2020.06.24
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「分散登校で気が付いたこと」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

たくさんの児童に声を掛けられる!

6月から児童が分散で登校を始めました。児童が登校し始め、話をしているうちに名前もすぐに覚えることができました。35人の児童は午前中に18人、午後に17人と分かれて登校するために、たくさん声を掛けることができます。いつも以上にたくさん児童と接することができるように工夫をしました。

まずは、朝のあいさつ運動です。私は10年以上、朝の児童の登校時には昇降口で迎えています(途中、児童のトラブルなどがあり教室が開けられないという理由で中断したことはありますが)。そこで、クラスの児童全員に初めの声掛けをすることにしました。まだ学校が本格的に始まって1週間もたっていないため、児童一人ひとりの表情を見ながら声を掛けました。

「今日は朝ご飯、食べてきた?元気かな?」

「今日は久しぶりに体育があるよ。うれしいね。でもちょっと暑いかもしれないね」

「昨日の自主学習ノートでの学習、しっかりできていたよ。感心しました」

など、児童が学校に期待感を持てるように心掛けました。

およそ3カ月間の休校期間があったためか、児童からは元気なあいさつが返ってきているとは言えない状況です。しかし、少しずつ児童の元気が戻ってくることを願って声を掛け続けたいと考えています。

次に、朝の会での健康観察の声掛けです。普段は時間がなく、児童の数も多いのでそれほど声を掛けている時間を取れません。しかし、今は人数が半分のため、声掛けの時間が取れます。

 「昨日は学校から帰ってどうしていたのかな?」

 「宿題を一生懸命にやっていたね」

 「先生が算数で『身の回りの小数探しをしよう』といった課題をしっかりとやってきていてすごいね」

と、一人ひとりにあった声掛けをするようにしました。今の分散登校の間にできるだけ一人ひとりを大切にした取組をしたいと考えました。

2回行う授業で指導法の研究!

6月の前半は分散登校を実施し、児童は午前と午後に半分ずつの人数に分かれて登校します。そこで、午前3時間、午後3時間と同じ授業を実施します。まだ実態がつかみ切れておらず、午前・午後で児童の様子も違うので、授業をするのは難しいのですが、2回同じ授業ができるので、午前の授業での反省点を生かして午後の取組を行うことにしました。例えば、以下のような変更をしました。

〇算数の小数の学習で位取りを間違っている児童がいたので、位取りをしやすいヒントカードを作った。

〇国語で主人公の心情を書けない児童がいたので、教師が書き出しを示すようにした。

〇社会科で地図帳を使って国を調べられない児童がいたので、大きな地図を掲示し、一緒に探せるようにした。

〇児童が国語の説明文の読み取りで内容のイメージをもちにくいようだったので、教師の方からいくつかの具体例を提示するようにした。

〇社会科で実際の写真を提示しながら行うと児童が理解しやすいようだったので、大きな掲示用の写真を用意した。

前半と後半で児童が入れ替わるために児童の反応も違います。同じような発問をしても全く違う答えが返ってくることもあります。授業をしていてこれほど発見が多いのは初めてです。最初の授業を行って、修正すべきところを修正するほかに、2回目の授業を行って、気づいたことがあれば、最初に授業を行った児童にも改めてそのことを伝えるようにしています。今回の経験を通して、「子どもたちは教師にとって生きた教科書である」という言葉を改めて思い出しました。これから通常の授業に戻ると、1回しか授業ができませんが、今回の経験を生かして授業の準備や教材研究をしていきたいです。

児童理解に役立てる!

現在行われている分散登校では、全員で物事を進めることができず不便ではありますが、一人ひとりの様子をつかむのには大変役立つ機会であると捉えています。毎年、自己研究で児童の「有能感」を調べるアンケートをとっているので、それを実施しました。そして、その結果をもとに、少しずつですが、児童と簡単な面談を行っています。児童が自信を持っていること、そして自信がないことなどを話してもらい、これからどのように一人ひとりに合わせた指導をしていけばよいかを検討することができました。

いよいよ近いうちに通常通りに登校できるようになりそうです。これまで半分の人数ずつと接しながら児童の様子についてつかんできたことを生かして、次はクラスづくりに努めていきたいと思います。私の目指すのは「全員が主役になれるクラス」です。その目標について児童にも話をしました。児童たちと一緒に協力してこの目標を叶えていきたいと考えています。今から、全員でクラスを改めてスタートできる日が待ち遠しいです。今年度のスタートを元気に切っていきたいと考えています。そして、子どもたちと一緒によいクラスを作っていきたいです。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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