授業実践からみる「書く」指導
今回は、私の拙い授業実践ではありますが、そこから「書く」指導における適切な足場かけや終末の言語活動でのもっていき方などを紹介できればと思います。前回は、あらすじ指導をすると共に単元週末の活動に「ビブリオバトル」という「話す」指導事項に関わることについてご紹介させていただきました。今回は、「書く」ことについて私の3年生で行った授業実践を紹介します。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
子ども達にとって魅力的な課題をつくる
単元名は、オリジナル説明文「すがたをかえる○○」を書こう!というもので、「すがたをかえる大豆」を教材として使用しました。この単元では、筆者の書き方の工夫を見つけ、それを自分のものにするという活動を仕組みました。ここでいう筆者の書き方の工夫とは、
1つ目、「はじめ」「中」「終わり」の文章構成で書いている。
2つ目、「中」の段落の最初の一文が中心文となっている頭括型で書いている。
3つ目、一段落に一つの事項を絵や写真をつけて説明している。
4つ目、「まず」「次に」「さらに」といった接続語を使って、事例を列挙している。
5つ目、読み手に読み進めてもらいやすいよう「作り方が分かりやすい順番」で事例を列挙している。
という5つのものがあります。
これを単に、順番に教えていくだけでは、興味が続かないので、「技を習得してラスボスを倒そう」と子ども達に投げかけ、筆者の書き方の工夫を1つ見つけるごとに、技を習得して装備が増えていき、ラスボス(ここでは、自力で説明文を書きあげること)というゲーム性をもたせることにしました。
このゲーム性をもたせることに対しては、「本質的ではない」という見方もあり、その見方もじゅうぶん理解できるのですが、ただ現実問題として、一般的な公立小学校において、クラスの全ての子が何でもかんでも自分たちで問いを見つけ、主体的に考えていくのは、私みたいな平凡な教師には到底無理です。であるならば、本質的ではないにしろ、ゲーム性をもたせるという子ども達にとっては魅力的な課題を教師がつくってあげたほうが、学力がしんどい子もそうでない子も含め、全ての子が楽しく活動できると考えます。
その結果、本単元であるならば、「筆者の書き方の工夫を理解でき、その書き方の工夫を使って少しでも説明文を書ける」ことができたのならば、それでいいのではないでしょうか。
足場かけとしてのワークシート
しかし、当然、どの学年の児童においても技を習得したからと言って、自力で0から説明文を書きあげることは、無理です。ここでも教師がひと手間足場かけを用意してあげる必要があります。
そこで私は、すぐ今まで習得した技が見られるように1枚のワークシートに学習した全てを簡潔に載せることにしました。そのヒントを載せることで、学力の少ししんどい子も参考にしながら説明文を書きあげようという気持ちになってくれます。反対に、ここで真っ白な作文用紙を渡してしまうと、用紙をもらった瞬間バタバタと倒れていく子が多数いるのは明らかです。
だからこそ、最後の最後まで、教師が目の前にいる子ども達の目線に立って適切な足場かけをすることが必要であると感じています。
チェックポイント(観点)を明確に
最後に交流する前には、自分でしっかりと書きあげた文章を推敲する作業に入っていきます。
この推敲の作業はついつい忘れがちになるところですが、新学習指導要領においても、B 書くことの(エ)において、「 間違いを正したり,相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりして,文や文章を整えること。」とあります。
従って、自分の文章を自分で推敲していく力も3年生段階から必要になってきます。
しかし、推敲と一口にいっても子ども達は、どこをどうやって考え直し、よりよくしていくかの観点が分かりません。
よくあるのが、ただ「見直そう」という声かけです。これでは、やはり子ども達は、何となく、文章を読み返し、「はい。間違えも直すところもありませんでした。」ということになります。これは、漠然と読んでいるため、書きあげた時の自分と今読み返している自分との間に何の差もないため、文章もいじりようがないわけです。
しかし、そこに例えば、
- 「2年生で学習した主語と述語が正しく使えているか」
- 「常体と敬体がごちゃまぜになっていないか」
- 「一文は短く切れているか」
などのチェックポイント(観点)を明確にしてあげると、そこまで意識していなかった書きあげた時の自分と今読み返しているときの自分との間に差が生まれ、より良い文章に書き直ししやすくなります。
単元構想を創造する意識
詳しくはPDFにて参考程度に指導案を載せておきます。
ただ、これをまた今目の前の子ども達に授業をするとなると、きっとこの指導案通りの流れにならないのはもちろん、足場をかける方法もポイントも違ってくると思います。いえ、必ず違ってきます。それは、もちろん、目の前にいる子どもが違うからです。
今の時代、ネットを探せば、どの教科においても膨大な指導案を検索できます。日々の多忙を理由に、安易にネットに掲載されている指導案の通り、授業を流そうとしてしまいがちになります。
しかし。それでは、目の前の子どもの実態に合わなければ本当にただ1時間の授業を「こなした」だけになります。そして、何より自分の「創造力」が育たないような気がします。
だからこそ、その時のクラスの実態、クラスの雰囲気、そして、一人ひとりの子ども達の学力をみとった上で、単元構想を創造できる意識をもった教師でありたいと思います。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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