2021.03.07
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発達障害のある子どもへの支援の実際「身体からのアプローチ」(NO.17)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

学生時代に教育家としても知られるR.シュタイナーと出会い、彼の著作や関連の講演会・勉強会などから多くのことを学んできました。公立小学校の教師に就いて以降は、彼の教育に一歩でも近づき、子どもたちのためによりよい教育を行っていこうと努力を重ねてきたつもりです。しかし、数十年という月日が流れても、なかなか思うような教育ができたという境地には至らず、自分の未熟さを感じるばかりです。

それでも今回の連載では、シュタイナーの晩年の講演録である「治療教育講義」をもとにして、実践の記録も加えながら、発達障害のある子どもたちのためにと願って投稿してきました。今回はまとめとして身体からのアプローチに触れ、連載を終わりたいと思います。読んでくださった皆様に感謝申し上げます。

私たち教師は、ともすると言葉を媒体とした教育活動に頼りがちなところがありますが、家庭と連携しながら、身体からのアプローチの仕方を模索していただけたら幸いです。

食事を見直す

朝ご飯を食べてこないという子どもが、珍しくなくなっています。大人のためのプチ断食のような健康法があるようですが、子どもにとって朝ご飯は大切です。お腹が空いていると心が荒れます。勉強に集中できないばかりか、我慢ができにくくなり、友達とのトラブルも増えるのです。発達障害のある子どもたちの特性も目立つようになります。そして、周囲の評価も下がってしまうのです。何か食べてから登校できるように、親御さん達にも努力してほしいと思います。

また、添加物や身体にとって良いとは言い難い食べ物を多く口にすると、健康を害しやすくなり、それによって特性が目立つと指摘する専門家もいます。

「親だって仕事で忙しいのだから、そんな面倒なことはできない」と思う方もいらっしゃるでしょう。私自身も、仕事を優先しがちなところがあったので、子育て中のご苦労は理解できます。しかし、子どもの身体というのは、長い人生の土台となるものです。一汁三菜などにこだわる必要はないので、できれば家族と一緒に、出来たてのものを食べるようにしていってほしいと思います。

臓器を温める

便秘や下痢になりがちな子どもがいます。「便秘なんて病気じゃないんだから」と考えてしまうのは危険です。書籍や報道などでも、子どもたちの便秘が深刻であるといったことを見聞きします。腸と脳の働きは密接に繋がっていると指摘する方もいるようです。健康であるということは、美味しく食べて、上手く排泄することだということを忘れないでいてください。

もし、腸に不調がある場合は、腹巻やカイロ、湯たんぽなどを活用して温めることをお勧めします。学校では、500ミリリットルのペットボトルに熱めのお湯を入れ、それをタオルで包んでお腹に当てさせています。それでも、子どもたちは安心するようで、痛みを忘れるようです。

排泄をコントロールできないときには、より一層食べ物に工夫を凝らしてみてください。それでも改善しないときには、専門家に相談してほしいと思います。

身体を整えてもらう

私の出会った子どもの中に、上手く歩けない子どもがいました。足に問題があるのではなく、身体の使い方によって歪みが生じ、歩き方にも独特の癖を付けてしまったように感じました。

また、別の子どもは、常に大声を出し、机を叩くことをやめられないといった様子が見られました。常に大きな刺激を欲しがっているように感じました。その子どもは、保護者が身体を整えてくれる治療に行ったところ、大きく改善されたと聞きます。

「子どもの身体は、大人のように歪んではいない」と言い切ることはできないのです。歪みとは気づかないまでも、猫背や歩き方の大きな癖、音などの刺激に偏りがある場合には、歪みを整えることで成果が上がるかもしれません。

運動をする

発達障害のある子どもたちは、身体の使い方が不器用であると感じられます。もちろん運動能力には個人差があるので、誰もがスポーツ選手のような運動ができるように練習する必要はありません。しかし、手先や身体の動きが不器用であるということは、何をするにも困難さが伴うといってもいいでしょう。

シュタイナーは今から100年ほど前に活躍した人物ですが、その彼でさえ子どもたちの不器用さに気づいていました。そして、「足の指で鉛筆を持って、文字を書けるような器用さがほしい」とも指摘しています。

漫画で示したような簡単な運動は、書籍や動画配信サイトなどでも数多く紹介されています。親子で楽しむことで成果が上がる運動もあるようです。ぜひ、幼いうちから、身体を器用に使いこなせるような運動をさせていってください。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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