2018.11.10
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「授業のユニバーサルデザイン」の3要素②(第3回)

②人的環境のユニバーサルデザイン概論~畑を整え、土を肥やす~

☆ミニコーナー☆普段着UDその①「朝のスピーチ」に工夫を一つまみ...

戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表 笠原 三義

前回は、授業のユニバーサルデザインを支える3つ要素についてご紹介しました。

復習となりますが、授業のユニバーサルデザインを語る際には、大まかに以下の3つの観点からユニバーサルデザインについて考えます。

① 学習環境のユニバーサルデザイン
・教室内の環境を整えること
・刺激の調整

② 人的環境のユニバーサルデザイン
・クラスの仲間づくりの取り組みに関すること

③ 授業のユニバーサルデザイン
・全員が楽しく「わかる」「できる」授業にすること
(参考 阿部利彦他(2014)『通常学級のユニバーサルデザインプランZERO』東洋館出版社)


前回は、この中から「①学習環境のユニバーサルデザイン」について、概要を「ソフトな学習環境UD」と「ハードな学習環境のUD」としてお伝えしました。

私は、これらの3つのユニバーサルデザインの考え方は学校やクラスを畑に、そこで行われる教育活動を「農作業」に例えるとわかりやすいと考えています。

前回ご紹介した「①学習環境のユニバーサルデザイン」は、作物を育てる際の物理的障害を取り除き、育ちやすい田畑に整えていくことにあたります。畑に混じっている石(余計な刺激)をあらかじめ取り除き、水路や畝を整備するイメージでしょうか。


今回ご紹介する「②人的環境のユニバーサルデザイン」は、この農作業モデルで考えると、畑を耕し、土を肥やす部分にあたり、普段は「学級経営」と呼ばれている部分です。どんなに環境を整えても、また授業の展開を工夫しても、この「土」にあたる学級経営が豊かでないと、大きな実りを得ることは難しいです。それどころか、場合によっては、全く成り立たない場合もあります。この学級経営が教育のUDを進めるうえでのポイントにあたると考えています。私が勉強している日本授業UD学会学級経営部会では、「学級経営のユニバーサルデザイン」として研究を進めています。


学級経営のユニバーサルデザインについて、学会として統一した見解はありませんが、上越教育大学の赤坂真二先生は、以下のような視点を示しています。

 A 安心を基盤としたシステム設計

 B 学級経営において、困り感をもつ子どもにはないと困る支援であり、どの子どもにもあると便利な支援を標準装備する

 C 制度、学校、教師からの一方的な支援だけでなく、子ども同士の双方向的な支援関係を積極的に育成する

 D 教師のリーダーシップをUD化する
(赤坂真二第2回日本授業UD学会全国大会 講演資料「学級経営のUD」より/文責 笠原)


さて、次回からは、②の人的環境のユニバーサルデザインについて詳しくご紹介します。

☆ミニコーナー・普段着UDその①☆
どんなクラスでも、やっている事、もしくは起こる出来事にUDの視点から一工夫すること。

それを、私は「学級あるある」を活かした『普段着のUD』」として提唱しています。
今回から一つずつ、ミニコーナーとしてお伝えします。


今回、紹介するのは、朝のスピーチ活動です。
朝の会などで、順番にスピーチをさせる活動をしているクラスは多いと思います。
そこに、私は3つの工夫をしています。

①スピーチの題材は、子供から募集しておく。

②スピーチのお題を紹介したところで、「予想タイム」をとる。

③スピーチが終わった後に短くふりかえりをする。


①スピーチの題材は、子供から募集しておく
スピーチの話題については、季節により、または学習の進みに応じて教員側から示しているクラスが多いかと思います。そこにはねらいがあり、教育活動として素晴らしいものです。

私のクラスでは、子供たち一人につき一つずつスピーチのお題を紙に書いたものを集めておき、前日にくじ引きで引いて決めています。そして、ココがキモなのですがスピーチの話題と、自分の答えを例として書いてもらっています。

たとえば、「好きな季節はいつか?」というお題だとすると、そのお題とともに「私は冬です。どうしてかというと自分の誕生日が12月だし、寒いときにおでんを食べるのが大好きだからです」などとなります。

②スピーチのお題を紹介したところで、「予想タイム」をとる。
スピーチの話し手は、お題を紹介したところで、「予想してください」と言って、10秒ほど待ち時間をとります。その間に、聞き手はペアや周りと予想をし合います。

人間関係ができてくると、「Aさんは野球が好きだから、クライマックスシリーズのある秋でしょう」「いや、甲子園のある夏でしょう」などと、予想が出来てきます。

③スピーチが終わった後に短くふりかえりをする。
スピーチが終わった後には、再びペアや周りと短く感想を伝え合います。

「野球のことかと思っていたら、お花見が好きだから春っていうのが意外でした!」「わかる、わかる!」などの感想が子供たちから出ます。

これらのスピーチ活動では、主に2つのことを交流しています。

一つは“情報”です。

先ほどのスピーチ例でいえば、「A君はお花見が好き」といったその子に対する知識です。


それに対して、こちらが大切だと思うのですが、もう一つは“感情”です。

「野球が好きだと思っていたら、お花見が好きなんてびっくりした!」という心の動きです。

人は、感情を共有した時に関係が近くなるといわれています。

好きなものが同じで意気投合する経験などは、大人でもあるのではないでしょうか。

話し手の話す技術と同時に、話し手と聞き手や、聞き手同士の関係を育てることにより、子ども同士の関係をつなぎ、人を見る目を豊かにしていきます。それが、教育のUDの基盤を支える支持的な学級風土を育てることになっていくと思います。

一人当たり1分で終わり、朝から笑いや温かい雰囲気で一日をスタートできるおススメの活動です。

ぜひ、「普段着のUD」の第1歩として取り組んでみてはどうでしょうか?

笠原 三義(かさはら みつよし)

戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表・同学会 国語部会事務局・日本学級経営学会 会員
埼玉県の公立小学校・在外教育施設派遣(オランダ・ロッテルダム)を経て現職。
UDの視点から主に授業づくり(国語を中心に)・学級と学年経営について研究・発表・講演をしています。
クラスに起こる「あるある」を活かす「普段着のUD」を一緒に考えていきましょう。

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