2020.06.09
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「問うべき問い」は、何から生まれるのだろう?(発問研究 Vol.4)

「問うべき問い」は、子どものつまずきを予想することから生まれる。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

「問い」は、どうやってつくるのか?

いい授業には、いい問いがある。
なぜなら、いい問いはたき火のように、自然に人が集まり、話し合いが始まるからだ。まさに主体的・対話的な姿である。

そのため、多くの授業者は前もって、問いを準備する。それが子どもにとって、いい問いになれば、授業はねらいに迫れる。そう思う授業者は、さらに考える。この授業で、一体何を問うことができるか、と。

予期せぬ子どもの発言に対する問い返し発問も大切である。しかし、ここでは予め用意しておく必要のある問いを「問うべき問い」と捉え、算数の授業事例を通して、「問うべき問い」のつくりかたと効果について考えを述べる。

わたしの「問うべき問い」と授業

事例は2つある。どちらも3年生と4年生の事例である。

1つ目は、3年生の「わり算」の導入場面。子どもたちは新たな計算方法と出会う、はじめの一歩の1時間である。わたしは、「おはじきが12こあります。3人で同じ数ずつ分けます。1人分は何こになりますか」と等分除の問題を提示した。授業前、子どもたちの分け方はくっきりズレると予想していた。「1人に1個ずつ」か「一気に4個入れる」か、に。「1人に1個ずつ」は等分除、「一気に4個入れる」は包含除になるから、「一気に4個入れる」分け方は本時の問題場面には合わない。そこで、そのつまずきをきっかけに分け方を比較検討したいと思った。そして、「一気に4個入れていいの?」を本時の「問うべき問い」と設定した。
実際の授業。「問うべき問い」をきっかけに子どもたちの検討が始まり、「このお話は1人に1個ずつ分けていくんだね」と決着し、問題文と操作を合致させた。
検討場面の20分間ほど、わたしは同じ発問を繰り返した。「一気に4個入れていいの?」と。

2つ目は、4年生の「わり算」。「80枚のふせんを4人で同じ数ずつ分けます。1人分は何枚になりますか」という問題場面である。ここで問いたいこと、つまり「問うべき問い」は何だろうか?ここでの「問うべき問い」は2つある。「80÷4を8÷4にしていいの?」と「後で0を足すってどういうこと?」の2つワンセット。多くの子どもたちは計算の手続きは意気揚々と説明してくるが、その理由や根拠を説明してくることはあまりない。だからこそ、80÷4を8÷4として計算することができるのかを検討する必要があるのだ。つまり、8÷4の8を10の束が8個あることと考えられるかどうかが核となる。
実際の授業の詳細は割愛するが、この時間の「問うべき問い」は、1時間では終わらなかった。

目覚まし時計のように

このように、「問うべき問い」は、子どものつまずきを予想することから生まれる。

目覚まし時計のタイマーは予め設定したい。忘れずに。

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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