「通級による指導」で大切なこと<3> "優先順位をつけて指導内容を絞り込む"
限られた指導時間の中で、コスパの良い指導をするには優先順位をつけることが大切です。
福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士 髙橋 三郎
通級による指導では「何を」教えるかも重要
国語や算数といった教科指導では、教科書があります。もちろん、教科書をそのまま教えれば良い授業ができるという訳ではありませんが、教えるべき内容は一応決まっています。そのため、教科指導では「何を教えるか」ではなく「どのように教えるか」に力点が置かれます。
一方、通級による指導(自立活動)には教科書がありません。そのため、それぞれの担当者が自分で教えるべき内容を決めなければなりません。そのため、通級による指導では「何を教えるか」も非常に重要になります(もちろん、「どのように教えるか」も大切ですが……)。
優先順位をつけて指導内容を絞り込もう!
指導内容を考える上で、大切なことの一つに優先順位をつけることが挙げられます。多くの場合、通級による指導の時間は週1日1or2単位時間程度です。その中で効果的で成果の出る指導を行うためには、指導内容を精選する必要があります。多くの課題を有する児童がいたとしても、すべての課題にアプローチしていたら指導時間が足りなくなってしまいます。また、もし行ったとしても、児童自身が十分に学習した内容を咀嚼できず、結果的に何も理解できなかったということが生じかねません。指導すべき事柄が多数あるとしても、その中でも優先順位をつけて指導内容を絞っていくことが大切です。
学級適応の向上をまず第一優先にしよう。
まず、現在の学級適応の向上に最も寄与すると思われる指導内容を優先すべきです。学級適応というとすぐにSSTなどの対人関係面へのアプローチを想像してしまいがちですが、それだけでなく、学習面や学習の基盤となる言語発達面についても含めて考えましょう。
次に、将来のことを見据えた指導をしよう
次に、重要なのは、「将来のことを見据えた指導」です。今現在は問題でないものの、これから問題になると考えられる事柄にアプローチします。たとえば、吃音のある子どもたちにとって、からかいの問題は切っても切れない関係にあります。なので、今現在、吃音のことでからかいが無くとも、将来的にからかいを受けてしまうリスクは十分にあります。今現在の学級適応とは関係が無いから……と言って切り捨ててしまうのではなく、将来のことを見据えて、そのような場面に遭遇した時に適切に児童が対応できるように指導しなければなりません。
重箱の隅をつつくような指導をしてはいけない。
「確かに問題といえば問題だけど、それをそんなに重要視すべき?」といった指導が時々見られます。それをするぐらいなら、もっとやるべきことがあるでしょう!という事にならないように気を付けないといけません。とはいえ、私自身も「重箱の隅をつっついていた…」と、指導し始めてから気付いたことがありますので、自戒の念も込めてここに書き留めておきます。
髙橋 三郎(たかはし さぶろう)
福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士
大学院で博士号を取得し、現在はことばの教室で子供達と向き合う日々を過ごしています。言語障害や発達障害に関する知見や指導方法を様々な先生方と共有できたらと思います。
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