2023.06.14
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様々な教育者のニーズに応えるNEE(New Education Expo)

今年で28回目となるNew Ecucation Expo(NEE)が開かれました。New Education Expo実行委員会が主催し、内田洋行教育総合研究所が事務局を務める国内最大規模の教育イベントです。毎年訪れると新たな発見があるNEEですが、立場が変わるとまた新たな発見ができます。今年も継続的にお伝えしているNEEに関する記事をお伝えしたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

GIGAスクール構想とNEEの関係

私は、これまで10年以上継続的にNEEの東京会場を訪れてきました。New Educationという名前の通り、常に時代の最先端を追及している国内最大規模の教育関係者向けのセミナー&イベントだと感じます。 

正直に申し上げて数年前まで、NEEでの内容はどこか遠くの学校、つまり一部の先進校でしか実践できないだろうと感じていました。電子黒板を活用した授業を見学したとしても、そもそも無線LANすら整備されていないようでは、実施することが困難です。 10年ほど前にデジタル教科書の展示を見た際にも、このようなものが普及するのだろうかと内心、半信半疑でした。

ところが、GIGAスクール構想の下、一人一台端末の環境が整えられました。こうした環境の変化で、NEEで紹介されている実践を行いやすくなりました。例えば、デジタル教科書も多くの学校で当たり前のように導入されるようになりました。今では、国語科の読解においては、何回でもアンダーラインを引き直すことができるデジタル教科書の特性を利用してラインを何度も引いたり消したりするなど、新しい学びのスタイルが次々と生み出されています。一部の先進的な学校だけではなく、私も含めた多くの一般教員が使えるツールになったからこそ、日々新しい実践が開発されているのでしょう。 

様々な教育者を対象としたセミナー&イベント

東京で開かれたNEEでは、120以上のセミナーが開かれていました。大学教授、各自治体の代表者、文部科学省の職員の方、現場の先生方など、様々な講演者の方から貴重な話を聞くことができます。内容も大学向けから小・中学校、もしくは自治体や学習塾など様々な教育者に向けてのセミナーが用意されています。 

それぞれの教育者の立場に応じてきめ細やかに対応されており、学校、授業をより良くするためのヒントに溢れているのだと感じます。 

産業界からの貴重な提言

今年度のセミナーの一覧を見ると、データを教育課題の解決に用いる方法や、データ活用人材の育成法のような趣旨のセミナーが数多く見られます。様々なデータを活用している産業界の知見なども学ぶことができます。NEEには、民間の産業界からも講演者がいらっしゃるので、普段なかなか聞くことができない話を伺うことができます。 

教材や教具を実際に体験できる場

多くの授業研究会では、子どもたちへの指示や発問など、教師の指導言についての話や授業の流れなどが議論の中心になることが多いでしょう。 

NEEはこうした授業研究と異なり、教材や教具、システムなどの展示会の一面も持ち合わせています。ウチダスなどのカタログでしか見られないような教材や教具を実際に手に取って試すことができるのが大きな特徴だと感じます。また、教材の開発者の方や営業の方が商品の紹介をしてくれるので、カタログを見るだけでは理解できない使い方を学ぶことができます。 

こうした教師の指導言やICTの活用方法といったソフト面ではなく、実際に教材・教具というハード面を学べることが他にはないNEEの魅力だと思います。 

特別支援教育の観点から

私の妻は、特別支援学校で長く勤務しており、現在は特別支援学級の教員をしています。今回、初めて妻もNEEに参加してもらったのですが、私とは異なる点で多くの学びがあったようです。 

特別支援教育では、教材や教具の開発は授業の根幹となる部分です。支援を要する児童が分かりやすいような教材、実際に楽しんで学べるような教具を常に探究しながら指導をしている方も多いと思います。自立活動や生活単元学習と呼ばれるような活動でも、数多くの道具を必要とする場面が多いと聞きます。 

NEEには、特別支援教育の教材・教具を開発している方もいらっしゃいます。私の妻も実際に使用してみることで、教室のどの場面で活用できるのかを考えることができたと話していました。 

例えば「つな木」という教具が展示されていました。木をつなぎ合わせることで様々な形を作ることができる商品です。自在に大きさを変えることができるので、教室にあった形に変更できます。 

妻は、実際にその「つな木」の中に入ったときに、「木の香り」を感じたそうです。こちらの商品は、自然の大切さやSDGsを学ぶことができることも目的にしていますが、この心が落ち着く「香り」を活用し、児童が落ち着く場にできないかと考えていました。クールダウンの場を温かみのある木製品で用意することで、より子どもたちが落ち着ける場が作れるのでしょう。五感を使って最新の教材・教具を体験できるからこそ思いつくアイデアなのだなと感じました。 

終わりに

今回は、内田洋行株式会社が主催しているNEEについて執筆しました。教育界における最大規模の展示会だけに、様々な発見ができます。興味を持たれた方は、この学びの場でも特集記事が組まれると思いますので、ぜひご覧になってはいかがでしょうか

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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