2021.02.20
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

発達障害のある子どもへの支援の実際「3歳児の中に見えるもの」(NO.16)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

ふとしたきっかけで、3歳になる子どもと何回か関わる機会がありました。普段は小学生と接することが多いので、それよりも幼い子どもと触れ合うことによって教えてもらうことがたくさんありました。3歳児の気になった様子を、見出しを付けながらお伝えしてみたいと思います。

人見知りが激しい

そのA君は、2歳の頃に会ったときには、人見知りが激しく、保護者と挨拶をしている間も大泣きするようなことがありました。私の声が悪いのかとか、メガネに慣れていないからなのかと、接し方には気を遣ったものです。3歳になってからも、知らない人に対しては警戒心が強いようです。

注意散漫なところがある

3歳になってからは私に対してもだいぶ慣れてきましたが、ひとつのことに集中することが難しいようでした。「風船、膨らまして」と言うから膨らませてあげても、風船を数回触ると別の遊びに向かってしまうのです。幼いから気が散るのではなく、緊張感や不安感が高いと、集中して遊ぶことはできないのだと気付かされました。

姿勢を保っていられない

子ども用の椅子に座らせていても、床に座っていても、常にもぞもぞと動いています。大人用の椅子に座らせると、いつの間にかお尻が端によって、ともすると落っこちそうになってしまいます。

学校の中でも、姿勢を保てない子どもに、椅子や床に座っている姿勢を長い時間強要することは難しいので、まして3歳であればこういう姿も無理ないのだと思いました。

自分の世界に入り込む

次第に慣れてくると、自分の世界に入り込むことがあることがわかってきました。シールを貼りながらお話を作るのが大好きなので、その最中に話しかけても全く聞いているようには見えません。積み木で遊んでいるときに会話を交わしながら遊ぶこともできますが、自分のイメージの中にいるときには周囲の者のことは忘れてしまっているようでした。

癇癪を起こす

思い通りにいかないと、癇癪を起こすことがあります。言葉を思うように使えないので、彼が説明したことが私には伝わり切れないことがあって、それに苛立つようでした。感情が安定するということは、自分の願いがある程度は叶えられることなのです。ワガママを通すという意味ではなくて、遊びの中での願いをかなえるためには、それを説明する力が必要だということも教えられました。

悪ふざけをする

この子には、道徳とか倫理とかいうものが欠如しているのかと思うことがあります。「そんなことして、悪小僧さんだね」というと、「そうだよ、悪小僧なんだ!」と嬉しそうに言い返してきます。素直で礼儀正しいこともあるのに、思いもかけないようなことをしでかす様子を見ていると、生まれながらに道徳心や倫理観をもっているのではないということを思い知らされます。良し悪しをひとつずつ、辛抱強く教えていかなければならないのでしょう。

食べ物にこだわる

保護者から、ご飯と味噌汁以外は、なかなか食べてくれないと聞いていました。それから1年ほどが経過し、食べられる物は増えてきたようですが、慣れない食べ物には敏感に反応して口から出してしまいます。

発達障害のある子どもたちの特性は、特別なことではない

私は、A君の欠点を晒すためにこれを書いているわけではありません。A君は記憶力に秀で、数字に強いという良さももっている、とても可愛らしい子どもです。ただ、多くの幼い子どもたちがもっている特徴を、私の前では強く見せているという感じなのでしょう。

3歳児の様子を書き連ねるまでもなく、発達障害というのは、就学以降も幼いころの特徴を持ち続けてしまうことだと言っても、間違いではないと思っています。これらの特徴は年齢と共に淘汰され、この世界の価値観や文化や慣習の中で生きるためのコツや技を身につけていくことが多いからです。

私はここに、発達障害のある子どもたちと関わる、とても大事なポイントが隠されていると思います。つまり、発達障害のある子どもたちの特性は、特別なことではないということです。必要なのは、自分の特性と上手くつきあい、使いこなすためのコツや技を知るということです。それを身につけさせることのできるような教育が必要だということなのです。

小学校に就学してもなお、どこかに幼さが見られる場合には、その特性ばかりに目を向けるのではなく、強みを生かして自尊心を育てる方法も探っていきましょう。その後で、特性と付き合うコツを教えていってはどうかと考えています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

同じテーマの執筆者
  • 松井 恵子

    兵庫県公立小学校勤務

  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop