体育授業力向上のための教授技術(3.集団行動の指導)
これまで、体育授業力向上のための教授技術として
1.児童の安全確保
⒉学習ルールの確認
について紹介してきました。
今回(第3回目)は、集団行動の指導についてです。
どうぞよろしくお願いいたします。
大阪市立堀江小学校 主幹教諭 (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) 川村幸久
①集団行動の指導の必要性
みなさんは、「集団行動」と聞くと何をイメージしますか。
最近TVや書籍等で話題になっている運動会の団体演技で行う集団行動をまずはじめにイメージされるかもしれません。
しかし、ここでは団体演技としての集団行動ではなく、日常の学校教育全般で行われる集団行動について考えていきます。
(※団体演技で行われる整列・行進等は、今から私が書かせてもらう説明と別のものという認識ではなく共通点がたくさんあると思います)
学校体育実技指導資料第5集『体育(保健体育)における集団行動指導の手引』(平成5年10月文部省)によると、集団行動の指導は、次のようなよさがあると書かれています。
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・集団行動の行動様式を習得していれば、集団としての行動が秩序正しく、能率的に行うことができる。
・身の安全をおびやかされるような緊急の事態に遭遇した場合でも、安全に行動することができる。
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この2つの点から考えると集団行動は学校できちんと指導しておかなくてはならないのです。
その指導の中核となるのが、体育の授業での指導です。
きちんと指導することができると、体育の授業も能率的に行うことができるのですから、決して軽視してはいけません。
ここで子供たちが学習する基本的な行動様式は、学校の他の教育活動における集団行動の基礎となります(体育の学習活動を能率的に安全に行うことができるというよさもある)。
②どのような内容を指導するのか
では、集団行動の指導においては、どのような内容を指導するとよいのでしょうか。
いくつか主なものを例を挙げると
〇 姿勢(気をつけ、休め、腰をおろして休め)
〇 方向転換(右向け右、回れ右)
〇 集合(2・4列縦隊に集まれ、前へならえ)
〇 列の増減
〇 行進(前へ進め、全体止まれ、駆け足進め、全体止まれ)
〇 足踏み(足踏みはじめ、駆け足足踏みはじめ、全体止まれ)
〇 立礼(礼)
という項目があります。
この事項を学習内容に合わせて指導していくことが大切です。
具体的な指導のポイントは…
③例 指導のポイント
【気をつけの姿勢】指導のポイント
・前の人の頭を見る
・あごを引いて、正面を見る
・指先はピンッと、ズボンの線にそろえる
・かかとは合わせる
・つま先は、45°~60°で開く
※「休め」のご号令をかけてから、「気をつけ」の号令をかける
【休めの姿勢】指導のポイント
・楽な姿勢になるようにしますが、視線や手の位置などは乱さない
・手は後ろで軽く組む
・体重は両足にかける
・左右を1歩横に肩幅程度開く
【腰をおろして休む姿勢】指導のポイント
・背筋を伸ばす
・話す人を見る
・手はひざの少し下で組む
・両ひざはそろえて軽く曲げる
※地面の状態を気を付けるようにする
【集合・整頓】指導のポイント
・伸ばした指先から、前の人とは、こぶし1つ分空ける
・隣の人とは、こぶし1つ分空ける
・肩の高さにあげて、前の人の頭だけ見る
・先頭は両手を腰にとる
※集合「〇列隊形に…集まれ」
※整頓「前へ・・・ならへ」「なおれ」
※号令は、2拍ほど間を入れると、次の行動への心の準備ができます。
※予令 これから号令をかけますという合図
※動令 実際に動く合図
集団行動の指導において
大切なこと
ここまで、集団行動の指導する必要性・その指導内容とポイントについて述べてきました。
最後に、集団行動の指導において大切なことは、
子供たち自身が一つひとつの集団行動の意味・役割について理解すること。
そして、自分から行動できるようになることです。
そのためには、体育の授業で指導した内容を学校生活の様々な場面で継続して指導していく必要があります(例えば、朝会や始業式・避難訓練や運動会・遠足や社会見学などの行事で)。

川村幸久(かわむら ゆきひさ)
大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)
教師生活15年目。これまでの担任・教務主任の経験、大学院での学びを省察し、学級経営やICT活用、体育科教育を中心に、皆様と情報共有をさせて頂ければと思います。
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