国語授業で新聞活用
6学年・国語科の学習で「説得力のある文を書こう」という単元があります。自分の考えについて、根拠などを示しながら、説得力のある意見文にまとめる言語活動を取り入れます。この単元では、児童が意見文に説得力を出すためにはどうすればよいかを具体的に考え、実際に調べたことなどを生かして意見文を書いていくことにしました。今回は、「防災」をテーマにこの単元の学習をデザインしました。
まず、児童が文章を読み「書き手が一番伝えたいこと」について考える活動を行いました。教材にしたのは新聞記事です。5学年で新聞の読み方について学習し、新聞記事では始めの方に大切なことが書かれていること、文章だけではなく図や表、グラフなどの非連続型テキストも取り入れられていることなどを学びました。その学習を生かして、単元の始めに新聞記事をスクラップしました。児童と読んだ新聞記事は後の授業でゲストティーチャーとして招聘する予定である新聞記者の記事です。内容は東日本大震災の被災地について取り上げたものです。児童は記事を読み、書いた記者がどのようなことを読者に一番伝えたかったのかを考え、友達と話し合いました。
「小中学生が地震の後に自分たちで避難して、ほとんどの子が助かった釜石でも失われた命があるということを伝えたかったと思う。」
「ほとんどの子どもが助かった小学校でも、保護者の電話対応していた事務職員さんが亡くなってしまったことをみんなに知ってほしいと思っているのではないかな。」
など、いろんな意見が出ました。この学習を通して、児童は学習意欲を高めていきました。
新聞記者をゲストティーチャーに
新聞記事をスクラップして友達と話し合う学習の後に、児童が読んだ新聞記事を書いた記者を実際にゲストティーチャーとして招きました。記者がその記事でどんなことを伝えたかったのかを解説してもらう授業を設定しました。児童は実際に自分が読んだ記事を書いた記者の話を聞けるので、大変興味深く話を聞いていました。そして、自分たちが考えていた「記者が一番伝えたいこと」を読み取れていたことで自信をもつことができていました。
ゲストティーチャーの記者にはその後、説得力のある文章の書き方について児童にアドバイスをしてもらいました。
「まずは一番伝えたいことを見出しとして考え、それを意識して文章を書くといいよ」
「しっかりと取材をして上で意見文を書くと、説得力が高まるよ」
「取材した人から聞いた話などの引用などを入れてもいいね」
など、児童にとって役立つアドバイスをしていただきました。そして、児童に、
「東日本大震災の被災地ではまだ困っている人がたくさんいる。そこで、自分たちにできることを考え、意見文としてまとめてほしい」
と、児童にテーマを投げかけてもらいました。
説得力のある「意見文」にチャレンジ

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
同じテーマの執筆者
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
-
大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
-
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
-
西宮市教育委員会 勤務
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
愛知県公立中学校勤務
-
大阪大谷大学 教育学部 教授
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
明石市立鳥羽小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
