2019.02.09
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新聞から記者の主張を読み取る(NIEの取組)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

国語授業で新聞活用

6学年・国語科の学習で「説得力のある文を書こう」という単元があります。自分の考えについて、根拠などを示しながら、説得力のある意見文にまとめる言語活動を取り入れます。この単元では、児童が意見文に説得力を出すためにはどうすればよいかを具体的に考え、実際に調べたことなどを生かして意見文を書いていくことにしました。今回は、「防災」をテーマにこの単元の学習をデザインしました。

まず、児童が文章を読み「書き手が一番伝えたいこと」について考える活動を行いました。教材にしたのは新聞記事です。5学年で新聞の読み方について学習し、新聞記事では始めの方に大切なことが書かれていること、文章だけではなく図や表、グラフなどの非連続型テキストも取り入れられていることなどを学びました。その学習を生かして、単元の始めに新聞記事をスクラップしました。児童と読んだ新聞記事は後の授業でゲストティーチャーとして招聘する予定である新聞記者の記事です。内容は東日本大震災の被災地について取り上げたものです。児童は記事を読み、書いた記者がどのようなことを読者に一番伝えたかったのかを考え、友達と話し合いました。

「小中学生が地震の後に自分たちで避難して、ほとんどの子が助かった釜石でも失われた命があるということを伝えたかったと思う。」
「ほとんどの子どもが助かった小学校でも、保護者の電話対応していた事務職員さんが亡くなってしまったことをみんなに知ってほしいと思っているのではないかな。」

など、いろんな意見が出ました。この学習を通して、児童は学習意欲を高めていきました。

新聞記者をゲストティーチャーに

新聞記事をスクラップして友達と話し合う学習の後に、児童が読んだ新聞記事を書いた記者を実際にゲストティーチャーとして招きました。記者がその記事でどんなことを伝えたかったのかを解説してもらう授業を設定しました。児童は実際に自分が読んだ記事を書いた記者の話を聞けるので、大変興味深く話を聞いていました。そして、自分たちが考えていた「記者が一番伝えたいこと」を読み取れていたことで自信をもつことができていました。

ゲストティーチャーの記者にはその後、説得力のある文章の書き方について児童にアドバイスをしてもらいました。
「まずは一番伝えたいことを見出しとして考え、それを意識して文章を書くといいよ」
「しっかりと取材をして上で意見文を書くと、説得力が高まるよ」
「取材した人から聞いた話などの引用などを入れてもいいね」
など、児童にとって役立つアドバイスをしていただきました。そして、児童に、
「東日本大震災の被災地ではまだ困っている人がたくさんいる。そこで、自分たちにできることを考え、意見文としてまとめてほしい」
と、児童にテーマを投げかけてもらいました。

説得力のある「意見文」にチャレンジ

児童は、実際に東日本大震災の被災地の取材を続けている記者からの投げかけを受けて、自分たちが被災地の方のためにできることを考える意欲を高めました。そして、調べ学習をして、自分たちにできることを意見文の形でまとめていく予定です。まとめた意見文は新聞投稿として実際に新聞社におくることになりました。どんな意見文が出来上がるか楽しみです。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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