカーは、3年間自動車に張っていますが、未だに色あせしていません。
ここまでは総合的な学習の時間における探究のプロセスでいうところの1周目でしか過ぎません。この後、既存の体験をもとにした学習活動(2周目)が始まります。
2.学習サイクルを意識した展開

植栽活動で植えられた固有種や外来分布種の数々。
ここでは、啓発ポスターの作成・都道の法面への植栽活動の2点が具体的な行動へとなりました。
啓発ポスター
国語科で学習した話し合い活動、文章作成。また思考ツールを使った情報の整理など、既存の学習活動をフル活用して、伝えたいメッセージや設置場所、デザインなどをポスターにまとめていきました。この頃になると担任は、子どもたちの活動をコーディネートすることがメインになり、前に出ることが激減しました。
植栽活動
小学校に隣接する小笠原支庁土木課からのオファーを受けて実施することができました。植栽活動自体は、以前から構想があったものの小学校単体では実現が厳しかったこともあり(世界自然遺産の島なので植栽等のルールがかなり厳しい)、このオファーは非常にありがたかったです。
3. 民間業者・行政・地域との連携

協力をいただいた皆様。この後現地ではさらに多くの方々にご協力いただいた。
小笠原諸島返還50周年記念事業 「オガグワの森プロジェクト」に、小笠原小学校が教育課程に位置づけた授業の一環として参加していることは非常に意味深いと考えます。
*協力・支援
小笠原支庁土木課、東京都レンジャー、小笠原グリーン株式会社、三徳建設株式会社、小笠原観光、小笠原陸域専門ガイド「マルベリー」、NPO法人小笠原野生生物研究会(順不同)など

児童による出港太鼓「父島」の出だしを叩く筆者

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