事前準備が授業中の安心感を生む
教育実習生と過ごす中で考えたことを整理してみました。やっぱり事前準備をどれだけするかで、授業中での過ごし方が変わってきます。
京都教育大学附属桃山小学校 教諭 若松 俊介
2学期開始と同時に、教育実習が始まりました。
今の学校に来てから、毎年実習生を受け持っています。
実習生に偉そうに何か話すというよりは、
共にいろんなことを話しながら自分自身も学びたいと思っています。
実習生にとっては、人生で初めてや2回目の授業です。
そんなもの、早々うまくいくわけがありません。
「うまくいく」を目指しすぎると、
指導案に書かれていること一つ一つにとらわれてしまいます。
とらわれないためには、ゴールをきちんと決めることが大切です。
この1時間で子どもたちが学習する芯の部分がはっきりとしていれば、
多少どんな展開であっても、そちらに向かっていくことができます。
ゴールが曖昧だと、子どもたちとともに迷走してしまいます。
ゴールを決める前に、もっとも大事なのは教材研究です。
・どんなことを学習するのか
・これまで学習してきたこととのつながり
・学習内容の奥深さ
などを教師自身が知っておかないと、
子どもたちから大事な意見が出たとしても、拾うことができません。
例えば、五年生国語「わらぐつの中の神様」での話です。
ある子が
「 おばあさんの会話が最後に出ているのは、どうしてなんだろう」
という疑問を持ったとします。
教師が
「その物語がどのような構造をしているのか」
「作者の伝えたいことが何なのか」
ということを教材研究しておくことによって、
ふとした疑問が作品の価値に迫っていくものだと理解できます。
教材研究をしていないと、何の価値もない意見だと捉えてしまって広げることができません。
広げたとしても、よく分からないままグダグダした終わり方になってしまいます。
子どもが学ぶことが十であれば、教師は百ぐらいのことを知っておかないと、
授業をどのように組み立てていけばいいのかわからなくなるでしょう。
子どもたちと目指すゴールもはっきりしません。
教材研究をしているとその教材について知ることが面白くなります。
教師自身が気になったことやワクワクすることを子どもたちと一緒に考えるのは楽しいものです。
また、子どもたちが気になったことを一緒になって楽しむこともできます。
受け皿が広ければ広いほど、
目の前の子どもたちの考えを大きく受け止めることができるでしょう。
「予想外の意見」が「想定内の意見」へと変わっていきます。
「事前に教材研究をするなんて大変だ」という声もあるかもしれません。
ただ、教材研究をきちんとしていればしているほど、授業中に安心することができます。
出たとこ勝負で授業をすれば、その場で苦しくなってしまいます。
グダグダの授業になってしまい、子どもたちもつらくなるでしょう。
事前に充分考えておくことが、その場での安心を生み出します。
「やらなければならない」教材研究ではなく、自分のための教材研究として取り組んでいきたいものです。
…と、実習生と話しながら考えたことを整理してみました。
教材研究をもとに子どもたちとの授業を楽しんでいきたいです。
子どもも教師もワクワクする授業をめざして。

若松 俊介(わかまつ しゅんすけ)
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
「子どもが生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。子どもたちに教えてもらった大切なことを、読者の皆様と共有していければ幸いです。国語教師竹の会所属。
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