2017.12.17
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「道徳でリアルな現実と向き合わせる」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

東日本大震災を取り上げた資料を活用

 今年度の1月に勤務校の研究発表会でNIEを取り上げた国語科授業を公開します。授業の題材として防災を取り上げ、児童が学校で大地震に遭った際にとるべき行動について調べたり取材をしたりして、新聞記事としてまとめる学習を行います。

 児童にとって、今回の学習の導入で取り上げる東日本大震災は自分が小さいころの、いわば過去の出来事のようです。1歳から2歳ごろの出来事なので、記憶もあまりなく、自分にはあまり関係のないことに感じてしまうと思います。しかし、東日本大震災は過去のことではなく、今でも多くの方が元の生活に戻れないでいる現実があります。そして、この震災が私たちに生きるために大切なことをたくさん教えてくれました。この震災を児童が自分事として学ぶことが、本当の意味で教科の壁を越えて児童に防災について考える機会になると考えています。

 児童にリアルな現実を見せる

 今回の実践では、東日本大震災を取り上げた資料を活用して、道徳の学習に取り組みました。活用した資料は学習研究社が編集した、「家族愛」に関する資料です。津波で看護師だった母親を亡くした女の子が、母親の代わりをしてがんばっている父親の姿を見て、自分も家族のために頑張ろうと思うという話です。この資料から、家族愛について考え、児童が自分も家族の一員としてできることを考える学習をします。

 今回はこの学習の最後に、東日本大震災関連の新聞記事を児童に示しました。示した記事は、石巻市立大川小学校で津波にのみ込まれて亡くなった親御さんの記事です。当時3年生の息子さんを亡くされた方が、息子さんが1年生の時に育てた朝顔の種を植えて、その朝顔を息子のように思って育てているという記事です。

 児童はこの記事を通して、現実に震災で家族を失った方の気持ちを考えることができました。児童の書いた感想を見ても、資料だけよりも家族の大切さについて考えているようでした。実際に家族を亡くされた方の思いについて、新聞を通して知ることで、震災が自分事に一歩近づきました。

学習後も続けて考える機会を与える

 道徳の学習が終わった後も、さらに朝の会で震災関連の記事を継続的に紹介したり、学年掲示板に掲示したりしています。3月が近づいてくると、震災関連の新聞記事がたくさん掲載されます。児童が、それらの記事に興味をもって、自分から進んで読んでみるようになってくれたらと思っています。
 
 今回の道徳の実践を通して、国語科を中心に取り組む防災の実践が充実してくる予感がしてきました。さらに学習を続けていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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