支柱のような教師に ホワイトボードシートで「たい」を増やそう その2(第3回)
先日、教師人生最後(?)の公開授業を行いました。5年生の「電磁石の性質」です。
乾電池の向きを入れ替えると、N極とS極も入れ替わることを理解することが目標です。
実験はそれほど複雑ではありません。私が説明すれば、
また、成績上位の子どもが説明すれば、まとめも簡単に終わります。15分もあれば授業として成立します。
ここでは「自分なりに説明する」ことをねらいたいものです。
そこで、ホワイトボードシートを活用する単元構成・授業構成を考えました。
その実践例を紹介いたします。
熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二
疑問を解決し「たい」
現在の勤務校の理科室は、廊下側の壁面が使えない構成になっています。
また、背面も掲示ができません。
空間の利用が難しく、この学校ではホワイトボードシートをテーブルの上に置いて学習に利用することが多いです。
「電磁石と棒磁石の似ているところと違うところをさがそう」という大きなめあてのもと、単元がスタートしました。
鉄は電磁石と棒磁石のどちらにもひっつく、電磁石は乾電池をつないだときしか磁石にならない、
などを見つけていきました。ここでも、ホワイトボードシートを使っています。
「電磁石にも棒磁石と同じように、N極やS極があるか?」という疑問がでてきました。
その問題に対する解決方法を自分のノートに書かせたあと、ホワイトボードシートに考えを書かせていきます。
書き「たい」気持ちをできるだけ早く実現させます。しかも、書く材料をもっています。
全体で4つの方法がでます。
1 電磁石を棒磁石に近づける 2 電磁石同士を近づける
3 電磁石を水に浮かべる 4 電磁石を方位磁針に近づける
どの考えも正しい方法です。しかし、4を先に行うと、結果がすぐにわかります。
導入の「1本導線は磁石になっているか」の学習で「方位磁針は魔法のアイテム」と意識付けをしておいたので、
4の方法は一番最後にまわそうということになりました。(そのように仕組んだというのが正しいです。これも戦略です。)
1は、強力磁石を使うとどちらも引きつけられます。2は、かすかな違いが見えます。
3は、何度かすると正しい方向を向くのですが、「しずんでうまくいかない」という声もあがります。
1~3では、スッキリしないということでまとまります。
すでにホワイトボードシートには、さまざまな書き込みがされています。
棒磁石にはどちらも引きつけられるので「電磁石にはN極とS極はない」という考えを強くした子ども、
電磁石同士のかすかな違いに目を付けて「電磁石にもN極とS極がある」という考えを深めた子ども、
まだ迷っている子ども。書くことで見えてきます。
でも、子どもたちは安心しています。「方位磁針は魔法のアイテム」。
方位磁針ではっきりすると、確信をもっています。
解決し「たい」
その状況で公開授業。
子どもたちは、早く方位磁針を使って、はっきりさせ「たい」と思っています。
前の時間までの確認、結果の見通しをたてて、実験に入ります。
「あっ、動いた。」「こっちがNだ。」あちこちで声があがります。
授業開始約10分で結果がわかってしまう。。。
1人の子どもを指名して、黒板に方位磁針カードをはらせます。
N極が左を向くようにはりました(1)。
うなづく子どもと、うん?という顔をする子どもに分かれます。
「うん?」という顔の子どもを指名すると、N極が右を向くようにはります(2)。
(1)と(2)に意見が分かれたら、
私は耳を大きくして、つぶやきを拾うことに徹します。
説明してしまえば、5分もあれば終わってしまうからです。
知らないうちに「乾電池の向きが違う」と言い始めますし、書き始めます。
そのうちに4年生での学習を思い出したり、
5年生1学期の発芽実験での条件をそろえることを思い出したりします。
ファシリテーターになって、言い「たい」、書き「たい」を広げます。
間違っても「前にならったろ。」などと言ってはいけません。
せっかくのつながりが途絶えてしまいます。
(1)(2)の違いは、乾電池の向きだけなのですが、
ホワイトボードシートを使って話し合いをすると、
あっという間に時間がたちます。
主「たい」的で、「たい」話的な学びに
肝のキーワードは「電流の向き」です。
「乾電池の向きが変わると、モーターが反対にまわる。」
ことは説明できても、
意外と「電流」という言葉はでてきません。
この言葉を出させるには、それ以前の布石が必要となるでしょう。
今回は、子どもたちから「電流」という用語を引き出すことができました。
これもホワイトボードシート効果だと思っています。
授業の終わり頃になると、グループのホワイトボードシートだけでなく、
理科室に用意しておいたホワイトボードや、
マグネット付きのホワイトボードに書いて説明し「たい」子どもが
続々でてきました。
ホワイトボードシートを活用することは
「主体的で、対話的な学び」につながることは実証できました。
主「たい」的で、「たい」話的な学び、と言った方がいいでしょうね。
授業研究会で出てきた課題、私が感じている問題点について、
次の回でお話ししたいと思います。

笹原 信二(ささはら しんじ)
熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。
同じテーマの執筆者
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
