2020.07.07
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発達障害のある子どもへの支援の実際(NO.3「キレやすい子どもたちへの対応のヒント」)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

活動前の約束事の例のマンガイラスト

活動前の約束事の例

発達障害をどのように捉えるか

前回、発達障害のある子どもたちの姿をどのように捉えるかについてお話ししてきました。
よかったら、前回のイラストをご覧ください。

私は、人間を車にたとえるのが好きなのですが、シュタイナーの考え方に共感して学校を作ったトーマス・J・ヴァイスは、著書「魂の保護を求める子どもたち」の中で、楽器を奏でる子どもと聴衆にたとえて説明しています。

どんな名演奏者であっても、楽器に不具合があれば上手く奏でることはできません。
それを聴衆が見て評価するのです。

もし上手く演奏できなかったとき、果たして奏でている本人に問題があると言えるでしょうか。
楽器に不具合があるとは気づかないでしょうか。
練習をすれば、少しずつ上達していく可能性はあるのでしょうか。

自分らしく生きようと願っていても、思うようにいかないことがあります。それはきっと誰もが経験しているでしょう。
しかし極端に現れる場合もあるのです。
ある子どもは、昨日学んだことを翌日には全て忘れてしまいます。
それをカミングアウトするときには、とても悲しそうな表情を見せます。
ある子どもは、思うように手足を動かすことができません。
なぜ自分だけができないのだろうと悩んでいます。

発達障害の実態と対応の仕方

私たちは、発達障害のある子どもたちに対して何ができるでしょうか。
ひとつは、彼らについて知ることです。
それによって偏見を減らし、支援の輪を広げることができるからです。
そしてもう一歩踏み込むことができるなら、本人のもつ困難さに寄り添い、支え、成長を促すことが可能です。

それは親や教師のみが行うことではありません。彼らに寄り添うことは、誰でもできることです。
同情したり見下げたりすることなく、対等な人間として関わり合うことが何よりも必要とされているのです。
発達障害の実態と対応の仕方
今回からは子どもたちの具体的な姿を通して、その実態と対応の仕方をお伝えしていこうと思います。

「まずは知ってほしい」という願いからです。

一般的に発達障害は、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害、学習障害などと分類して示されますが、私は症候を示しながらお伝えしようと考えています。カテゴリーに分けるとか、障害に名前をつけるというのは便宜的なものです。子どもたちの抱える特性や支援の仕方は、方向性が似ていることがあっても、一人一人異なることを心の片隅に置いてください。

また、シュタイナーの考えた治療教育についても出来る限り触れていきたいと思っています。ただ、彼の分類も現在のものとは異なっており、私が咀嚼できた範囲で文章や漫画に書き込むという方法を採りたいと思っています。どうぞご承知おきください。

キレやすい子どもたちの姿

クラスの中で、目立ちやすいのがキレやすい子どもです。そして、教員にとって対応が最もむずかしいと思わせるのも、キレやすい子どもだと思います。それは、キレるという感情の爆発によって、物が破壊されることがありますし、友達に影響を及ぼすこともあるからです。

「キレる」というのは、自分自身のキャパシティを超えてしまっていることを表していると考えます。普段は落ち着いた生活を送っている大人であっても、大きな怒りや悲しみが押し寄せたときには、泣き叫んだり物に当たりたくなったりするのではないでしょうか。心に余裕がないときには、それを分かってほしいという欲求が、言葉としてではなく感情の嵐のような形で現れることがあるのです。ただ、多くの子どもたちと比較すると、頻繁に見えたり些細なことでも現れたりします。

彼らのキレる原因の多くは、勝ち負けにこだわるという点です。自分が勝者にならないことが許せないように見えます。
自分が負けそうになると、勝手にルールを変えることすらあるのです。

しかし、周囲の子どもたちは、その子がキレると面倒だと思っているのか、反論しないことが多いようです。それを幸いと思うのか、キレやすい子どもたちは、負けた原因を友達のせいにして責めることもあります。その姿から、ドラえもんに登場するジャイアンのようだと表現されることもあります。

また、冗談が通じにくく、些細なことでも自分を否定されたと捉えがちです。そして、一度キレてしまうと、その興奮を鎮めるまでに一定の時間がかかります。クールダウンとも呼ばれており、刺激の少ない場所で気持ちを整える必要があります。


対応のヒント

このタイプの子どもたちと関わるときのポイントは、彼らの言動にいちいち反応しないということです。

特にイライラしているときに話しかけても、全く意味がありません。だからといって、イライラしている子どもを無視したり、「困った子どもだ」と感じさせたりすることではないのです。関心をもって見守っているという気持ちは伝えていってほしいと思います。そして、気持ちが落ち着いたときに、話を聞いてやったり、大人の気持ちや考えを伝えたりすることが大切です。

「イライラするとキレる」、「キレると周囲が思い通りに対応してくれる」という、キレることがラッキーな展開を生むような流れを断ち切ることも重要になります。「キレても思い通りにはいかない」ということを知らせていくことも必要なのです。

また、キレている自分の姿を見せることは、周囲の評価を下げることにも気づかせていきましょう。

勝負に関わるような場面で、「ま、いいか」という気持ちを育てていくことも有効です。
それは、通級指導学級のような少人数グループで、繰り返し指導されると、効果が早く上がっていくように思います。

漫画では、活動前の約束事の例を取り上げました。
この約束事は、キレやすい子どもだけに必要なのではなく、全ての子どもたちにとって必要です。優しさを表現しながら、みんなが気分良く活動できるように、ぜひ活用してください。

ありのままの自分を受容するむずかしさ

発達障害のある子どもたちは、ありのままの自分を自分自身も受容しにくいのではないかと思います。
その子の良さを褒め、自信をつけさせていくことにも気を配りましょう。
大人が褒めることも効果がありますが、友達から認められる場面を増やしていくことで仲間を作っていくことが特効薬になることも、忘れないでほしいと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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