2018.11.19
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「これならできる!」詩の創作指導(2)

第23期の連載では、『「荒れ」と向き合う詩の授業』というテーマで、私的な実践報告をさせていただきました。第24期の連載では、連載中に読者の皆様からいただいた「うちの教室でも実践できる方法はないか」とのお声に応え、より一般化した詩の指導の方策について、ご提案していきたいと考えております。引き続き、よろしくお願いいたします。

なお、今後本文中で採り上げる児童の作品等につきましては、成年した元児童のものにつきましては基本的に本人に、未成年の元児童のものにつきましては本人および保護者の掲載許諾を事前に得ておりますこと、念のため申し添えます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

芸術作品と「表現技法」

絵画の世界には、「遠近法」や「点描法」など、その作品をよりよく表現するための様々な「技法」があります。それと同じように、詩の世界にも作者の描いた思いをより適切に表現し、また読み手が深く味わうための、様々な「表現技法」があります。

絵画も詩も、人の心の内面にあるものを表現するという芸術的な側面をもつことから、その技法を理解させたり習得させるには、子どもたちの発達段階や実態を十分考慮しながら、適時適切に指導したいものです。

そこでまず、詩にはどんな表現技法が使われているのか、小学校の教科書などで採り上げられているものを中心に、少しおさらいしておきたいと思います。

詩の「表現技法・十選」

1.【倒置法】(とうちほう):通常の言い方とは言葉の順序を逆にする
〔例文〕「好きです、あなたが。」(「私は、あなたが好きです。」が通常の語順)
〔効果〕意外性を利用し、読み手の印象を強める

2.【比喩】(ひゆ):他のものにたとえる表現。直喩・隠喩・擬人法に分かれる
 [1]直喩(ちょくゆ)「~のように」などを使い、たとえであることを明示した比喩
〔例文〕「あの看護師さんは、まるでナイチンゲールのような人だ。」
〔効果〕具体的なイメージをもたせ、印象を強める

 [2]隠喩(いんゆ):「~のような」などの、たとえを明示する語を使わない比喩
〔例文〕「彼は黄金の右腕で、ホームランを量産する。」
〔効果〕抽象的なイメージをもたせ、印象を強める

 [3]擬人法(ぎじんほう):人ではないものの様子を人の動作のように表現する
〔例文〕「昨日とはうって変わり、今日は雲が暗く泣いていた。」
〔効果〕話者の世界観を提示し、印象を強める

3.【対句法】(ついくほう):対照的な二つの言葉を同じ形で並べ、比較させる
〔例文〕「おじいさんは山へ柴刈りに おばあさんは川へ洗濯に。」
〔効果〕リズムよく、印象を強める

4.【体言止め】(たいげんどめ):一文の終わりを体言(=名詞)で止める
〔例文〕「始まりは、いつも雨。」
〔効果〕読み手の注意を惹き、余韻(よいん)を残す

5.【反復法】(はんぷくほう):同じ語を意図的にくり返す
〔例文〕「とってもとってもとってもとってもとってもとっても大好きよ!」
〔効果〕調子をととのえ、感動を強める

6.【省略法】(しょうりゃくほう):必要な言葉を、あえて省く
〔例文〕「この事件の犯人は、きっと…。」
〔効果〕余韻を残し、読み手の想像を深める

7.【呼びかけ】(よびかけ):人や物などに呼びかける  
〔例文〕「ブラジルのみなさん、聞こえますか~?」
〔効果〕強く訴えるとともに、対象を明確にする

8.【押韻】(おういん):文の初め(頭韻)や文の終わり(脚韻)に同じ音を並べる
〔例文〕「セブンイレブン いい気分。」
〔効果〕リズムよく調子をととのえたり、勢いをつけたりする

9.【折句】(おりく):文章や詩の中に、別の意味を持つ言葉を織り込む
〔例文〕「あかんたれ いやなやつ しらんぷり てんでだめ またきたの すみません」(悪口のような手紙の詩。でも頭の文字を合わせると「あいしてます」となる)
〔効果〕筆者と読み手がともに、言葉遊びを楽しむ

10.【擬声語・擬態語】(ぎせいご・ぎたいご):聞こえた声や感じた様子を音で表す
〔例文〕「トラが近くでガオーッとほえる様子を見て、ぼくはドキドキした。」
〔効果〕説明しにくいものを、ニュアンスやフィーリングで伝える

いつ、どのように「詩の技法」を教えるか

上記のように、詩にはたくさんの技法があります。これらの技法について、小学校段階の教科書指導においては、習得するところまでは求められていません。しかしながら、こうした表現技法を知り、また子どもたちが自らの詩作の際に使うことができれば、それぞれの描く世界が大きく広がっていくことでしょう。

では、どのように指導するかですが、その表現技法が使われた詩に出合った時、タイミングを逃さずにその場で表現の内容に沿った指導するのがもちろん基本です。しかし、前回の記事でも触れたように、教科書通りに指導すれば、詩の鑑賞指導ができるのは、せいぜい年に2~3回、創作指導に至っては6年間で数回と、なかなかチャンスが訪れません。

そこで、先生方におすすめしたい手法があります。

これならできる!その2「身近な歌詞を活用する」

子どもたちの身近にあふれる「歌」。歌うことが苦手でも、歌を聴くことが嫌いだという子はほとんどいないでしょう。歌の歌詞は、往々にして「詩的」です。歌詞を分析的に見てみると、歌のテンポやリズムを支えるために、詩の表現技法が使われていることがよくあります。

これを、例えば詩の創作の前に取り入れて指導すると、子どもたちにも無理なく、そして楽しく理解・習得させることができます。高学年なら、流行の歌謡曲を適切に取り入れ、またその音源も聴かせてあげると、おおいに盛り上がることでしょう。

私の特におすすめする歌は、全学年で採り上げることのできる「アニメソング」です。とりわけ「ドラえもん」や「サザエさん」のオープニングテーマが指導しやすいと思います。誠に残念ながら、著作権法の関係で、ここにその歌詞を載せて一つ一つ解説することはできませんが、「サザエさん」なら、前述した「詩の技法・十選」のほとんどをカバーしてくれています。ぜひ、歌詞検索サイトなどで確認してみてください。

言うまでもなく、歌は人の心を動かす力をもっています。ぜひ、詩の表現技法指導の際にも歌を取り入れ、子どもたちの心をぐぐっと動かしてください。

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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