2019.12.11
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1年 どうぶつの赤ちゃん(前編)

1年生の代表的で良質な説明文である「どうぶつの赤ちゃん」の一単元の指導の流れを公開させていただきます。
まずは前編です。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

本年度、私は教師人生初めての1年生を担任させていただいております。1年生といえば、「可愛い」というイメージしかなく、前年度が6年生担任ということもあり、一体、一年生にどんな授業をしたらよいのかと不安でした。そんな不安をもちつつ、1年生との生活がスタートしました。

結論を言うと、一年生でも、今となってはとても「頼もしい」です。前回の日記で紹介させていただいた司会も全く問題なくできます。話し合いもキャプテンが中心となって、スムーズに話を回していくこともできます。「1年生だから司会は無理かな」「1年生だから話し合いもペアだけにしておこう」「1年生だから……」という甘い考えを早々に捨てて日々の取り組みを行ってきてよかったと思います。(もちろん、丁寧すぎるくらい丁寧なスモールステップは必要ですが……)私は、今の1年生のクラスに全幅の信頼を置けるくらいまでになっています。今回は、そんな子たちとの国語科の実践を少しだけ紹介します。

紹介する国語科の単元は「どうぶつの赤ちゃん」です。「どうぶつの赤ちゃん」は色んなパターンの言語活動が考えられます。そういう意味では、取り組み甲斐のある教材です。私は、数ある候補の中から「どうぶつの赤ちゃん図鑑をつくる」というゴールを設定しました。また、単に図鑑を作るだけでは一年生にとっても面白くないので、「来年の2月に一日入学にくる園児に見やすく分かりやすい図鑑をつくらない?」と呼びかけました。そこは一年生。喜んで「作る!」となりました。自分たちも、一年前に一日入学で良い思いをさせてもらっているからこそ自分たちも何かをしたいという思いをもっているのだと思います。そして、ここでようやく「どうぶつの赤ちゃん」の教材が登場します。「どんなことを書けばいいか書き方をちょっと勉強しようか」という具合です。そして、範読後に感想を書かせます。前にも書いた通り、この感想がかなり重要で、これからの学習の良し悪しを左右します。

話は変わりますが、教師を始めて今まで、単元の最初から最後までの流れを子ども達に最初の授業で渡したり、掲示したりしている光景をよくみかけてきました。例えば、「第一次の1時間目は教師の範読を聞く。第二次の1時間目は1場面の○○の気持ちを読み取る。……」のような感じで、課題を順番に表にしているものです。最初は、そういうものかと思い、真似をしたこともありましたが、最近は、それに疑問をもつようになってきました。見通しをもって取り組むという観点ではいいのかもしれませんが、「なぜ、子ども達の疑問や興味のもっているところも知らずに単元の流れを教師主導で子ども達と共有するのだろう」という疑問です。仮に、教師の中で、構想が決まっていても、それを子ども達からの疑問と結び付けて、あたかも子ども達には自分たちがもった疑問を解決しようとしていると思わせることが大事なのではないでしょうか?子ども達が「自分たちの疑問を自分たちで解決する」という気持ちで取り組んだ方が、言うまでもなく「主体的・対話的」になります。

こういう思いもあり、私は、単元の流れを最初に子ども達に渡さず、まずは子ども達に感想を書かせます。この際は、「おもしろい・不思議・驚き」の3観点で感想を書かせます。そして、この観点毎の感想を基に、前もって考えていた授業構想といかに結びつけるかを考えながら毎時間の「めあて」を考えていきます。ですので、土日にしっかり考えられるように、金曜日になるべくするようにしています(笑)ただ、何でもかんでも、子ども達の感想だけをもとに授業をしていると押さえるべきところ(今回の教材文でいうと、どうぶつの赤ちゃんの様子や大きくなっていく流れが観点毎に書かれていること等々)が抜けてしまうので、押さえるべきところはきっちりと押さえなければなりません。

感想を書かせると、多くの子ども達が「ライオンの赤ちゃんは、すぐ歩けないのに、なぜしまうまの赤ちゃんは産まれて次の日に走れるのか」という疑問をもっていました。今回は、子ども達が調べたどうぶつの赤ちゃんを「ライオンタイプ」と「しまうまタイプ」に分けて、最終的に索引がついた図鑑作りをしようと考えていたので、この疑問を核として、結び付けながら、授業をデザインし直そうと思いました。そこで、ライオンの赤ちゃんとしまうまの赤ちゃん、カンガルーの赤ちゃんの観点を比べながら読み取った後に、授業の中で「○○さんが疑問をもっていたんだけど、なんで、ライオンの赤ちゃんと違って、しまうまは産まれてすぐに走れるのかみんなで解決しない?」ということを子ども達に投げかけました。こう言われて考えると子ども達は「主体的・対話的」になります。なぜなら、自分達の一番身近な仲間が疑問に思っていることだからです(もちろん、良好な人間関係が構築されていたらの話ですが……)。
そう言われた子ども達は話し合います。

C「草食動物だから」
T「草食動物だったらなんですぐ走るの?」
C「だって襲われるからだよ」
C「だったら肉食動物のライオンは襲われないからすぐ歩かないの?」
C「教科書にも書いてあったよ」
T「何ページ?」
C「ほんとだ」
C「草食動物はすぐ歩かないと襲われるかもしれないから、産まれてすぐ歩くんだね」
C「だったら、反対に襲う肉食動物の赤ちゃんはすぐ歩けない」
T「ほんとうに?○○さんの疑問をみんなはそう予想したんだね」

T「だったら産まれてすぐ歩けない肉食動物をライオンタイプ、産まれてすぐ歩ける草食動物はしまうまタイプとしよう」
というような流れで話し合いがおこなわれました。最初に「草食動物だから」とだけ言っていた子も最終的には「襲われるかもしれないから草食動物はすぐ走れるようになる必要がある」というほんの少しの深い考えをもてました。「主体的・対話的」になればなるほど「深い学び」に繋がっていきやすくなることが再確認できました。
以上、長くなってきたのでここまでを前編とします。次回は、「予想を確かめていく」流れから紹介させていただきます。


川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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