2020.04.03
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深い学びを誘う大前提条件(第1回)

前期に引き続き、今期も教育つれづれ日誌の連載を書かせていただけることになりました明石市立錦が丘小学校の川上健治です。ここでは、日々の実践等を紹介していきたいと思います。あくまで、私自身が勝手に学び、実践していることなので、これを読まれた方は、ぜひ、たたき台にして、新たな実践を提案して頂けたらと思います。私も、日々勉強します。今期1回目は、授業で「主体的・対話的で深い学び」を誘う学級経営の部分を紹介したいと思います。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

学級経営の安定に力を注ぐ

さて、今年度も、新学期がスタートしようとしています。この記事が公開される頃には、新学期がスタートという先生方がほとんどだと思います。新学期スタートということもあり、第1回目は、学級経営の部分について私の考えを紹介します。

まず、私が実際に経験したことからの持論ですが、「学級経営が安定しないことには、子どもたちは主体的・対話的に学ぶことができない。主体的・対話的に学べなければ、深い学びも起こらない。つまり、学力も上がらない」のです。これは、至極当然ですよね。敵だらけの環境下で「話し合ってみよう」と言ってみるとどうなるか……結果は火を見るよりも明らかです。だからこそ、新年度のはじめは全力で学級を安定させることに力を注ぎます。 

そのためにも、まずは、教師がぶれない軸をもつべきです。教師のぶれない軸とは、いわば3月末に子どもたちにどうあってほしいかという願いに直結すると思います。それは、教師それぞれによって異なると思いますので、あくまで私個人の考えです。私は、子どもたちが主体的に動ける「自治的集団を形成させること」をぶれない軸として持っています。自治的集団とは、私は、「最高のチーム」だと捉えています。つまり、「チーム力」です。あえて、ここで、形成「させる」と書いたのは、放っておいたら勝手に自治的集団になるかと言うと、そうはならないわけで、やはりそこに教師の意図的な指導が必要になってくるからです。

最高のチームになるために

なぜ私のぶれない軸が自治的集団を形成させることなのか。
私は2つの理由を考えています。

関係性の質にこだわる

まず一つ目です。
上越教育大学大学院の赤坂真二教授は、著書の中で以下のように述べています。

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マサチューセッツ工科大学のダニエル・キムは「成功の循環モデル」で説明しています。組織としての“結果の質”を高めるには、一見遠回りに思えても、組織に所属するメンバー相互の“関係の質”を高めるべきだという理論です。よい関係が、よい考えを生み、それがよい行動につながり、よい結果がもたらされます。そして、さらにそのよい結果が、より良い関係をつくるということです。

(赤坂真二『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』明治図書出版 2018.3.p16)

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学校教育で行う各々の“結果の質”にこだわるのであれば、やはり、まずは人間関係を構築して学級を「チ―ム」にしていかなければならないことが分かると思います。高校野球の超強豪校であり、多数のプロ野球選手を輩出している大阪桐蔭高等学校がなぜ毎年強豪校となるかの理由もここにあると思っています。全国で名をはせた中学生が大阪桐蔭に入学し、切磋琢磨しあう中で、人間関係を構築していきます。ここでいう人間関係は、もちろん「友だち」ではなく、目標に向かって進む「仲間」であり、「同志」です。その中で、今までレギュラーが当たり前だった子が、「どうやったらレギュラーになれるか」を真剣に思考します。つまり、思考の質が高まります。すると、練習という行動の質があがっていき、自ずと結果もついてくるといった感じではないでしょうか。

では、クラスに置き換えるとどうなるでしょう。4月の段階で人間関係を構築していくと(もちろん4月だけのたった1ヶ月間で構築できるような簡単なものではありませんが、人間関係を構築する重要な時期ではあります)、クラスのため、みんなのためというふうにベクトルが自分からみんなに変わります。そうなると、思考も「自分も含めたみんながより良くなるには」というふうに変化していきます。すると、独り善がりだった行動も、みんなを考えた行動に変化していきます。そういった行動をとれる子どもが増えると、例えば、学力上がる、話し合いに深まりが出る、円滑な学校生活が送れる等々、成すべき結果も良くなっていきます。結果がよくなると、さらに人間関係が良くなり、自治的集団に近づいていきます。だからこそ、最初から自治的集団を見据えて学級指導をしていく必要があります。

