前回の租税教室での学びをさらに進める
前回のレポートで、税務署の職員の方による租税教室の取組について取り上げました。税務署の方から、税の種類やどのくらいの税が集められているかなどの解説をしていただきました。児童は、主な税として「所得税」「消費税」「法人税」などがあることを学び、それが自分たちの身の回りのいろんなことに使われていることを理解しました。
その学びをさらに進めるために、NIE(教育に新聞を)を取り入れ、日本の財政に関する記事を児童とスクラップする活動を行いました。最初にスクラップした記事は、日本の予算について取り上げられた記事です。約97兆円の予算がクラスに関係のある様々なところで使われていることを理解できました。
「社会保障にたくさんの税金が使われているね」
「さいたま市では僕たちの医療費が無料だけど、ここにも税金が使われているんだね」
「学校の先生を増やすためにも今年はたくさん税金が使われているよ」
など、記事を読んで気がついたことを話し合っていました。
次に、日本の抱える借金について取り上げた記事をスクラップしました。日本が現在抱えている借金は1千兆円を超えており、国民一人当たり800万円ぐらいに相当することを知りました。そして、少子高齢化が主な原因であることも記事から読み取りました。
「これからお年寄りがもっと増えるからさらに借金が増えるかもしれない」
「子どもが増えていかないと、借金が返せなくなるかもしれないよ」
など、感想を述べながら、これまでは全く意識していなかった日本の財政について興味をもってきました。
日本の財政について考える体験授業
児童が日本の財政について関心をもってきたタイミングで、次の出前授業として、財務省の関東財務局の方による「財政教育プログラム」の授業を取り上げました。財務局では無償でこの特別授業を実施してくださっています。
内容は、児童一人ひとりがまず日本の予算を社会保障や教育、防衛などいろんな項目にどう振り分けるかを考えます。そして、グループごとに話し合い、オリジナルの予算案を立てて発表し合います。児童は日本の財政について、事前に行ったNIE学習で興味を高めているので、大変真剣に話し合っていました。また、日本の財政に関わっている財務省の職員の方がゲストティーチャーであるので、たくさんの質問もしていました。
児童が考えた予算案について財務局の方にもコメントをいただくことができ、児童は大変満足していました。
さらにこれからの学びに生かす
前回の税務署の租税教室と今回の財務省による財政教育プログラムによって、児童が日本の財政について大変興味をもつことができました。そして、主体的に日本の未来を考えることもできました。これからも、児童には継続して学習を続けて行ってほしいと思います。次回は、社会科見学で国会議事堂を訪ねます。日本の予算を立てている国会の様子を実際に見て、さらに児童の興味関心を高めたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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