2022.10.31
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

学びのかたちはひとそれぞれ

「学に老若の別なし」「学問に王道なし」「学問に近道なし」と、「学」という漢字を使った言葉はたくさん存在していますね。それだけ、私たち人間にとって「学び」はかかわりの深い事柄であるということでしょう。これまで私も「学」ということをテーマにいくつか皆さんにお伝えをしてきました。私もまだまだ学んでいる途中です。 今回は「学びのかたち」について、お話しをしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

「ありがとう」と書かなきゃいけない、というのは誰の視点?

学びのかたち

この写真は、ある生徒が職場実習のお礼の手紙を書いている写真です。この時ちょうど、介護等体験の学生の先生が来ていました。
介護等体験の学生の先生は「〇〇さん、これは実習のお礼だから、ありがとうございましたって書くといいよ。お絵描きは休み時間にやりましょう」と言葉をかけました。ところが、その生徒は同じように書き続けています。
皆さんだったら、この様子をどのようにとらえますでしょうか。

私も、自分が学生だったときはきっと同じように考えて、言葉かけをしていたかもしれません。
自分の視点で物事を考えてしまうと、「お礼のお手紙だから、感謝の気持ちを書くのは当然である」と考えてしまうかもしれませんね。
教員経験が少し増えて、今の私であればもう少しいろいろな視点で考えることができるようになりました。
「もしかすると、これはこの子のことばで、感謝の気持ちを伝えているのかもしれないな」
「もしかすると、この活動の説明が足りなかったのかもしれないな。それに、画用紙とペンが出ているから、美術の授業と勘違いしているのかもしれないな」
「きっと今は絵を描きたい気分なんだな。絵を一枚書いたら、お礼の手紙を書くように誘ってみようかな」

他にもいろいろな考えを巡らせることができそうです。その考えに一つ一つアプローチしていくと、ヒントにつながるように感じませんか?

子どもたちは学校という「学びの場」で過ごしています。もちろん、学校以外にも家庭にも地域にも「学びの場」は存在しています。
しかしながらその学びの場でどのように「学んでいるか」という「学びのかたち」はひとそれぞれです。
私たちは自分の視点を押し付けるのではなく、この「学びのかたち」に目を向けていきたいですね。

机と椅子を使いなさいと、理屈で思っていたとしても

これもまた学びのかたち

さて、この写真はある生徒の学習の様子です。
横になりながらですが、みんなと一緒に工作をしています。視線は教材の方を向いています。
机で学習できれば、それも大切なことなのかもしれませんが、横になりながらでも、授業に参加できているのであれば、それもその子の「学びのかたち」なのかもしれません。
自分の視点の押し付けにならないように、気をつけて子どもたちと関わっていきたいですね。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop