2019.11.23
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「被災地を再び訪ねて」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

震災後8年半たっても・・・

ここ数年、各教科や特別活動などで防災教育に取り組んでいます。東日本大震災から8年半が経ちましたが、その間にも日本をたくさんの災害が襲いました。いつでも自分の身は自分で守れるように普段から備えておくことが大切です。そこで、教師も災害について、そして防災について学ぶ必要があると考えています。そこで、毎年東日本大震災の被災地を訪ね、防災について考えるようにしています。
今回は宮城県の気仙沼、そして岩手県の陸前高田市、釜石市を訪ねました。海岸近くでは瓦礫などはきれいに片づけられていますが、まだまだ復興には程遠いという印象を受けました。被災地の新聞を読むと震災関連の記事がたくさん掲載されています。しかし、首都圏で発刊されている新聞では被災地のものと比べて震災のことが多く取り上げられているとは言えません。震災から8年半たった今だからこそ、いつまでも震災を風化させないための取り組みが必要です。そこで、現地に赴いて様子を見ることが必要だと考え、今回の被災地巡りを行いました。

震災の遺構を見て!

今回訪ねたのは、まず宮城県気仙沼市の旧向洋高校です。ここは伝承館も併設されていて、当時の様子を映像などでも観ることができます。この高校には4階まで津波が襲ったそうです。3階には流れてきた自動車が教室の中に残されていました。生徒が使っていた教科書や先生方の資料などもそのままにしてあり、当時の様子を生々しく伝えていました。
次に、岩手県陸前高田市の奇跡の一本松を見学しました。一本松については新聞を活用して道徳の学習で取り上げたことがあります。一本松が地域の人々の復興への思いを支えていることを学んだのですが、今回実際に一本松を見ることができ、何もなくなった高田松原の中に力強くたっている姿を地域の方が見て、心の支えにしているのだということを改めて感じることができました。
最後に、岩手県の釜石市を訪ねました。昨年度、新聞社の元釜石支局長さんにゲストティーチャーとして来ていただき、児童に当時の様子を伝えてもらいました。児童生徒が普段からの避難訓練を生かしいのちを守り「釜石の奇跡」と言われた小学校を訪ねることができました。実際に子どもたちが避難した場所を見ることもでき、普段から震災に備えておくことがどんなに大切かを改めて認識できました。

防災教育を進めていきたい

昨年度、児童と新聞記事から震災について学ぶ学習を行いました。震災についての記事を書いた記者が、読者にどんなことを伝えたいと考えているのかを読み取る学習を行いました。そして、実際に記事を書いた記者を教室にお呼びし、児童の考えを聞いてもらうことができました。この学習は国語科の学習として行いました。
現在、防災教育は特別活動や総合的な学習の時間で行われることが多いようです。しかし、各教科等の授業においても折に触れて防災をテーマとして取り上げることで、児童の防災意識が高まるのではないかと考えています。これからも、教科での防災教育について考えていきたいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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