安全欲求を満たす

次に二つ目です。

有名なマズローの欲求5段階説から考えます。子どもたちは、新学年になり、「こうなりたい」というあるべき自分になりたいという欲求をもっています。マズローの欲求5段階で考えると一番高位にあたる欲求です。この欲求を満たすためには、それまでに、①生理的欲求②安全欲求③社会的欲求④承認欲求の4段階をクリアしなければなりません。しかし、自治的集団を目指すには、②~④の欲求を満たさなければなりません(ここでは、各家庭で①の生理的欲求が満たされているものと考えています)。つまり、自治的集団を目指すことで、必然的に社会的欲求や承認欲求を満たすような手立てを施すことになります。

そこで、まずは、②の安全欲求について、私は必ず学級開きの際に、「3つのきまり」の一つとして、「自分も仲間も大切に」という意味合いの合言葉を作ります。これは、暗に「自分や仲間の心や身体を傷つけてはいけない」ということを意味します。これを年度初めから徹底して伝えることで、②の安全欲求をクリアしていきます。③と④をどういう手立てでクリアしていき、自治的集団を目指すかは、また次回に書きたいと思います。

ぶれない軸を持つ

兎にも角にも、子どもたちのあるべき姿を思い浮かべて日々指導していかなければ、筋の通らない行き当たりばったりの指導になってしまいます。教師は、ぶれない軸をもたなければなりません。私の場合は、それが「自治的集団」でした。だからこそ、「自治的集団にするためには?」という視点で全て物事を考えていっています。

上にも書きましたが、次回は、社会的欲求や承認欲求などを満たしながらクラスを自治的集団にしていくための具体的な手立てを紹介していきたいと思います。今年度も教師、子どもたち、保護者、全員が笑って年度末を迎えられるように、日々の指導を徹底していきたいと思います。先生方、頑張っていきましょう!!

子どもたちの横のつながりを大事に

今年度、低学年、中学年を担当している先生方には特に、この「学級を自治的集団のチームにする」という意識をもってほしいと願います。低・中学年であると、ある程度の力の先生だと特に、学級を組織することを意識せずとも教師が言うことやることに大体は素直に従ってくれ、学級が成り立つと思います。しかし、そこにあぐらをかき、自分の「力」で縦だけの関係を築こうとしている、つまり横のつながり(子どもたち同士のつながり)があまりないまま1年間を過ごさせる先生がいます。そういう先生が担任に関わった学年は高学年になると荒れる可能性が大きくあります。それもそのはずです。まだ素直で集団での振る舞い方を学ばないといけない大切な時期に学べていないからです。学んだのは教師との関わり方であって友だちとの関わり方ではないからです。

反対に、高学年でも男女仲が良く、集団として機能しやすい学年は、必ず低・中学年で集団を組織する力のある先生が関わっています。試しに、落ち着いている高学年の指導要録の担任遍歴の欄を見て下さい。そこには、その学校で指導力のある先生の名前があるはずです。しかし、このことは管理職も含め理解できていない先生がとても多くいるような気がします。

私は、今まで6人の管理職の下で働いてきましたが、このことを理解されているなと感じたのは、お一人の校長先生だけでした。前年度荒れていた低学年を担任するときになった際、その校長先生に「この時期に立て直さないと、高学年になったらこの子らは大変なことになる。だから、立て直して次の学年に送ってあげてくれ」と言われたことが今でも心に残っています。この校長先生は、自分の感覚や、他の先生のなんとなくの雰囲気で学年を決めているのではなく、その先のことをしっかり考えているんだと強く感じました。そして、私が関わった低・中学年の子らは高学年になっても落ち着き、どんな若手が担任しても大丈夫だという学年になっていると自負しています。

だから、低・中学年の担任の先生方は必ず横のつながりを大事に、集団としての振る舞い方をしっかり学ばせてほしいと思います。また落ち着いた状態で高学年を担任している先生方は、今あるのは集団としての振る舞い方を必死に学ばせた先生が必ず関わっていることを理解し、そしてまた次の学年につなげていってほしいと願います。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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